2018年5月の初め頃にアルゼンチンから、世界経済を不安定にするかもしれない、驚きのニュースが発表されました。
それはアルゼンチンの中央銀行が、政策金利を6.75%引き上げ、40%にしたというものです。
しかもわずか8日の間に3度目も引き上げしており、政策金利の引き上げ幅は合計で12.75%に達します。
この背景としては、アメリカの長期金利が約4年ぶりに3%台を付けてから、アルゼンチンの通貨であるペソが、米ドルに対して急落しています。
そのため、アルゼンチンの中央銀行は通貨防衛を目的に、大幅な政策金利の引き上げを決断したのです。
つまり、アルゼンチンの中央銀行は、これくらいの高金利を与えれば、投資家は米ドルを売り、アルゼンチンペソを買ってくれるはずだから、通貨の急落は止まると考えたのです。
なお米ドルに対して通貨が急落するという現象は、南アフリカ、ブラジル、トルコなどの、他の新興国でも発生しております。
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目次
金利差を受け取っても、為替差損で元本割れになる場合がある
通貨同士の間に金利差がある場合、金利の低い通貨を売って、金利の高い通貨を買えば、その金利差を受け取れます。
現在の日本の金利はゼロに近いですから、どの国の通貨を買ったとしても、金利差を受け取れる可能性が高いのです。
ただ為替レートは様々な要因によって変動しているため、次のように得をする場合があれば、損をする場合もあります。
(1) 為替差益 + 金利差
例えば「1米ドル=100円」の時に、金利の低い円を売って、それよりも金利の高い米ドルを買ったとします。
その後は円安・米ドル高が進み、米ドルを売って円を買い戻す時に、「1米ドル=110円」になっていた場合、100円で買った米ドルを、110円で売れるため、10円の「為替差益」が発生します。
このような状態の時には、「為替差益」と「円と米ドルの金利差」の両者を受け取れるのです。
(2) 為替差損 < 金利差
(1)とは反対に円高・米ドル安が進み、米ドルを売って円を買い戻す時に、「1米ドル=90円」になっていた場合、100円で買った米ドルを、90円で売らなければならないため、10円の「為替差損」が発生します。
この為替差損により元本割れが発生しますが、「為替差損 < 金利差」という関係になっていれば、金利差が元本割れを穴埋めしてくれ、また為替差損により目減りした金利差を受け取れるのです。
(3) 為替差損 > 金利差
(2)よりも円高・米ドル安が進み、金利差を上回る為替差損が発生した場合、金利差が為替差損による元本割れを穴埋めできなくなるため、元本割れが発生するのです。
通貨安が止まらないと、金利差を上回る為替差損が発生する
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金利がゼロに低い円を売って、金利が40%もあるアルゼンチンペソを買えば、その金利差の40%程度を受け取れるのです。
かなりの魅力だと思いますが、上記のようにアルゼンチンの中央銀行が何度も政策金利を引き上げしても、通貨安はなかなか止まりません。
これを円との関係で表すと、円高・アルゼンチンペソ安が止まらないということになりますから、当面は円を売ってアルゼンチンペソを買うと、(3)のような状態になると思うのです。
もちろんアルゼンチンの中央銀行の思惑通りに通貨安が止まり、(1)や(2)のような状態になる場合もあります。
こちらの可能性に賭ける方は円を売って、アルゼンチンペソを買えば良いと思います。
ただインターネットで調べてみたら、アルゼンチンに関連した金融商品は、欧州復興開発銀行が発行している「アルゼンチンペソ建ゼロクーポン債」しか見つからなかったので、日本の金融機関を通じて買うのは難しいようです。
為替差損と手数料で元本割れする外貨建て保険
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2017年度に入った辺りから、日本より金利の高い国の通貨で保険料を運用する外貨建て保険が人気を集めております。
保険の種類としては「終身保険」や「個人年金保険」が多く、また通貨の種類としては「米ドル」や「豪(オーストラリア)ドル」が多いようです。
この外貨建て保険に加入するということは、あまり意識していない方が多いかもしれませんが、(1)や(2)のような状態になる可能性に賭けているのです。
もし賭けがはずれて(3)のような状態になった場合、つまり解約する時や満期を迎えた時に、加入する時よりも円高・米ドル安(豪ドル安)が進んで、為替差損が金利差を上回った場合、元本割れが発生する可能性があります。
それ以前に、外貨建て保険は手数料が高いため、短期で解約すると手数料で元本割れする場合があるのです。
外貨建て保険に加入したら、世界経済に関心を持った方が良い
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冒頭に記載したように新興国の通貨が売られ、米ドルが買われるのは、米ドル建ての外貨建て保険に加入している方にとっては、良い話ではないかと思います。
その理由として、米ドルが買われ、その価値が高くなると、円に対しても米ドル高が進みやすくなるため、(1)や(2)のような状態になる可能性が高くなるからです。
ただ、新興国の経済が安定化してくると、米ドルが売られ、新興国の通貨が買われるという、今とは逆の状態になるかもしれません。
そうなると米ドルの価値が低くなり、円に対しても米ドル安が進みやすくなるため、(3)のような状態になる可能性が出てきます。
もちろん、米ドル安が進む前に解約したり、保険金の受け取りを据え置いて、米ドル高になるのを待ったりすれば、このような状態になるのを回避できます。
つまり外貨建て保険に加入したら、円建て保険と同じように放っておくのは良くないのです。
また適切なタイミングで、解約や保険金の受け取りができるようにするため、世界経済に対して関心を持った方が良いのです。