介護にかかる費用というのは、1割(または2割)の自己負担が必要になるため、介護サービスを多く利用していたりすると負担金額は増えていきます。
しかし介護費用を無理に抑えようとすると、逆に家族に負担が重くなってしまい、元も子もありません。
今回は少しでもうまく介護費用を抑えている家庭の事例を紹介します。
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目次
姉弟で連携し、在宅介護を継続する
Aさん(90歳)は在宅で生活している方ですが、徐々に物忘れなどの認知症があり、自宅で雨戸を閉めまわしてしまったり、往診で受け取った薬を自分で管理できないなどの症状が出始めました。
隣に住んでいる息子は介護の経験もなく、どのように対応してよいかわからず、とりあえず身の周りの援助(ごみ捨て、掃除など)をおこなっている状態でした。
近所に住んでいる娘はそんなAさんの状態を少しでも改善しようと、訪問介護を利用せず、自分の主婦の経験を生かして息子に足りない部分を補うようにしました。
具体的には、自分で管理が難しい箇所(火の不始末、冷蔵庫の管理、服薬の管理、洗濯など)を娘がおこなうことにより、Aさんは継続して在宅で生活することができるようになりました。
在宅で訪問介護を利用する場合、生活援助や身体介助がメインとなりますが、その部分を可能な限り姉弟で連携しながら経過をみていくことになりました。
幸いなことに在宅生活で困難となりがちな徘徊などの異常行動はみられず、身内でカバーしあうことにより一人にかかってくる負担を軽減し、本人も在宅生活が可能という箇所まで援助することで介護費用を抑えることができています。
抑えておきたいポイント
ここで必要なことは、本人の様子をよく観察することです。
認知症といっても症状は様々で、物忘れなどの場合もあれば、性格が急に変わってしまうなどの症状もあります。
今までと違う行動をとり始めたり、会話が成立しにくくなったからといって、すぐに「介護サービスを使おう」と判断するのは早い場合もあります。
もちろん、要介護状態であると認定を受けてからではないと介護サービスを利用することはできませんので、早めに申請をしたいということも間違えではありません。
認知症が進行していても自力で生活を続けていける部分は残っていることがあります。
そのポイントをしっかりと観察して、本人ができないところだけを周りがフォローすることで、介助者の体力や介護費用を負担することなく継続して生活することができます。
また、今回は姉弟でポイントを補い合うことにより実現した事例でしたが、介護者が一人であるケースも珍しくありません。
その場合は週に一度でも介護サービスを利用するなど、介護者に負担がかからないようにすることが最も大切です。
介護の資格を取って在宅介護に生かす
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Bさん(94歳)は自宅で転倒して骨折、入院となり退院後は介護度4の状態で在宅にて生活を送っていました。
自宅には介護ベッドをレンタルし、ほぼベッドの上で生活する状態でした。
在宅で介護をしたいという家族の意向から、介護職員初任者研修を取得し、できる箇所の介助は自分でおこなっていました。
食事の介助、排せつの介助はもちろんですが、入浴に関しては身内に手伝いに入ってもらい、週1~2回介助をおこないました。
初任者研修の資格を取得した上で、自らも勉強を怠らず、在宅で最期までBさんをみとることができました。
本来であればデイサービスなども利用してもよかったのですが、本人が通所を拒否していたこともあり、Bさんの意見を尊重し在宅で静かに介護を続けた結果でした。
抑えておきたいポイント
Bさんは介護度4の認定が出ていましたが、在宅で過ごすための大きなポイントとして、介護者の負担の増大が考えられました。
特に介護の経験がない人にとっては、その労力も計り知れません。
Bさんの家族は事前に介護職員初任者研修を取得していましたので、介護に必要な基礎を習得できたおかげで今回の結果が得られたのではないでしょうか。
また特に体力を必要とする入浴介助も、協力が得られれば入浴(シャワー浴)し、難しい場合にはベッド上で清拭をおこなったり、髪を洗ったりするなど、身の回りにある物を活用して介護を続けました。
本人の意向もありデイサービスなどは利用しませんでしたが、介護者の資格取得により専門的な知識に沿った介護により身体的負担をできる限り減らし、また介護費用を抑える結果にもつながりました。
まとめ
介護費用を抑えるというのは簡単なことではありませんが、少しの観察、少しの知識が積み重なることにより、大きな介護費用削減にもつながると考えています。
介護者の負担が限界を超えるほど介護費用を抑えることはおすすめできませんが、少しのことからお互いに助け合う気持ちを持ち合わせることで、負担がかからないように介護費用を見直すことができますよ。(執筆者:佐々木 政子)