住宅ローンを返済されている方が住宅ローン控除を受けている場合、原則年末残高の1%(平成19年・20年居住開始であればもう少し低くなります)を所得税額から引くことができるため、所得税(場合によっては住民税も)の軽減額が大きく、0円になるケースも多いです。
一方でふるさと納税は返礼品でお得になるという発想があるものの、所得税や住民税が発生していなければ自己負担になってしまうというデメリットもあります。
住宅ローン控除とふるさと納税、同時に行うのは損なのでしょうか?
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目次
住宅ローン控除があっても住民税減税額は生ずる
結論から言えば、住宅ローン控除額・ふるさと納税額のどちらかを部分的に無駄にする可能性はありますが、住民税減税にはなります。これは、住民税の住宅ローン控除のしくみ(上限額)に原因があります。
住宅ローン控除の限度額は居住開始年により8万円~50万円の幅がありますが、十万円単位の上限額ですと、課税所得に基づく所得税のほうが少なくなるケースがあります。
例えば課税所得に基づく所得税10万円で住宅ローン控除額20万円であれば、10万円は引ききれません。
この引ききれない金額は、住民税所得割額(住民税のうち、5,000円の定額均等割を除いた分)から差し引くことができます。ただし上限があり
消費税5%での住宅取得:9万7,500円または所得税の課税総所得金額等×5%
消費税8%での住宅取得:13万6,500円または所得税の課税総所得金額等×7%
のいずれか低い方となります。
通常、課税総所得金額等の10%程度が住民税所得割額ですから、住宅ローン控除で住民税所得割から目いっぱい差し引いても0円になることはなく、少なくとも3割程度は残ります。
残額の住民税所得割からふるさと納税を差し引けるというわけです。
なお、ふるさと納税による寄付金(税額)控除の計算式は、下記の通りになります。
A 住民税寄付金税額控除(基本控除)
(ふるさと納税の額 - 2,000円)× 10%
「ふるさと納税の額」の上限:総所得金額等の3割
B 住民税寄付金税額控除(特例控除)
(ふるさと納税の額 - 2,000円)×(1 - 10% - 所得税率)
特例控除の上限:調整控除差引後所得割の2割
C 所得税率に応じた控除
原則として、
(ふるさと納税の額 - 2,000円)× 所得税率
「ふるさと納税の額」の上限:総所得金額等の4割
ただし、Bの特例控除が上限額を超えており、ワンストップ特例を行う場合は
調整控除差引後所得割の2割 × 所得税率 ÷(1 - 10% - 所得税率)
※この所得税率は、復興特別所得税分を含みます。
損しない範囲のふるさと納税額を見積ってみると
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ここで、
・給与年収670万円(給与所得483万円)
・社会保険料控除99万5,000円
・年末の住宅ローン残高:4,100万円(平成27年居住開始で消費税8%時取得)
のケースを考えます。
所得税の課税総所得金額等:483万円 ― 99万5,000円 ― 基礎控除38万円=345万5,000円
課税所得に基づく所得税額:345万5,000円 × 20% ― 42万7,500円=26万3,500円
となります。
住宅ローン控除額は、年末残高に基づくと4,100万円×1%=41万円となりますが、上限を上回るため40万円となります。
所得税の納税は0円となりますが、40万円 ― 26万3,500円=13万6,500円が引ききれません。
一方、住民税の課税総所得金額等:483万円 ― 99万5,000円 ― 基礎控除33万円=350万5,000円
調整控除後の住民税所得割額:350万5,000円 × 10% ― 調整控除2,500円=34万8,000円
となります。
住民税の住宅ローン控除額は、ちょうど13万6,500円(<課税総所得金額等345.5万円×7%)となります。
住宅ローン控除後の住民税所得割額は21万1,500円となり、ここにふるさと納税を差し引ける余地があります。
ここで、Bの特例控除
(ふるさと納税の額-2,000円)×(1-10%-20.42%)
の上限が34万8,000円 × 20%=6万9,600円になりますので、ふるさと納税は10万2,000円程度を目途に行うと良いと考えられます。
ワンストップ特例を活用したほうがよい
なお、ふるさと納税額が10万2,000円の場合、
A基本控除:1万円
B特例控除:6万9,580円
C所得税率に応じた控除:2万420円
となり、ふるさと納税により住民税所得割額21万1,500円から10万円が差し引けます。
ここから判断する限り、住宅ローン控除無しの場合と同じ限度額を意識して大丈夫なように見えます。
ただし所得税は住宅ローンの控除で全額控除されておりますので、Cの控除はワンストップ特例を使わないと差し引けない点は注意が必要です。
確定申告する場合は、Cの分2万円強が自己負担にまわります。
事業所得や不動産所得などがあって確定申告せざるを得ないのであれば仕方ないのですが、ワンストップ特例の要件から外れないように、寄付先自治体を5以下におさえるぐらいの対策はうった方がいいでしょう。
また住宅ローン控除2年目以降は年末調整でも完結しますが、初年度はどうしても確定申告が必要になります。
住民税の税額試算システムを使おう
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どれだけのふるさと納税ができるかについては、自治体のサイトからアクセスできる「税額試算システム」(例えば東京都江戸川区、千葉県浦安市)で、ご自身の状況を入力してみると試算できます。
ワンストップ特例を利用するかのチェックボックスもありますので、このチェックボックスを使ってワンストップ特例を使ったほうが良いかの試算もできます。(執筆者:石谷 彰彦)
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