退職金の受取方法には「一時金受取」、「年金受取」、「一時金と年金受取の併用」の3種類あり、会社の退職金制度により違いはありますが、多くの企業で受取方法を選ぶことができます。
退職金の受取方を選ばないといけない時期が近づきますと
と悩む方は多いです。
今回は、「自分にはどれが良いのか?」と選択する際の判断材料にしていただけるよう、それぞれの退職金の受け取り方の特徴を解説いたします。
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目次
退職金制度の仕組みから整理しましょう
皆さんの老後の生活を支える仕組みには、まず公的年金の国民年金や厚生年金があります。
「退職金」は私的年金といわれる部分で、公的年金に上乗せして、皆さんの将来の生活資金に役立てていただくために会社が独自で行っている制度です。
会社は「退職金」の原資を、確定給付企業年金、確定拠出年金、厚生年金基金といった様々な制度を利用して貯めています。
例えば、会社の退職金が確定給付企業年金と確定拠出年金の2本立てで準備されている場合、確定給付企業年金は年金で受取り、確定拠出年金は一時金で受取るといったことも選択できるわけです。
一時金受取のメリット・デメリット
一括にポンと一時金で受取る場合のメリットは2つです。
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1. 退職所得控除がある
1つ目は「退職所得控除」という大きな所得控除枠がある点です。
退職所得控除は
勤続年数20年超の場合は 70万円×(勤続年数-20年)+800万円
で計算され、例えば勤続年数40年の場合、退職所得控除は2,200万円となります。
一時金で受取った退職金の税金の計算は、まず退職金総額から、退職所得控除を引きます。
仮に40年お勤めの方ですと、退職金が2,200万円なら税金がかかりません。
もし退職金額が退職所得控除額を超えたとしても、課税対象は超えた分の半分です。
退職金を一時金で受取ることで、大きな税制優遇を受けられるということです。
2. 社会保険料計算の対象とならない
2つ目のメリットは、一時金で受取った場合、退職金が社会保険料計算の対象とならない点です。
この2つのメリットのおかげで、税金や社会保険料を考慮した実質の受取総額は、一定年齢までですと年金受取より多くなる可能性が大きいです。
当然、個人差がありますが、例えば、筆者が先日、あるお客様の一時金、年金受取の損得計算をしたところ、80歳過ぎまでは一時金での受取総額が年金での受取総額よりも多い結果がでました。
デメリット:長生きした場合
デメリットは長生きした場合に、ある時点から退職金受け取り総額が年金受取よりも少なくなってしまう可能性があることです。
このデメリット面は年金受取のメリットにもつながりますので次項の年金受取で解説します。
あと、一度にまとまったお金を受け取ってしまうとついつい、気持ちが大きくなり、パ~っと使ってしまうこともあるかもしれません。
一時金受取の場合は、年金受取よりもさらに気持ちを律するための資金管理対策は必要になってくるでしょう。
年金受取のメリット・デメリット
年金受取は、会社が2%や3%といった運用目標で運用を行いながら、退職金を分割で受取る方法です。
分割で受取れる期間は、会社の退職金制度により終身、20年、10年、5年等様々なタイプがあります。
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メリット:運用収益を得らえる
年金受取のメリットは、会社が一定の運用利率で運用を行うので、その運用収益を得られる点です。
最近では2%ほどの運用利率を設定している会社が多いようですが、個人的に2%程度の運用成果を確実に出すことは簡単とはいえず、年金受取の運用効果享受メリットは大きいです。
デメリット:課税対象になってしまう
年金受取のデメリットは雑所得として、所得税・住民税の課税対象となり、また社会保険料や介護保険料計算の対象にもなる点です。
このような税金や社会保険料の負担の違いにより、年金受取の運用効果があったとしても前述のように、一定時期まで受取総額が一時金受取より少なくなるということもあるのです。
ただ、再度メリットに戻りますが、年金受取は一定年齢を過ぎると一時金受取より受取総額が多くなる可能性が高いです。
長生きをすればするほど得をする受取方法といえるかもしれません。
まとめ
それぞれメリット、デメリットがあり「こちらを選んでおくのが正解!」という答えがないというのが結論になってしまうかもしれませんが、それぞれの受取方法の特徴を理解してご自身のライフプランに合った選択の判断材料にしていただければと思います。
最近は、会社の経営状態によっては運用利率を下げる等の退職金制度が改正されるリスクに備えて一時金受取を選ばれる方も多いようです。(執筆者:寺野 裕子)