高等教育(大学教育)無償化と財政再建を両立させるような形の制度として、授業料「出世払い」が昨年平成29年秋より検討されており、平成30年4月には自民党の教育再生実行本部がたたき台をまとめました。
返還方法は、奨学金の所得連動返還方式(日本学生支援機構・無利子型の奨学金が対象)をベースにしている部分があり、あとは現在の奨学金とどう変わるかが問題です。
広く無償化しようという方向性に反するようですが、親の所得制限を設け、対象者を限定しようとしています。
ただ従来の奨学金に比べれば、むしろ拡大することになることも認識していただきたいです。
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目次
補助される授業料・入学金
国公立大の場合は、約28万円の入学金と約54万円の授業料が補助される方向です。
私立大の場合、入学金の他70万円もしくは120万円程度の補助を想定しています。
出世払いの想定する返還方式
自民党のたたき台では、返還額は住民税課税対象所得の9%分で、最低月額2,000円(年額2万4,000円)を想定しています。
これは所得連動返還方式と同じ返還方式になります。
例えば前年分の所得額・所得控除額が
・ 社会保険料控除額13.5万円
の場合、「給与所得控除額 + 住民税の基礎控除額」は98万円になります。
住民税課税所得は
となり、9%をかけて12で割ると「1,762.5円 < 2,000円」となるので、月2,000円を返還していくことになります。
マイナンバーで住民税の所得情報を管理することを前提に、所得連動返還方式が導入されました。
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第二種(有利子)奨学金と同様の所得制限を導入する方向
所得連動返還方式は第一種(無利子)奨学金が適用されますが、出世払いには第二種奨学金と同様の所得制限を導入する方向です。
参考までに第一種・第二種奨学金における所得制限(3人世帯・4人世帯の場合)は、下記の通りです。
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※所得が給与のみの場合の年収制限
世帯人数によって変わってきますが、年収1,000万円程度になると出世払い方式は利用できなくする方向です。
ただ、これは第一種奨学金よりは高い所得制限となっており、対象者を絞ってはいますが従来型奨学金よりは広げる予定です。
所得連動返還方式からのさらなる変更は?
所得制限は設けられますが第一種奨学金よりは緩め、完全とはいかないまでも相応の無償化にはなるということです。
ただこれ以上どこが変更になるのでしょうか?
オーストラリアのHECSを参考に制度設計がされる方針でしたが、HECSに関しては
・ 返済せず死亡した場合は免除となる
という日本の奨学金との違いが挙げられます。
奨学金制度から発展させて、どう制度設計されていくかは今後も注目です。
例えば給与天引きの方法は、日本の場合は住民税とともに徴収することが考えられます。(執筆者:石谷 彰彦)