消費者金融やクレジット会社などの貸金業者に適用される、上限金利を定めた法律としては、上限を年15~20%とする「利息制限法」と、上限を年29.2%とする「出資法」がありました。
多くの貸金業者は、出資法の上限を超えなければ、罰則が科せられなかったため、利息制限法の上限金利ではなく、出資法の上限金利でお金を貸してきたのです。
このように利息制限法の上限を超えるけれども、出資法の上限を超えない金利は、「グレーゾーン金利」と呼ばれております。
しかし最高裁判所は2006年、
と判断しました。
これによりグレーゾーン金利でお金を借りていた顧客は、上限金利を超える利息を支払っていたことになるため、「過払い金」が発生したのです。
その後は司法書士事務所や、弁護士事務所などを通じて、この過払い金の返還を求めるようになりました。
最高裁判所が無効と判断してから、返還を請求できる時効の10年を過ぎた現在でも、「過払い金請求なら〇〇事務所まで」というCMをよく耳にします。
でも、そもそも借金経験がない方にとっては、まったく関係のない話です。
ところが、そのような方であっても、次のような
と思うのです。
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目次
国民健康保険は手続きが遅れても、退職日の翌日に遡って加入する

現在の日本は全ての国民が、健康保険や国民健康保険などの、何らかの公的医療保険に加入するという、「国民皆保険制度」をとっております。
また、20歳以上60歳未満の全ての国民は原則として、国民年金や厚生年金保険などの、何らかの公的年金に加入するという、「国民皆年金制度」をとっております。
そのため、公的医療保険や公的年金に何も加入していない期間が生じない仕組みになっているのです。
例えば、健康保険と厚生年金保険に加入していた方が、8月末に退職したにもかかわらず、11月に入ってから国民健康保険の加入手続きをしたとします。
その場合でも、健康保険の被保険者の資格を喪失した日(この例では退職日の翌日の9月1日)が、国民健康保険の加入日になります。
このようにまだ手続きをしていなくても、9月から国民健康保険に加入していることになっているのですから、9月以降に病院などの窓口に提出するのは、国民健康保険の保険証です。
もし、退職する前に使っていた保険証を提出してしまって、病院側が「健康保険の被保険者の資格を喪失」しているのに気付かなかったとすると、医療費の1~3割の自己負担だけで済んでしまう場合があります。
しかし、退職した会社の健康保険を運営する協会けんぽや組合健保の立場から考えると、本来は支給する必要のない方に医療費の7~9割を支給したことになりますから、過払い金が発生します。
そうなった場合、協会けんぽや組合健保はその返還を請求してきます。
ですから、退職する前に使っていた保険証を、退職した後に使ってはいけないのです。
なお、国民健康保険の加入手続きが済んだ後に、こちらに対して請求をすれば、原則として協会けんぽや組合健保から返還を請求された分と、同額の還付を受けられます。
保険料を前納した方が違う制度に加入すると、過払い金が発生する
公的医療保険や公的年金は、原則として複数の制度に重複して加入できません。
また、健康保険や厚生年金保険は、国民健康保険や国民年金よりも加入の優先順位が高いのです。
そのため、国民健康保険や国民年金に加入していた方が、例えば9月1日から会社で働き始め、健康保険や厚生年金保険に加入した場合、国民健康保険や国民年金の被保険者の資格を喪失します。
こういったケースで、9月以降の国民健康保険や国民年金の保険料を納付していた場合、過払い金が発生しますから、この返還を請求する必要があります。
このうちの国民年金については、行政側が「国民年金から厚生年金保険に切り替わった」ことを把握できるため、過払い金請求に必要な書類が送られてくるのを、待っていれば良いのです。
しかし国民健康保険については、市町村役場まで行って、国民健康保険の被保険者の資格喪失の手続きや、過払い金請求の手続きをする必要があります。
国民健康保険は、国民年金のように受け身ではいけないのです。
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住所変更した後の介護保険の保険料は、変わるまでに時間がかかる
老齢(退職)年金、障害年金、遺族年金を受給している65歳以上の方のうち、年間の支給額が18万円以上の方については、年金から介護保険の保険料が天引きされます。
その介護保険は市町村単位で運営され、また保険料も市町村ごとに違います。
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例えば、6月にA市からB市に引っ越した場合、6月からは従来と金額が違う、B市の介護保険の保険料を納付します。
しかし、転出届を出してから天引きが中止されるまでに数か月がかかるため、6月分の年金からも、A市の介護保険の保険料が天引きされてしまいます。
それに加えて、引越し先のB市から、6月以降の介護保険の保険料の納付書が送付される場合があるのです。
こういったケースでは、6月分の年金から天引きされたA市の介護保険の保険料のうち、過払い金になった分については、返還を請求する必要があります。
なお過払い金請求に必要な書類は、基本的に行政側が送ってくれるので、それを記入して送付すれば、手続きは完了します。
また住所を変更してから、半年~1年程度が経過すると、再び年金からの天引きに切り替わります。
時効の2年が経過すると、過払い金を取り戻せなくなる
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今回紹介したケース以外でも、行政側が過払い金が発生しているのを把握している場合には、返還請求のために必要な書類を、送ってくれる場合が多いのです。
しかし行政から届いた郵便物の中身を、きちんと確認しない方がいるため、過払い金が放置された状態になっているのです。
そして返還請求をしないまま、時効の2年が経過すると、過払い金を取り戻せなくなります。
ですから、行政側から送られている郵便物は、きちんと中身を確認すべきであり、また何かわからない点があったら、問い合わせ先に連絡した方が良いのです。(執筆者:木村 公司)