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介護保険施設の利用期間(在所期間)について

介護保険で1割~3割の負担で施設に入所できるからといっても、お金がいつまで続くか気になる人は多いと思います。
一度、施設に入ったのはいいけど、90歳、100歳と長生きすると同時にそれだけ在所期間が長くなり、費用もかさむことになります。
そこで、まずは介護保険施設である特別養護老人ホームを例に挙げて、在所期間を分析しました。

このグラフは、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)を含む3施設に入所した人が、H21~H25にかけて、何年ぐらい利用したか全国の平均日数を示したものです。
直近のH25年の特別養護老人ホームでの在所期間は1,405日です。
4年弱の計算になりますね。
次に、下の表をご覧下さい。

これは、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)入所前と退所後の状況です。
退所の理由として、7割の人が死亡退所となっていることが分ります。
これは、特別養護老人ホームに入所している人の多くは、4年間ほど過ごして死亡していることになります。
さて、せっかくなので、私の勤務する特別養護老人ホームの在所期間をご紹介します。

先ほどの全国のものと表現内容が異なりますが、入所し3年以内に退所(死亡)する人が4割以上、5年以内ともなると5割を超えることになります。
大体、全国のものと合致していそうですね。
実際に介護保険で必要な費用を計算

ケース(1) 1割負担
在宅介護を3年実施した後、特別養護老人ホームに入所し4年後に死亡した場合
ここでは、在宅介護は要介護3、特別養護老人ホームは要介護5で利用したものとして計算をしてみます。
在宅介護には支給限度額というものが存在します。

※単位は言い換えれば1割負担した場合の金額になります
この金額を超過して利用すると自己負担になるというものです。
要介護3の場合は、自己負担が約2万7,000円/月ですので、3年間で計算すると97万2,000円になります。
更に、その後特別養護老人ホームに入所すると、12万/月になり、4年間で計算すると576万円になります。
二つを合計すると…
約673万円かかることになります。
勿論、医療費は別ですので、生きていくためには更にお金が必要ですね。
ケース(2) 1割負担
在宅介護を2年間実施した後、介護老人保健施設に1年間入所し、その後更に特別養護老人ホームに入所し4年後に死亡した場合
ここでは在宅介護は要介護2、介護老人保健施設は要介護4、特別養護老人ホームは要介護5で利用したものとして計算をしてみます。
在宅介護で要介護2の場合の支給限度額を考慮すると、自己負担は約2万円/月ですので、2年間の計算で48万円になります。
次に、介護老人保健施設は要介護4ですので、約11万円/月とすると、1年間で132万円になります。
最後に、特別養護老人ホームは要介護5ですので、約12万円/月とすると、4年間で576万円になります。
全てを合計すると、756万円になります。
ケース(3) 1割負担
在宅介護を3年実施した後、特別養護老人ホームに入所し6年後に死亡した場合
それでは少し長生きしたケースで考えてみます。
ケース(1)と同じく、在宅介護は要介護3、特別養護老人ホームは要介護5で利用したものとして計算をしてみます。
要介護3の場合は、自己負担が約2万7,000円/月ですので、3年間で計算すると97万2,000円になります。
更に、その後特別養護老人ホームに入所すると、12万/月になり、6年間で計算すると864万円になります。
合計すると…
約961万円かかる計算になります。
介護現場では、家族が四苦八苦?
今回のこの3つのケースをご覧頂いて、どのように感じましたか?
これらの金額は1割負担で、介護保険制度に該当する部分のみだということを、もう一度おさえておいて下さい。
在宅介護では食費や電気代、家賃は含まれてはいませんし、特別養護老人ホームに入所しても医療費はかかります。
こうやって考えると、老後が不安になるのが分ります…。
さて、現場でどのようにして、これほどの高額な費用について対応していると思いますか?
例えば3人の子供がいたとすれば、施設に入所している親の年金に補足するような形で、少しずつ出し合って利用料金を払っています。
または、介護保険とは関係のない部分の「管理費」(電気代等)の部分が安く出来ないか、交渉される家族さんもいらっしゃいました。
なかでも、私が衝撃的だったことがあります。
市役所から一本の電話がありました。
入所している利用者の長男さんが、生活保護受給の申請をするために来たというのです。
現在の経済状況では受給の対象にならないと分かると、自分の親2人に離婚をするように促して、生活保護受給の対象にしようとしたようなのです。
結局本当に離婚して、所得が少なくなったことにより生活保護を受給するようになったのです。
市の職員の方は「離婚をこちらで辞めるようには出来ないので…」と言ってました。
「そこまでして?」と言うのが正直な私の感想です。
まとめ

現在、日本の社会保障費は非常に厳しい状態ですので、今後国民の負担も厳しくなることが予想されます。
やはり、老後に向けての貯金は大切ですね。(執筆者:陽田 裕也)