先日、相続ファシリテーター協会の研修に参加してきました。
この協会は相続のあらゆる問題を少しでも解決すべく弁護士や税理士など士業の方やFPと協力をして「生前対策」を推進しています。
現在の相続問題について、現状やその対策を学ぶことができ、私も今後のお客様サポートに活かしていきたいと思います。
中でも印象に残った話が、自筆証書遺言の実行率です。
自らが自書(手書き)で作成する遺言書ですが、せっかく書いていたにも関わらず、その遺言が実行つまり書かれた通り成立したのは、たったの3%とのこと。
何が起こっているのでしょうか…
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今回は自筆証書遺言と今後の改正民法についてお伝えしていきます。
目次
遺言書の種類
遺言書には3つの種類があります。
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(1) 自筆証書遺言
自分で遺言の全文・氏名・日付を自書し、押印する
(2) 公正証書遺言
本人と証人2名で公証役場へ行き、本人が遺言内容を口述し、それを公証人が記述する
(3) 秘密証書遺言
本人が証書に署名・押印した後、封筒に入れ封印して公証役場で証明してもらう
遺言書には決まった様式(フォーマット)はありませんが、内容の書き方には要件や形式があります。
また(1)自筆証書遺言と(3)秘密証書遺言は、遺言を書かれた方が亡くなられた後、家庭裁判所に検認してもらい、遺言書として認めてもらわなければなりません。
遺言書が見つかってから検認されるまでに約2か月の期間がかかります。
(2)公正証書遺言が一番安全で確実な遺言書なのですが、費用がかかり、公正証書役場まで行くことや2名の証人をお願いすることなどハードルが高いようです。
一番、作成が簡単で多くの方が準備されている自筆証書遺言。
実行率が3%となってしまった原因は何でしょうか!?
- 遺言書が見つけられない
- 書き方が間違えており、要件を満たせず無効になってしまう
- 改ざん、破棄されてしまう
この3つが主な原因です。
先ず、遺言書が見つけられないのはイメージがつくかと思います。
遺言書の存在を家族が知らない、大事にしまっていて見つけられない等があります。
次に、ご自身が自筆で書く為、不動産の住所表記が間違えていたり、財産が書き漏れていたりするのです。
正しい遺言書の書き方でないと無効となってしまいます。
そして最後の改ざん、破棄!
こちらは本当に残念なことなのですが遺言書を見つけた方が自分に有利なように内容を改ざんしてしまったり、遺言書の存在自体をなくす為に破棄してしまったりするのです。
これらの原因により、せっかく自筆証書遺言を準備しておいても書かれた通り正しく相続されるのは3%という結果に。
それでは遺言を残す人も、そのご家族もかわいそうですよね。
そこで、民法の改正があります。
約40年ぶりの大幅見直しとなる相続分野に関する改正民法が可決成立しました。
今後、施行される予定です。
民法の改正
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相続法分野の改正において自筆証書遺言の作成要件が緩和されることになりました。
また、遺言書が見つけられない、改ざんや破棄されてしまうことのないよう保管してくれることになりました。
・ 財産目録をパソコンで作成可能
・ 法務局で保管
・ 家庭裁判所の検認を要しない
財産が複数ある場合、それら全てを自書する必要があったのですが、財産目録をパソコンで作成することが可能になります。(自書しない目録の全ページには署名捺印する必要があります)
また、公的機関である法務局に保管できる制度が創設されました。(これは民法ではなく遺言保管法によります)
これにより、「検認」の規定は適用されません。検認に必要だった手間や期間がなくなり、また、遺言書の存在も明確にすることが出来ます。
今後の改正により、自筆証書遺言が書きやすくなり、また遺言書の安全性は高まるでしょう。
しかし、ご自身が内容を記載する為、内容の有効性については事前に確認が出来てはいません。
より確実な遺言書を残したいという場合は、公証人が作成する為、無効となる可能性が少ない「公正証書遺言」を準備される方が良いでしょう。
おわりに
大切な資産を継承していく為に書く遺言書ですが、そこには遺言を残す方の想いも入っています。
今回の改正により、これまでの問題が解消し、最期の言葉や想いを確実に伝えられるようになればと思います。(執筆者:藤井 亜也)