
お盆の帰省を機に、親の生命保険を確認する方もいるでしょう。亡くなった後に受け取る入院給付金は、契約上の受取人によって相続税の扱いが変わり、死亡保険金の非課税枠も使えません。受取人ごとの違いや相続放棄、医療費控除での注意点を解説します。
入院給付金と死亡保険金は、同じ保険でも課税が違う
入院期間が長かった方が亡くなると、医療保険から死亡保険金と入院給付金が同時に振り込まれることがあります。まとめて入ってくるため混同しやすいのですが、税金の扱いはこの2つでまったく別ものです。
死亡保険金は、被保険者が亡くなったときに、契約で決めた受取人に支払われるお金です。被相続人が保険料を負担していた死亡保険金は、受取人が相続人の場合、みなし相続財産となり、「500万円×法定相続人の数」までが非課税になります(国税庁タックスアンサーNo.4114)。
一方の入院給付金は、入院という身体の傷害に対して、その日数などに応じて支払われるお金です。ここで押さえておきたいのが、死亡保険金の「500万円×法定相続人の数」という非課税枠は、あくまで被相続人の死亡により取得する一定の死亡保険金に対する枠であって、入院給付金には適用されないという点です。同じ保険から出るお金でも、非課税の考え方がそもそも違うのです。
かかる税金は「誰が受取人か」で決まる
入院給付金は、死亡保険金と違って被保険者本人が受取人になれます。そのため、受取人が被相続人本人か、配偶者・直系血族・生計を一にするその他の親族かで税金のかかり方が分かれます。
受取人が被相続人本人の場合、そのお金は被相続人の財産として残るため、本来の相続財産として相続税の課税対象になります。死亡保険金のような非課税枠は使えないので、相続税申告が必要な場合には、相続財産に含めて申告する必要があります。
受取人が配偶者・直系血族・生計を一にするその他の親族の場合は、そのお金は受け取った人自身の財産となり、相続税の対象にはなりません。しかも入院給付金は身体の傷害に基因して支払われる給付金にあたるため、受け取った人に所得税も贈与税もかかりません(所得税法第9条・所得税法施行令第30条、国税庁タックスアンサーNo.4417)。整理すると次のとおりです。

相続が始まったあとに受け取るときの注意点
受取人が誰かは、支払明細書の表記ではなく保険証券に書かれた「保険契約上の受取人」で判断します。手続きをした人と契約上の受取人が違うこともあるため、迷ったら保険証券を確認するか、保険会社へ問い合わせて確かめておくと安心です。
気をつけたいのが、相続放棄との関係です。受取人が被相続人本人だった入院給付金を、被相続人が亡くなったあとに相続人が受け取り、使ってしまうと、「相続財産の一部を処分した」とみなされ、単純承認と扱われて相続放棄ができなくなる可能性があります。単純承認とは、プラスの財産もマイナスの借金もすべて引き継ぐことです。借金など負の遺産が残っていないかをよく確かめてから、受け取りの手続きを進めましょう。
振込先の口座にも注意が必要です。入院給付金の振込先や請求に必要な書類は、保険会社により運用が異なります。金融機関に口座名義人の死亡が伝わると、被相続人名義の口座は通常の入出金が制限され、相続手続きが必要になります。遺産分割前でも一定額の払戻し制度はありますが、通常のように自由に引き出せるわけではないので、保険会社への請求前に振込先と必要書類を確認しておきましょう。
亡くなったあとに受け取ったときに必要な申告
受取人が被相続人本人だった入院給付金は、被相続人の財産に含まれます。そのため相続税の対象となり、相続税申告が必要な場合には、亡くなった年分に応じた様式で、財産の種類に応じて第11表の付表などに記載して申告します。入院給付金のようなその他の財産は、通常「相続税がかかる財産の明細書(第11表の付表4)」に記載します。
もう一つ関わってくるのが準確定申告です。被相続人にその年の所得があり確定申告の義務がある場合には、相続人が代わりに準確定申告を行います。期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です(No.2022)。すべての人に必要なわけではなく、あくまで確定申告の義務がある場合の手続きです。
準確定申告などで医療費控除を受けるときは、入院給付金の扱いに注意します。被相続人の準確定申告で医療費控除の対象になるのは、死亡の日までに被相続人が支払った医療費です。医療費控除は、支払った医療費から、入院給付金など保険会社から補填された金額を差し引いて計算します(No.1120)。ただし、差し引くのはその給付の目的となった医療費の金額が限度で、引ききれない金額を他の医療費から差し引く必要はありません。差し引かずに計算すると控除額が過大になってしまいます。
ここで誤解しやすいのが、控除対象になる医療費の範囲です。医療費通知に書かれたものだけが対象だと思われがちですが、それは誤りです。医療費通知を添付すると医療費控除の明細書の記載を簡略化できる仕組みであって、対象を通知の記載分に限る決まりではありません。通知に載っていない医療費も、要件を満たすものは領収書などをもとに医療費控除の明細書へ記入すれば控除を受けられます。
受け取る前に、受取人が誰かを確かめておく
入院給付金にかかる税金は、非課税枠のあるなしではなく、誰が受取人かで決まります。被相続人本人が受取人なら相続財産として相続税の対象、配偶者・直系血族・生計を一にするその他の親族なら相続税の対象外で、所得税・贈与税も非課税、という区別がまず出発点です。相続放棄を考えている場合の受け取りや、口座凍結のタイミング、医療費控除での差し引きなど、順番を間違えると損につながる場面もあります。お盆に親の保険を見直すなら、まず保険証券で受取人を確かめておくと、いざというときに慌てずに済みます。


