平成30年7月の西日本豪雨により広範囲で甚大な被害が出ており、インフラの復旧に1か月以上かかるケースも出ております。
遅ればせながら、被災された方々には心からお見舞い申し上げます。
さて住宅などの資産を失った被災者の方が確定申告で利用できるものとして、雑損控除や災害減免法による軽減免除があります。
この2つのうち有利な方法を選択して申告することができ、確定申告書作成コーナーでは必要事項を入力すると、どちらで申告するか自動判定してくれます。
このうち雑損控除を利用でき、所得に対して損害額が大きい場合は、損失の繰越も可能です。
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目次
雑損失とは?
長年確定申告されている方は、縁がなくともこの言葉を目にしていないでしょうか?
なお経理職やフリーランスの方、簿記をご存じの方は、勘定科目としての「雑損失」を使った記憶があるかもしれませんが、確定申告における雑損失は意味が異なります。
雑損失とは、所得控除のうちの1つである雑損控除の額を指します。
所得控除はほかに医療費控除や生命保険料控除などがあります。
雑損控除の計算式ですが、
災害関連支出 - 5万円
※総所得金額等は、分離課税の所得を含めた各種所得の合計
※災害関連支出とは被災後の取り壊し費用など
のうち高いほうの額となります。なお
となります。
雑損失が総所得金額等から引き切れない場合、翌年以降3年間繰越すことが可能です。
繰越額の注意点
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雑損失>総所得金額等 の場合
この場合は単純に、雑損失 ― 総所得金額等を翌年以降に繰り越すことができます。
所得控除額 > 総所得金額等だが雑損失 < 総所得金額等の場合
この場合は課税総所得金額等がマイナスになるため、所得税は0円になるのですが、繰り越す金額について誤解が生じやすいので、気をつける必要があります。
例えば
総所得金額等 : 400万円
雑損控除の額 : 380万円
雑損控除を除く所得控除の合計額 : 40万円
となる場合、総所得金額等より所得控除の合計額が20万円上回りますが、20万円繰り越せるわけではありません。
所得控除は、雑損控除から先に差し引くという規定があるため、総所得金額等 > 雑損控除額となる場合は繰り越す金額はありません。
他の繰越控除との違い
所得税や住民税の計算上、3年間繰り越せるものとして他に下記のものがあります。
上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
先物取引に係る雑所得等の損失の繰越控除(FXなどで生じた損失)
上記は、本来所得として儲けになるものが損失になった場合に繰り越せるものです。
雑損失の繰越控除は、引ききれない所得控除という点で上記のものと大きく異なります。
社会保障制度に与える影響
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雑損失の繰越控除と、上記に挙げたその他の繰越控除は性格が異なるため、社会保障の制度によって両者の扱いが異なることがあります。
国民健康保険などの公的保険
国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・(市区町村の)介護保険料は、所得控除を考慮しない段階の所得合計に基づいて計算されるため、雑損失の繰越控除があっても保険料が下がることはありません。
また国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料はその他の繰越控除が考慮されますが、介護保険料では一切考慮されないという違いもあります。
なお70歳以上の高額療養費制度や医療費窓口負担割合など、住民税の課税所得が基準になるものは、雑損失の繰越控除が影響してきます。
国民年金保険料の免除
全額免除の所得基準に関しては、介護保険と同様、どの繰越控除も考慮されません。
一方で多段階免除(4分の1・半額・4分の3免除)に関しては、雑損控除が考慮されるため、雑損失の繰越控除により基準となる所得が下がるほか、純損失の繰越控除・先物取引に係る雑所得等の損失の繰越控除も考慮されます。
なお上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除ですが、そもそも株式等譲渡所得や申告分離課税の配当所得・利子所得が、判定基準となる所得から除外されます。
児童手当
国民年金保険料の多段階免除と同じ基準のため、雑損失の繰越控除により基準となる所得が下がります。
以上です。今回の記事が少しでもお役に立てば幸いです。(執筆者:石谷 彰彦)