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離婚と死別の違いは何でしょうか?
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盲点になりがちなのは「前夫の両親との関係」です。
血のつながっていない親戚関係のことを法律上、「姻族」と呼びますが、離婚の場合、離婚届を提出すれば、夫と妻の関係だけでなく、妻と夫の両親の関係も同時に消滅します。
一方、死別の場合はどうでしょうか?
夫はすでに亡くなっているのに、妻と夫の両親との関係は、死別と同時に消滅するわけではなく、「姻族」のまま残るのです。
もし、義両親との関係を完全に断ち切りたい…世話をしたり、面倒をみたり、介護をするのが嫌なら、どうすれば良いのでしょうか?
役所には「姻族関係終了届」という届出があります。
この届出用紙に記入し、役所に提出することで、正式に夫の両親との縁が切れるのですが、義両親の承諾は必要なく、妻が単独で行うことができます。
法務省の統計によると「姻族関係終了届」の届出件数は10年前と比べ1.5倍も伸びています。
夫の親戚とのしがらみを断ちたいという妻が増えていることの表れでないでしょうか。
姻族関係終了届の届出件数の推移
2006年度/2343件
2007年度/2344件/0%
2008年度/2351件/0.3%
2009年度/2334件/-0.4%
2010年度/2427件/3.6%
2011年度/2542件/8.5%
2012年度/2793件/19.2%
2013年度/2743件/17.1%
2014年度/2802件/19.6%
2015年度/3493件/49.1%
【実例】未亡人の妻が夫の両親との縁を切り、家を出て、介護をやめてしまったケース
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「息子も私もずいぶん楽になりました。(夫の母親を)介護しなくて良くなったので。」
そんなふうにあんどの表情を浮かべるのは本多量子さん(仮名。58歳)
量子さんは結婚28年のうち15年間、夫の母親と一つ屋根の下で暮らしてきたのですが、今まで自己中の塊のような夫に悩まされ続けてきました。
量子さんは新卒で就職した会社に今でも勤務しており、今年で勤続34年目。
夫は妻(量子)さんが正社員で働き、安定した収入を得ているのをいいことに、部下におごったり、キャバクラ嬢に貢いだり、ギャンブルに入れ込んだり…
ありとあらゆる散財に手を染め、まともに生活費を入れない月も多く、量子さんの稼ぎで一家を支えざるを得なかったのですが、それだけではありません。
2年前には義母が脳梗塞で倒れたのですが、その後遺症で身体の一部にまひが残ったので、量子さんは夫子だけでなく母の面倒も見なければならなくなったのです。
量子さんは結婚から28年間、仕事、家事や育児、そして介護に追われる毎日でしたが、そんな最中、長年の暴飲暴食がたたったのでしょうか。
夫が「末期の悪性リンパ腫で余命6か月」と診断され、あっという間にこの世を去ってしまったのです。
量子さんは思わぬ形で未亡人になり、息子さん(24歳)と義母(79歳)が残されたのですが、量子さんの選択肢は二つ。
これは夫の実家で暮らし、義母の世話をし、義母の介護費用を含め、すべての費用を自分の収入から負担することです。(夫はほとんど遺産を残さなかったため)
夫の実家を出て、父親の世話を義弟に任せ、自分の収入や退職金、年金は自分のために使うことです。
量子さんの選択は? 「姻族関係終了届」を提出
25年間の結婚生活を振り返ったとき、夫に散々、振り回されたこと、夫のことを義母はほとんど注意してくれなかったこと、何より悪しき思い出がつまった家(実家)のことを思い浮かべると、これ以上、亡き夫に義理立てする気にはなれませんでした。
量子さんは息子さんと一緒に実家を出て、2人でアパートを借りて暮らし始めたのです。
そして役所には「姻族関係終了届」を提出し、夫の実家とは縁を切ったのですが、量子さんは当時の心境をこう振り返ります。
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もし、量子さんが「離婚」という形で夫や義母と縁を切っていれば、夫の退職金や厚生年金を手に入れることができたかもしれません。
しかし、夫はどの仕事も長続きせず、就職しては退職するの繰り返しで退職金はその都度、使い果すありさま。
しかも、年金事務所の試算によると厚生年金の保険料は夫より量子さんの方が多いくらいで「年金分割」をすると量さんの年金を夫に持っていかれるという悲劇が起こります。
そのため、今回の場合は離婚にせよ死別にせよ、量子さんが一銭も受け取らずに追い出されることに変わりはなかったでしょう。
離婚より死別…「姻族関係終了届」の方が簡単なのは不幸中の幸いだったかもしれません。
介護を続けるか否かの選択は何を基準に判断すれば良いのか
妻が義両親の介護を続けるか否かの選択を迫られたとき、何を基準に判断すれば良いでしょうか?
5つのポイントを挙げてみましょう。
2. 義両親との仲はどうか。
3. 離婚検討中もしくは協議中かどうか。
4. 過去に「もし夫が亡くなったら、(義両親のことを含め)どのように暮らしていくか」を個別具体的に検討したことがあるかどうか。
5. 義両親を任せられる兄弟姉妹等が他にいるかどうか。
冒頭で述べた通り、「姻族関係終了届」の届出件数は10年前と比べ1.5倍も増えているのですが、「どうせ高齢化しているからでしょ!」と簡単に済ませるのは危険です。
なぜなら、姻族関係終了届の増加は「離婚件数の減少」と紐付いているからです。これはどういうことでしょうか?
世間の風潮では「離婚は増えている」と思われがちですが、実際のところ、10年前に比べ、年間の離婚件数は減っているのです。(2006年度は約25万件。2015年度は約22万件)
ところで夫と妻が離婚する場合、妻は「姻族関係終了届」を提出しなくても夫の両親と縁を切ることができるので、同届出件数には含まれていません。
問題は妻が夫と離婚せずに夫に先立たれた場合です
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高齢化しているのに離婚件数が増えていないのだから、熟年離婚が減っているだろうと推測できますが、だからといって50代以上の夫婦の多くが仲直りし、関係を修復し、離婚の危機を乗り越えたとも考えにくい。
現実的には離婚したくても離婚できない予備軍が増えていると考えるのが自然でしょう。
例えば、
体裁的な理由(親戚が反対している)
時間的な理由(老い先が短いから)
心理的な理由(離婚の話で揉めたくない)など
が考えられますが、これらの理由で離婚届を提出せず、戸籍上は「夫婦」だけれど、夫婦の間に信頼関係は存在せず、会話も成り立たず、喧嘩を繰り返し、すでに「夫婦」の形を成していないとしたら…
夫婦の仲が悪ければ悪いほど夫が先立ったときに妻がすべて(義両親を含め)を捨てて逃げていく(姻族関係終了届を提出する)確率は高まるでしょう。
つまり、「離婚予備軍の増加 = 姻族関係終了届の増加」だと言えるのです。(執筆者:露木 幸彦)