会社にお勤めしている間は、税金や社会保険の手続きの多くを、勤務先の会社がやってくれるため、これらの知識がなくても困らないと思います。
しかし定年退職などで会社を辞めると、税金や社会保険の手続きを自分でやる必要があるため、これらの知識がないと困る場面が出てくるのです。
例えば年金受給者の方が、配偶者控除などの各種の控除を受けるために送付される「扶養親族等申告書」の様式が、2017年の下半期に送付された2018年分から、A4形式(以前はハガキ形式)に変わり、また以前より記入欄が増えました。
このような申告書の複雑化により、正しく記入するのに時間がかかってしまい、提出期限までに提出できなかった方がおりました。
それにより2018年の最初の年金支給日となる2月15日に、年金の支給額が本来よりも減ってしまうという、トラブルが発生したのです。
実際に申告書を見てみると、確かに以前より複雑化しているのですが、収入と所得の違いなどの、基礎的な税金の知識を身に付けていれば、提出期限までに正しく記入するのは、決して難しくなかったと思うのです。
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目次
確定申告で困らないために、税金や社会保険の知識を身に付ける
副業を始めた方についても、税金や社会保険の知識がないと、困る場面が出てくる可能性があります。
例えば会社員として働く方が、仕事が終わった後や休みの日に、ネットオークションやアフィリエイトなどの副業で稼いだ収入は、原則的に「雑所得」に該当します。
こういった雑所得の合計が20万円を超える場合には、確定申告を行う必要があるのです。
会社員の方は確定申告をしてこなかったため、最初は困ってしまう場合が多いと思うのですが、税金や社会保険の基礎的な知識があれば、書類を自分で作成するのは、決して難しくないと思うのです。
また20万円という基準を事前に知っていれば、それを超えないように収入を調整したり、経費になるものを準備したりできるのです。
FP資格を取得する過程の中で、税金や社会保険の勉強をしてみる
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税金や社会保険の基礎的な知識を身に付けたいという方に、取得をおすすめしたいのは、FP(ファイナンシャル・プランナー)の資格です。
その理由としては試験科目の中に、「社会保険」、「公的年金」、「わが国の税制」、「所得税の仕組み」、「個人住民税」などが含まれているため、資格取得の過程の中で、税金や社会保険の勉強ができるからです。
FPの資格試験は複数の団体が実施しており、またそれぞれの資格同士に関連性があるため、どの資格を取得すれば良いか迷ってしまうと思います。
ただ受験資格が特になく、誰でも受験が可能な「3級ファイナンシャル・プランニング技能士」になるため、まずはこの資格の取得を目標にするのです。
この資格は国家資格でありながら、学科試験の合格率は50~70%の高さで推移しているため、独学でも十分に合格できます。
また3級の試験に合格すると、2級の受験資格が発生しますので、さらに知識を深めたいという方は、2級の試験にチャレンジしてみましょう。
金融商品に関する知識は、収入のアップや保険料の節約に役立つ
3級ファイナンシャル・プランニング技能士の試験科目の中には、「投資信託」、「債券投資」、「株式投資」、「外貨建商品」、「保険商品」などが含まれております。
ですからこの資格を取得すると、金融商品に関する知識も身に付けることができるのです。
こういった知識を身に付けておくと、定年退職を迎える方であれば、退職金を運用する時に役立ちます。
また副業を始める方であれば、副業の収入に加えて、資産運用による収入を確保できる可能性が出てきます。
その他に加入している生命保険の保障内容を、以前より理解できるようになるため、必要性の低い保障を削減することにより、保険料の節約ができるのです。
税制面での優遇を受けたい方は、簿記の資格を取得しておく

副業であっても自分で事業を開始すれば、個人事業主に該当するため、事業の開始から原則として1か月以内に「個人事業の開業・廃業等届出書」を、納税地を管轄する税務署に提出する必要があります。
ただ未提出の方に対する罰則はないので、副業で一定規模の収入が、継続して得られるようになってから、提出する方が多いようです。
その理由としては一定規模の収入を、継続して得られるようになると、副業の収入が「事業所得」と認められやすくなるからです。
このように事業所得と認められると、他の所得との損益通算が可能になるため、例えば副業で損失が出た場合に、給与所得からその損失を引くことができます。
なおこの書類を提出する際には、「所得税の青色申告承認申請書」を同時に提出した方が良いのです。
その理由としては青色申告にすると、65万円の青色申告特別控除を受けられたり、損失額を3年間繰り越して、各年分の所得金額から控除したりできるという、税制面での優遇があるからです。
ただ65万円の青色申告特別控除を受けるには、複式簿記で記帳する必要があるため、簿記の知識が必要になります。
その一方で最近は会計ソフトの性能が優れているため、簿記の知識は必要ないという意見もあるようです。
しかし簿記の知識があると、会計ソフトが出力したデータなどを、理解しやすくなるため、最低でも日商簿記検定の3級くらいは、取得しておいた方が良いと思います。
簿記の知識は配当金狙いの株式投資や、家計の管理にも活用できる
定年退職を迎える方についても、簿記の知識が役に立つ場面はいくつかあると思います。
例えば定年退職した後に、個人事業を始める場合には、上記の副業と同じように簿記の知識が役に立ちます。
また簿記の勉強をしていくと、会社の決算資料の中身がわかるようになるため、年金の不足を補うために、配当金狙いの株式投資をやってみようと思っている方にも、簿記の知識は役に立つはずです。
この他に簿記の勉強を通じて身に付けた、事業に使うお金の管理に関する知識は、家計の管理にも応用できるため、無駄な支出の削減に役立つはずです。(執筆者:木村 公司)