みなさんの自治体の火葬料金はいくらでしょう。
多くの自治体では数千円から1万円。
中には無料というところもあるでしょう。
そんな中、東京にある35万円の火葬炉をご紹介します。
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この記事ではそんな破格の火葬炉から見える、葬儀の新たな潮流を追いかけてみようと思います。
目次
35万円という破格の火葬炉 四ツ木斎場の貴殯館
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四ツ木斎場は葛飾区にある火葬場です。
東京都23区内の6つの火葬場を手掛ける東京博善が経営しています。
火葬場と言えば、その多くが自治体などが運営する公営斎場です。
地域住民の税金が投入されているため費用はさほど高くなく、相場は1万円前後で、無料というところも珍しくはありません。
一方で、民間企業である東京博善グループの火葬料金は、「最上等」と呼ばれる一般的な火葬炉で5万9,000円と、すでに公営斎場との価格差が見られます。
さらに火葬空間が隔てられている「特別室」が10万7,500円、その上をいく「特別殯館」が17万7,000円。
そして、2016年にリニューアルオープンした四ツ木斎場には、新たに「貴殯館」が設けられたのですが、火葬料金はなんと35万円です。
群を抜く破格の料金設定ですが、これまでの火葬炉と一体何が違うのでしょうか。
高級感にあふれる火葬炉施設
四ツ木斎場の「貴殯館」は、これまでにないほどの高級感にあふれています。
その模様は四ツ木斎場の公式サイト内で動画で紹介されていますので、興味がある方はぜひともご覧ください。
床に敷き詰められた絨毯や、高い天井、壁面の大理石
調度品のひとつひとつが高級品だということだがすぐに分かります。
一般の火葬棟と隔てられているので、静寂が保たれ、火葬炉の中からは光の演出がなされ、厳かな雰囲気の中で故人を送り出せます。
火葬場と言えば、火葬という遺体の処理だけを行う施設というイメージがありましたが、「貴殯館」では、
という、参列者の思いに寄り添った空間演出がなされています。
これまでの火葬場のイメージを覆す、新たな火葬炉施設と言えるかもしれません。
混雑がやまない東京の火葬場 心を落ち着けて静かにお別れをしたい
東京は圧倒的に人口の多い場所です。
東京博善の火葬場では、特に11時から13時を中心に、多くの人で大変混み合います。
ほとんどの人は、「最上等」の火葬炉を選びますが、1つの空間に8つの火葬炉が横並びに設置されているため、複数の火葬が同時に行われることはしばしばです。
この場合、
最期のお別れをする団体
火葬を見届けて焼香する団体
火葬を終えて拾骨に臨む団体
拾骨を終えて火葬場をあとにする団体など
全く別の行動を取る団体が1つの空間の中で交錯し、とても落ち着いた雰囲気の中でお別れができるとは言えません。
可能であれば、誰しも心を落ち着けて静かにお別れをしたいものです。
混雑を避けるために、「最上等」よりもさらに高額な「特別室」や「特別殯館」が設けられていますが、それよりもさらに上を行く「貴殯館」には、合理的な意図を超える何かがあるように思えます。
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火葬の場からお別れの場へ 貴殯館という高級志向の先にあるもの
「貴殯館」の「殯」は、もがりと読み、古代の日本人の死者供養の方法で、長い時間をかけて遺体に寄り添うことです。
高級志向の先にあるものは、祭壇や棺といった目に見えるモノではなく、お別れといった目に見えないコトに重きを置いた葬儀への期待の高まりではないでしょうか。
1組が利用できる時間は2時間半。
通常の火葬場で過ごす時間が1時間前後で済んでしまうことを思えば、「貴殯館」でのお別れは、より上質な空間とゆったりとした時間が保障されています。
館内には50名程度まで椅子が用意できるため、いま流行の「ワンデイ葬儀」の実施も可能でしょう。
火葬料金が35万円と聞くとたしかに高額かもしれません。
しかし、それに見合うだけの付加価値を考えると、決して高いとは言い切れないのではないでしょうか。
四ツ木斎場の「貴殯館」は、平成の次に来る新たな時代の葬儀の可能性を秘めているように思えます。(執筆者:五十嵐 信博)