
親と一緒に暮らし始めると、暮らしの形だけでなくお金の扱いも変わります。とくに動くのが所得税の扶養控除と、国民健康保険料(税)の請求先です。どちらも住民票の書き方ひとつで結果が変わると思われがちです。実際には何が見られているのかを確認します。
住民票を分けるかどうかで迷う50代の戸惑い
「同じ屋根の下で暮らすのに、住民票は分けたほうがいいと聞いたんです。」地方から親を呼び寄せて同居を始めた50代の会社員は、手続きの窓口でそう言われて迷ったといいます。分けたほうが得なのか、一緒にしたほうが得なのか、判断のよりどころが分かりません。
先に結論を分けておくと、税と保険料では見ているものが違います。扶養控除が見るのは生計が一つかどうかで、国民健康保険料(税)が見るのは世帯です。同じ書類の話に見えて、判断の軸が別々に置かれています。片方だけを見て住民票の形を決めると、もう片方で思っていた結果にならないことがあります。
扶養控除の額は、親の年齢と同居しているかで変わる
扶養控除を受けられるのは、納税者と生計を一にしていて、年間の合計所得金額が一定額以下の親族です。この所得の上限は令和7年度税制改正で48万円以下から58万円以下に引き上げられ、原則として令和7年12月1日に施行され、令和7年分以後の所得税に適用されています。

老人扶養親族は、その年の12月31日時点で70歳以上の控除対象扶養親族が対象です。同居老親等の判定では、病気の治療のため入院していて別居している場合は、その期間が1年以上といった長期にわたるときでも同居として扱って差し支えないとされています。一方、老人ホームなどへ入所している場合は、その老人ホームが居所となるため同居とはいえません。呼び寄せて一緒に暮らすのか、施設に入ってもらうのかで、同じ「面倒を見ている」でも扱いが分かれます。
国民健康保険料(税)は世帯ごとに世帯主へ請求される
保険料(税)のほうは世帯が単位です。国民健康保険法は、市町村は被保険者の属する世帯の世帯主から保険料を徴収しなければならないと定めています。ただし、自治体によっては国民健康保険税として課されます。同じ世帯にすれば親の分もまとめて世帯主に請求され、世帯を分ければそれぞれの世帯主に請求されます。
なお親が75歳になると、住所のある地域の後期高齢者医療広域連合が行う後期高齢者医療の被保険者になります。国民健康保険とは別の制度に移るため、同居していても保険料の建て付けはそこで切り替わります。同居を始める時点で親が70代前半なら、数年のうちにこの切り替わりが来ることも見込んでおきたいところです。
決め手になるのは書類の形ではなく、実際の暮らし方
扶養控除は住民票の世帯が同じかどうかではなく、生計を一にしているかで判断されます。世帯を分けても生計が一つなら控除は使えますし、逆に世帯を一緒にしただけでは要件を満たしません。保険料(税)のほうは世帯の切り方がそのまま請求先に響きます。どちらを重く見るかは家計の形で変わるので、迷ったら市区町村の窓口と税務署で別々に確かめるのが確実です。


