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「お宝保険」といえば…
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みなさんは「お宝保険」という言葉を聞いたことはありますか?
若い方なら、あまり耳慣れないかもしれませんね。
それもそのはずで、かつて金利が高かった時期に契約され今も続いている貯蓄型保険のことを、一般的に「お宝保険」と呼ぶのです。
「お宝保険」は、今は考えられないような高い予定利率のために「お宝」だと呼ばれます。
現在は同じような条件の保険は販売されていないので、「解約するのは損だ」なんて言われているんですよね。
今回は、その点に疑義を差しはさんでみようと思います。
「お宝保険は解約すべきではない」とされる3つの理由
その前に、「お宝保険」はなぜ「解約すべきではない」と言われるのでしょうか。
改めて整理してみようと思います。
1. 金利がよい
冒頭で指摘したように、現在では望むべくもない金利が適用されているからですね。
しかもその利回りは、生命保険会社が保証しています。保険会社が破綻しない限り、なかなかな利回りで絶対お金が殖えるんですね。
だから「解約はもったいない」となります。
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2. 所得控除(生命保険料控除)に関する法律が変わった
「お宝保険」になり得る貯蓄型保険は終身保険や個人年金保険が代表的ですが、平成23年までと平成24年以降で、これらの保険料支払いによって得られる所得控除の上限が変わりました。
旧契約(平成23年までに契約されたもの)なら終身保険では上限5万円・個人年金保険でも上限5万円の所得控除が得られました。
新契約(平成24年以降の契約したもの)ではともに上限4万円に減額されたのです。
ただし平成24年以降は医療保険や介護保険の保険料に対して別に上限4万円の所得控除が新設されています。
合計10万円の所得控除によって得られる節税額は、所得税率が10%なら住民税と合わせて年間1万7,000円です。
それが合計8万円の所得控除なら年間1万3,600円になり、4,400円の損になるんですね。
これが毎年続くのですからバカにできません。これも、旧い貯蓄型保険が「お宝」ゆえ「解約するのはもったいない」となる理由です。
3. 利回りが高く設定されている
そもそも貯蓄型保険というものが長く続ければ続けるほど利回り(「返戻率」や「戻り率」なんて呼ばれますね)が高くなるように設計されているからです。
終身保険でも個人年金保険でも、途中解約する場合には元本割れしてしまうケースが珍しくありません。
元本割れを選ぶ決断はかなり心に負担をかけますし、どんどん殖えると約束されているのであれば解約するのは「もったいない」となるのが人情でしょう。
つまり、
・ 税制改正
・ 貯蓄型保険
の特性という3点で、「もったいない」となっているのです。
ほんとうに「もったいない」のか
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この「解約するのはもったいない」は、実はターニングポイントに来ています。
なぜか。それはiDeCoという新しい制度が始まったからです。
2017年1月に対象が一気に拡大したiDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で拠出する保険料額を決め、運用先も指定する年金制度です。
多少の手数料はかかるものの、
・ 企業型DCを利用できない会社員や専業主婦なら年27万6,000円まで
・ 公務員なら年14万4,000円まで
の拠出金が全額所得控除されるのが最大の魅力ですね。
iDeCoの所得控除は、貯蓄型保険のそれよりも以下の2点で優れています
・ 新旧ともの貯蓄型保険よりも、iDeCoの方が最大所得控除額が大きい。会社員なら10万円と27万6,000円で、3倍近くの差がある。
・ 貯蓄型保険は10万円の所得控除を得るために20万円の保険料支払いが必要だが、iDeCoは拠出金額がそのまま所得控除となる。
なお所得税率が10%の会社員の場合、27万6,000円の所得控除で住民税と合わせて年5万5,200円が節税できます。
貯蓄型保険と比較すると、iDeCoの所得控除の破壊力はかなり大きい
う~ん、そうですね。
って、そうですか?
先ほどの数字をよく見てください。拠出した27万6,000円のうち、5万5,200円が還付されているんですよ。
単年だけで考えても、これは
なわけですよね。
この120%を貯蓄型保険の「返戻率」や「戻り率」と比較してはいけませんよ。
「返戻率」は数十年にわたる契約期間を通した殖え率ですから。年利にすればかなり小さくなります。
「iDeCo」VS「お宝保険」
「iDeCo」と「お宝保険」のどちらがお得かは、実際に得られる利益を比べなければなりません。
・ 「iDeCo」なら合計節税額
・ 「お宝保険」なら合計節税額プラス確約された運用益
です。保険証券を開いて見れば分かるはずですよ。
アナタの「お宝保険」、ほんとうにiDeCoよりお得ですか?
もしかしたらすぐに途中解約して、その解約返戻金を元手にiDeCoを上限まで掛けた方が、お得かもしれませんよ。
もちろん、貯蓄型保険とiDeCoの両方から所得控除を受けられれば、節税額は最大になるのですが。
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忘れちゃいけないiDeCoのデメリット
最後に、言いそびれるわけにはいかないiDeCoのデメリットを書いておきます。
・ 年間数千円程度の手数料が発生する。
・ 運用成績によっては、資産が減少する。
・ 60歳になるまでは受け取れない。
でも、所得控除を考えれば年数千円程度の手数料は、目をつぶれるのではないでしょうか。
SBI証券のような格安手数料の運用管理機関を選ぶことで、手数料を軽減できます。
また運用リスクですが、はっきり言ってこれは保険商品の持つインフレリスクの裏返しです。
それに、長期間の分散投資で運用リスクが最小限になることは、広く知られたことですよね。そしてiDeCoはこの運用益にも非課税なのがうれしい制度なのでした。
もっとも気になるのは、
でしょうか。
たしかに、突発的に現金が必要になる事態は、起こるかもしれませんものね…。
でも「お宝保険」を大切にしていたアナタは、その保険契約を解約せず、後生大事に持ち続けるつもりだったんでしょう?(執筆者:徳田 仁美)