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介護中に大きな総合病院から退院を迫られる
自宅で介護をしていて転倒して骨折をしたとします。
入院し手術をするため大きな総合病院に入院します。
手術が終わりリハビリが開始されたと思った途端、
言われたことはありませんか。
まるで病院を追い出されるかのような印象を持たれる方もいらっしゃると思いますが、なぜこのようなことになるのでしょうか。
その理由について迫っていきます。

早期退院の背景には「地域包括ケアシステム」の存在がある
日本は、他の国に例をみない速さで高齢化が進行しています。
65歳以上の人口は、現在3,000万人を超えており(国民の約4人に1人)、2042年の約3,900万人でピークを迎えます。
その後も、75歳以上の人口割合は増加し続けることが予想されています。
周囲を見ても高齢者ばっかり…。
田舎では全然珍しくない光景です。
このような状況の中、団塊の世代(約800万人)が75歳以上となる2025年(平成37年)以降は、国民の医療や介護の需要が、さらに増加することが予想されているのです。
このため、わが国においては、2025年(平成37年)をめどに、「高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援」の目的のもとで、なるべく住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、自分の住む地域での包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築がなされているのです。

地域包括ケアシステムと早期退院の関係
「これからは自分が住んでいる地域で介護や医療を包括的に受けてください」というのが地域包括ケアシステムです。
例えば、自分の住んでいる隣の市の大きな総合病院に入院するとします。
大きな総合病院の役割は急性期医療であり、長々と医療を行う場所ではありません。
緊急手術を行いその後ICUで治療を行ったりします。
急性期を過ぎると、すぐに小さな入院設備のある病院へ転院が促されます。
最終的には自宅(自分の暮らす地域)で町医者による医療や、ヘルパーによる介護受けるような流れになります。
施設で暮らす高齢者でも同じです
大きな病院で大腿骨頚部骨折と診断され、すぐに手術を行いました。
高齢者に多い骨折ですが、人工骨頭置換術という手術をしました。
術後すぐにリハビリが開始され、1週間ほど経過すれば、「そろそろ施設の近くの病院でリハビリを…」とお声がかかったそうです。
施設から30分くらい離れた病院から10分程しか離れていない病院へ転院をし、1か月程リハビリをした後、当施設に戻ってきました。
こうやって考えれば、最短で1か月半ぐらいで施設に戻ります。

病院だって儲けたい
早期退院の背景には「地域包括ケア」という仕組みがあります。
実際医療の現場での経営はどのようになっているのでしょうか?
単純に考えて、患者が増えて入院している人が多ければ多いほど、儲けが増えるという仕組みではありせん。
病院の収入は「診療報酬」によって決定されます。
診療報酬なのですが、入院する期間が長ければ長いほど少ない仕組みになっています。
1人の患者さんが長期に渡り入院するよりも、新規の患者さんを増やしていう方が、病院は儲ける仕組みです。
このような仕組みだからこそ、早期退院を行い病院も儲けたいからくりになっています。
逆に言えば、必要な人に必要なタイミングで高度な医療を提供できる仕組みだともいえます。
私だって、急に倒れた時、「入院者がいっぱいで受けいれができません」とは言われたくないです。
入院する前に心掛けたいこと

入所の際に家族さんに確認することがありますが、その中のひとつに「入院はどのようにされますか?」と質問します。
この質問の意味ですが、
(2) 入院すると時には泊り込みをして付き添いを依頼されることもあるがいいのか。
(3) 入院しても、どこまで回復できるか保証はないがそれでもいいのか。
(4) 契約では3か月以内に戻ってこないと退所の手続きをさせてもらうがいいのか。
このようなことを総合的に考えて判断していただいています。
特に、病気よりも事故などの外傷や骨折は、家族たちの想定とは違った入院になることが多いようです。
目まぐるしく変化する病院の対応に、家族さんもついていけず、困っている状況をよくお見かけします。
入院をするということは、これまでお話したように、早期退院を目指して支援することをもう一度心掛けておいてください。(執筆者:陽田 裕也)