親に介護が必要となり施設入所を考えたとき、持ち家のある家庭では自宅の処分も問題となります。
そこで活用を検討してほしい制度が「マイホーム借上げ制度」です。
シニア世代が自宅を貸し出し、収入が得られる制度ですが、内容をあまりよく知らない人も多いでしょう。
そこで、今回は「マイホーム借上げ制度」をわかりやすく紹介します。
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目次
「マイホーム借上げ制度」は自宅の所有権がなくならない
自宅を担保に介護費用を捻出する方法では「リバースモーゲージ」が良く知られています。
リバースモーゲージでは、自宅に住みながら家を担保にお金を借り死亡後に自宅を売却して一括返済します。
そのため、自宅の所有者が死亡してしまうと自宅の所有権も失います。
一方「マイホーム借上げ制度」では、自宅を一般法人移住・住み替え支援機構(以下:JTI)が借上げて一般の人に転貸します。
自宅に住むことはできなくなるものの、終身に渡って借り上げてくれます。
施設入所を考えている人にとっては、自宅の管理をしてもらうだけでなく、賃貸料を施設の支払いにあてることができるありがち制度と言えるでしょう。
マイホーム借上げ制度のメリット
マイホーム借上げ制度を利用すると、以下のようなメリットがあります。
・ 3年ごとに解約の自由があるため、自宅に戻ることも可能
・ 土地や建物を売却したり、子供に相続させることもできる
・ 家賃の未払いなど、賃借人とのトラブルに直接対応しなくてよい
JTIとの賃貸契約は3年ごとに契約が終了する定期借家契約を活用します。
そのため、3年ごとに契約を見直すことができ、自宅に戻ったり自宅を売却することが可能です。
契約を終了して子供に相続することもできます。
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マイホーム借上げ制度のデメリット
当然ながらマイホーム借上げ制度にも以下のようなデメリットがあります。
・ 毎月の賃料に加え、賃借料の15%に相当する諸経費がかかる
・ 借上げの際の建物調査によって、補強や改修が必要と判断されると費用がかさむ
マイホーム借上げ制度を利用すると、JTIが間に入るため自分で管理するよりも収入はどうしても低くなってしまいます。
特に気をつけておかなければならないのは、申し込みをしてから実際に賃貸契約が開始され収入が入るまでには3~5か月かかることです。
申し込み後には、建物診断が行われます。
必要があれば補強や改修工事を行い、ようやく入居者の募集となります。
ここまでに3~5か月かかることが多いでしょう。
実際にマイホーム借上げ制度を利用する場合には、この時間がかかる点にも気を付けたうえで、介護を受ける人の意向をよく確認したうえで検討するようにしてください。(執筆者:中村 楓)