現在外国人労働者を積極的に受け入れるために、国会で議論がされている。
日本は今まで単純労働者の受け入れを事実上拒否し、外国人労働者を原則受け入れない方針であった。
ただ現実的には、フィリピン、インドネシアなどの国から介護人材を受け入れたり、研修生という名目で受け入れてきたりしてきた。
また、実際コンビニや、ファストフード店に行くと、外国人がアルバイトしているのをよく見かける人も多いだろう。
その結果、現実的に受け入れて、現実的にはさまざまな問題が出てきている。
海外でも、ドイツ中心にトルコ人を積極的に受け入れて、現在ドイツではさまざまな問題を引き起こし、ヨーロッパ全体で移民の問題に直面している。
なぜ、そこまで外国人を受け入れることが必要なのか? それは結果的に、双方にとってメリットがあるからである。
そこで、このシリーズで、外国人が日本に働くことが現実的になった場合に、それぞれの日本人の立場で考えるべき内容を3回シリーズで記載したい。
今回は第一回目で「異文化対応スキル」をテーマとして、知っておくべき3つのルールを紹介したい。
異文化対応スキルというのは、特に特別視する必要はないと思う。

目次
1. 各国の考え方の違いを表す異文化の5つの指標
これはオランダの社会心理学者ホフステッドが行った1970年代IBM社員に行った調査から導かれた5つの指標である。
「個人主義指標」
「男らしさ」
「不確実性回避」
「長期的思考性」
の指標は今でも変わっていない。
全部は紹介できないので、1つだけ紹介したい。
設置された機械の1つに欠陥が発見された。
その原因は設置作業に従事したチームの一員の不注意によるものであった。
その不注意による欠陥を招いた当人が責任を取るべきである。(以下のスコアは「はい」と回答した%)
米国 :54%
イギリス :48%
タイ :45%
マレーシア :42%
中国 :37%
ドイツ :36%
インド :36%
日本 :32%
シンガポール :31%
インドネシア :16%
会社の中での個人の志向性は日本とアジアの国においては、あまり違いはない一方で、欧米の国の3か国では、違いが顕著である。
私見としてはドイツが日本と極めて近いことと、インドネシアでは、かなり個人の責任を問う%が低くなった。
この結果は、集団の定義「会社」、「宗教」、「コミュニティ」で左右されるので、各国の文化、歴史、そしてホフステッドの残りの4つの指標を合わせて分析すると、各国の考え方の違いが浮き彫りになるということである。(「異文化の波」フォンス・トロンぺナールズ、チャールズ・ハムデンーターナーより)

上記の結果は、考え方において日本と近いと思った国もあるし、意外と遠かったと思う国も人によってはあるかも知れませんね。
2. ハイコンテキストとローコンテキストコミュニケーション
この概念は、1930年代にエドワード・ホールが最初に提唱した概念である。
コンテキストは直訳すると「文脈」で、コミュニケーション上は、「意味、前提条件」と捉えたほうがわかりやすい。
「ハイコンテキスト」コミュニケーションとは、言葉そのものの意味だけではなく、前提条件を伴った意味を理解したうえで、コミュニケーションが成立する。
はっきり伝えることは少ない。最近で使われている言葉で言うと「空気を読む」、「忖度」などがわかりやすい。
これも国によって異なる。(「異文化理解力」エリンメイヤーより)
ローコンテキストの代表的な国:アメリカ、オーストラリア、カナダ、イギリス、ドイツ

上記のパターンで、コミュニケーションをとる場合は4つのパターンが存在し、相手の状況によって、コミュニケーションスタイルを変更することで、スムーズな意思疎通が達成される。
3. すぐに判断せず、観察する事
上記により、国別に志向性、コミュニケーションの行動性が異なる状況が理解できれば、最後に、相手を尊重するという前提で、表面的に見えた行動パターンをすぐに判断せずに、観察することが重要になる。
3つの事例を紹介する。
親が子供と一緒に寝る行為
日本での考え方:当たり前である(一緒に寝ることが親の子に対する愛情表現)
フランスでの考え方:当たり前ではない。(子供と別々に寝ることが子供への愛情表現)
子供の頭をなでること
日本での考え方:良いこと(褒めるという行為)
インドネシアでの考え方:よくないこと(イスラムで子供の魂を奪う行為)
口臭予防すること
日本:特別なこと:(体臭含めて匂いはあまりしないため口臭ケアは当たり前ではない。)
欧米:当たり前のこと(体臭はきついため、匂いの対処は当たり前の行為である)
その他、中国人が電車の中で、携帯通話によって大声で話す行為、お辞儀ではなく、握手する行為等、もっとたくさん存在する。
海外と縁のなかった人たちの対応力が問われてくることに
表面的に見えることを自国の論理で判断すると、双方に意思が交換できず、トラブルのもとになる。
「忖度」、「空気を読む」はローコンテキストの国の人には全く通じない。
むしろ、話が通じない場合は、説明しない話し手の責任となる。
私含めてグローバルで働く人は、このような経験は当たり前ではある。
ただこれから外国人が入ってきた場合には、単にグローバルのフィールドで活動してきた人々だけではなく、むしろ海外と縁のなかった人たちの対応力が問われてくることになる。
それを乗り越えるためには「共通の目的、共通の目標」があれば、少々のトラブルは回避でき、問題とならないと考える。
ただ、通常の場面では、共通の目的、目標は会社勤務する人々以外では極めて困難である。
だから、まずは観察が必要なのである。早とちりはケガの元である。
日本が直面する課題は山積み

現在日本で直面する課題は、少子高齢化による労働不足、水道哲学から始まった規模の経済からのビジネスモデルの転換、キャッシュレス決済、AI化、第四次産業革命など世界経済に乗り遅れない対応等が必要である。
正に日本人だけでは乗り越えることができない課題が山積している。
外国人と協力して実行に移す内容が多い。
では、はやとちりせずに観察できれば済むのか? 決してそうではない。
むしろそれらを乗り越えるために必要なことは何かを考えていく必要がある。
外国人対応できれば商売繁盛間違いない。
次回は第二回目で乗り越えるためのスキル、異文化コミュニケーションの原則を述べたい。(執筆者:廣田 廣達)