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「婿に入る」と「婿養子」は別もの。相続が変わる意外な違い

税金 相続・贈与
「婿に入る」と「婿養子」は別もの。相続が変わる意外な違い
「婿に入る」と「婿養子」は別もの。相続が変わる意外な違い

お盆に家族が集まると、実家や家業の承継、そして「婿養子」の話が出ることがあります。「名字が変わったから妻の親の相続人になる」と思っていませんか。実は、結婚して妻の姓になっても、それだけでは相続権は生まれません。相続人になるには養子縁組という別の手続きが必要です。「婿に入る」と「婿養子」の違いと、相続や税金への影響を整理します。

婿養子と婿入りの違い

婿養子とは、結婚相手である妻の父母の一方または双方と養子縁組をして、法律上の親子になることです。役所に養子縁組の届出をすることで、縁組の日から、実際に縁組をした養親との間で法的な親子として扱われます。

似た言葉に「婿入り」がありますが、意味はまったく異なります。婿入りは、婚姻時に妻の氏を選んでその氏を名乗ることで、妻の親から見れば娘の配偶者にすぎず、親子関係は生じません。一方の婿養子は、娘の配偶者であると同時に、縁組をした義父や義母にとって法律上の「息子」になります。

珍しい氏を残したい、家業を継いでほしいといった動機のほか、相続を見据えて検討するという考え方もあります。いずれにしても法律上の親子になる以上、その影響は相続や扶養など広い範囲に及びます。

婿養子が相続で得られる権利

養子縁組をすると、婿養子は相続の場面で実子と同じ立場になります。民法809条は「養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する」と定めており、縁組をした養親が亡くなったときは実子と同じ順位・同じ割合で法定相続人になります。義父母の一方だけと縁組した場合は、縁組をしていない他方の相続人にはなりません。

養子縁組には普通養子縁組と特別養子縁組の2種類がありますが、特別養子縁組は子どもの利益のため特に必要がある場合に家庭裁判所の審判で成立するもので、婿養子で使われるのは一般に普通養子縁組です。普通養子縁組は実親との親子関係を残したまま、養親との間に新たな親子関係をつくる仕組みなので、実親の相続でも法定相続人の立場を失いません。つまり、実親と養親の両方の財産を相続できることになります。

さらに、縁組をすると養親の血族との間にも血族と同じ親族関係が生じます(民法727条)。このため、縁組をした養親側の祖父母の相続が発生した時点で、その養親がすでに他界している場合には、婿養子にも代襲相続の権利が生じます。

相続税の面でも影響があります。基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」、保険料の全部または一部を被相続人が負担し、相続人が受け取る死亡保険金の非課税限度額は「500万円×法定相続人の数」で計算されるため(国税庁)、法定相続人が増えれば基礎控除額や非課税限度額が増えます。ただし、養子の数を法定相続人の数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合には、その養子の数を法定相続人の数に含めることはできません(国税庁)。

なお、相続税の申告と納税が必要な場合、その期限は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内です(国税庁)。婿養子を交えた相続は遺産分けの話し合いが長引きやすいだけに、この期限は早めに意識しておきましょう。

相続税の「養子は1人まで」の正しい意味

養子と相続税をめぐって誤解されやすいのが、人数制限の意味です。相続税の計算では「法定相続人の数」に含められる養子の数に上限があり、被相続人に実子がいる場合は1人までとされています(国税庁タックスアンサーNo.4170)。妻が被相続人の実子である場合、婿養子はこの上限の対象になります。なお、特別養子縁組による養子や、被相続人の配偶者の実の子で被相続人の養子となった人などは実子として取り扱われ、この人数制限の対象にはなりません(国税庁)。

ここで大切なのは、この制限があくまで相続税の計算上のルールだという点です。すでに婿養子が1人いる家庭で2人目の婿養子を迎えても、民法上は養子として法定相続人になり、相続する権利そのものを失うわけではありません。制限されるのは、基礎控除などを計算するときの人数への算入だけです。

「婿に入る」と「婿養子」は別もの。相続が変わる意外な違い

見落としやすいデメリット

相続面のメリットがある一方で、慎重に考えたいリスクもあります。

1つ目は、実子との相続トラブルです。婿養子が実子と同等の権利を持つため、妻以外に実子がいる場合は分け合う人数が増え、もともと相続できるはずだった財産が減る実子との間で争いに発展するおそれがあります。

2つ目は、扶養義務の広がりです。民法877条は「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定めており、養子縁組をすれば実親に加えて養親への扶養義務も生じます。両方の親を支える負担が重くなる可能性は、事前に考えておきたいところです。

3つ目は、マイナスの財産です。相続では預貯金や不動産だけでなく、借金や未払い金といった負債も引き継ぐ可能性があります。

4つ目は、縁組が自動では解消されないことです。妻と離婚や死別をしても養子縁組は続き、解消するには双方合意のうえで養子離縁届を出す必要があります。合意できない場合、裁判上の離縁は、縁組を継続し難い重大な事由があるときなどに限られ、手間と時間がかかります。

なお、婿養子であっても、特定の相続人に相続させない旨の遺言がある場合などには、遺産を受け取れないことがあります。この場合も実子と同様に遺留分侵害額請求は可能で、子である婿養子の遺留分の割合は原則として法定相続分の2分の1です。ただし、相続の開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと時効で消滅し、相続開始から10年を経過したときも同様です。

養子縁組の届出手続きと必要書類

養子縁組は、養親または養子の本籍地か、届出人の所在地の市区町村へ養子縁組届を出すことで成立します。届出用紙は自治体のWebサイトからダウンロードできる場合があり、届出自体に費用はかかりません。縁組は婚姻と前後しても、年数が経っていても、法律上の要件を満たし、双方の合意があれば可能です。ただし、配偶者のある人が縁組をするには、原則としてその配偶者の同意が必要です(民法796条)。

届出書には、当事者のほかに成年の証人2名の署名が必要です。あわせて窓口では、窓口に来た人の本人確認として、運転免許証やパスポートなどは1点、健康保険の資格確認書などは2点の提示で確認されます。本人確認ができなかった場合も届出は審査のうえ受理され、確認できなかった届出人には受理された旨が住所地へ郵送などで通知されます(法務省)。

戸籍謄本については、2024年3月1日施行の戸籍法改正により、本籍地以外の市区町村へ届け出る場合でも添付が原則不要になっています(法務省)。必要書類の細かな運用は自治体によって異なることもあるため、二度手間を避けたい場合は事前に届出先へ確認しておくと安心です。

婿養子は家族全員の納得が前提

婿養子は、相続の権利や税負担に直結する法律上の選択です。手続きは役所への届出で成立しますが、いったん縁組をすれば扶養義務や相続の枠組みが変わり、離婚しても自動では解消されません。実親や妻側の家族、ほかの実子の気持ちにも影響が及ぶため、メリットとデメリットを整理したうえで、家族でしっかり話し合うことが欠かせません。迷ったら、相続に詳しい司法書士や税理士など専門家への早めの相談を検討しましょう。

《編集部》
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執筆者: 編集部 編集部

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