現金での支払いが当たり前の日本。
しかし他国ではすでにキャッシュレス化が進み、先進国の中では後れを取っているのが現状なのです。
なかなか広がらない原因は何なのか。
キャッシュレスにすることで、どんなメリットがあるのか。
ここではキャッシュレス化を成功させた国の例と、日本の現状について紹介していきます。
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目次
キャッシュレス化がいち早く進んだ北欧スウェーデンの取り組み
キャッシュレス化がいち早く進んだスウェーデン。
国民の97%がデビットカードを持っていると言われるほど、カード決済が当たり前になっています。
公共交通機関の券売機なども現金の投入口はなく、現金で購入する場合は専用の窓口に並ぶ必要があります。
現金を持ち歩く必要がなくなった社会。
その背景には、次のような問題があったと言われています。
・慢性的な人手不足
・現金を狙った強盗事件が後を絶たない
これらの問題を解消することを目的に、キャッシュレス化の取り組みがスタートしました。
現在では現金の支払いを拒否する店舗も多く、銀行でさえ現金を取り扱っていない店舗が当たり前になり、ATMの撤去も進んでいます。
スウェーデンの現金決済は全体の決済のわずか2%。
またクレジットカードやスマホ決済ではなく、手に埋め込んだマイクロチップで支払いするシステムも普及しつつあります。
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スマホの普及が無人店舗を次々と生み出した中国
中国のキャッシュレス化が急速に進んだ背景には、スマホの普及と現金の安全性やコストの問題があったとされています。
偽札の横行、脱税、そして印刷や流通にかかるコストが大きく、出口の見えない社会問題となっていました。
それらのリスクやコストを軽減したのがスマホ決済。
インターネットを活用した新しい仕組み、アリババのスマホ決済アプリ「アリペイ」の普及などでキャッシュレス化が急速に進み、現在ではスマホ決済がごく当たり前の社会になっています。
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これにより利便性が飛躍的に向上。
現在はコンビニやスーパーに加え、飲食店やホテル、カラオケボックスなど多岐に渡る業種の無人店舗が続々出店。
中国のキャッシュレス化の取り組みは、様々なサービスの「新しいカタチ」も生み出しているのです。
中国のスマホ決済はQRコードが主流。
その方法も至ってシンプル。
ユーザーはアプリに銀行口座を登録し、店頭などに表示されているQRコードを読み取るだけ。
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さらにスマホ決済を利用すると、クーポンがもらえるというメリットも重要なポイント。
購買意欲の向上に直結していると言っていいでしょう。
複雑な操作が苦手とされる高齢者でも、積極的にスマホ決済を利用しています。
驚きなのは子供や孫へお年玉やお小遣いを渡す時も、スマホ決済で行うケースが珍しくないとのこと。
高齢化社会がキャッシュレス化のハードルを上げていると一概には言えないのかも知れません。
クレジットカードの普及でキャッシュレス化が進んだ韓国
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1997年の東南アジア通貨危機の影響で、脱税防止や消費活性化を目的にクレジットカード利用促進策を政府主導で実施。
その内容は次のようになっています。
(上限30万円)
・宝くじの権利付与→クレジットカードの利用控に付けられた番号を対象に賞金が当たる宝くじを毎月実施
・店舗でのクレジットカード取扱義務付け
(年商240万円以上の店舗が対象)
これらの結果、1999~2002年にかけてクレジットカードの発行枚数は2.7倍に、利用金額は6.9倍に拡大しています。
韓国では2015年硬貨の発行、流通、管理に540億ウォン(約54億円)、古い硬貨の廃棄に22億ウォン(約2.2億円)のコストがかかったとの報道があったと言われています。
これは日本においても決して他人事ではありません。
これまでは気にしていなかった現金のデメリット。
キャッシュレス化を進めることで、こういったコストがどれくらい減らせるものなのか気になりますよね。
キャッシュレス化に関しては「先進国」とは言えない日本
先進国と呼ばれる日本ですが、キャッシュレス化に関しては中国や韓国に比べると大きな後れを取っています。
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その主な原因とされるのが、
・治安の良さ
・現金に対する信頼性の高さ(紙幣がきれいで偽札の流通が少ない)
・現金を好む国民性
と言われています。
それでも日本のキャッシュレス決済比率は、2008年の11.9%→2016年20.0%と上昇。
クレジットカードや電子マネー、スマホ決済といった支払い方法に抵抗を感じない、むしろ便利と考える人も増えてきています。
実際に野村総合研究所が行った調査では、キャッシュレス化は銀行業界全体で年間1兆円のコスト削減が可能という試算もあります。
キャッシュレス化が進まない消費者側の理由
・キャッシュレス支払いにすると金銭感覚が麻痺したり、浪費したりするのではないかという不安がある
・セキュリティに対する不安
現金での支払いに不便さを感じないことが、キャッシュレス化が進まない一番の理由と言っていいでしょう。
キャッシュレス決済を導入していない事業者側の理由
・自社の商品や取引の形態と合わないから
・お客様のニーズが少ないから
・初期投資が高いから(端末、システムなど)
・売上向上が見込めないから
・資金回収サイクルが長いから(支払い後の資金化までのタイムラグ)
といった点がキャッシュレス化のハードルを上げているようです。
しかしその一方で、レジの現金残高の確認作業に多くの時間を費やしているという実態もあるのです。
キャッシュレス化のメリット
キャッシュレス化を進めることで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
・レジでの混雑を軽減
・資金管理の効率性向上
・消費者へのマーケティング機会の増加
更にレジの無人化を進められることで人件費のコストを削減できます。
長い目で見れば事業者側にもメリットが多いはずのキャッシュレス決済。
国や自治体の支援やモデル事業、実証実験などを積極的に行う必要があると言っていいでしょう。
ハウステンボスが、園内をキャッシュレス化に
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長崎県佐世保市にあるテーマパーク「ハウステンボス」では、2019年春から園内をキャッシュレス化にする方針であることを発表。
今年中に「テンボスコイン」という独自の電子マネーを導入し、しばらくの間は現金と併用しながらキャッシュレス化へと繋げていくそうです。
入園客はスマホに専用アプリを入れるか、入園時に専用のICカードを受け取り現金をチャージします。
園内でのアトラクションや買い物は、すべてスマホやICカードで決済。
余った分は帰る時に払い戻せるようになっています。
このキャッシュレス化によって、園内での支払いがスムーズになることはもちろん、現金管理の手間も省けるという運営側のメリットもあります。
テーマパークの中だけの取り組みではあるものの、小さな一歩が大きな進化へと繋がっていくことは間違いないでしょう。
キャッシュレス化を民間企業と積極的に進める福岡市の取り組み
福岡市は、今年度から民間企業と一体となってキャッシュレスを推進させる「キャッシュレス FUKUOKA」に取り組んでいます。
5月には実証実験フルサポート事業として、参加してくれる事業者の募集を行いました。
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「4つのモノでキャッシュレス!」というコンセプトで、
「乗りモノ×キャッシュレス」(タクシーなど)
「食べモノ×キャッシュレス」(屋台、飲食店など)
「観るモノ×キャッシュレス」(美術館、動物園など)
以上のような場所での積極的なキャッシュレス化を目指しています。
更にキャッシュレス化のメリットとして、次のような点を挙げています。
・事務作業の効率化、人材不足の解消
・インバウンド消費の取り込み
・購買情報データを分析しマーケティングに活用(売上増)
↓
「市内の99%を占める中小企業の生産向上につなげる」
・小銭を持たずに買い物ができるなど、利便性が向上
・決済に要する時間が短縮される
・多額の現金を持ち歩かず、紛失や盗難の被害リスクが低い
↓
「商業都市、観光都市としての魅力向上につなげる」
キャッシュレスの取り組みを誘引・活発化させ市民や観光客に体験してもらうことで、福岡でのキャッシュレス機運の向上や民間企業の取り組みの加速を図るプロジェクト。
こういった取り組みが他の自治体にも広がり、キャッシュレス化が進むきっかけになってくれればと思います。(執筆者:藤 なつき)