私は夫婦とも両親が近くに住んでいるので日常的に顔を合わせているのですが、ママ友のなかには田舎が遠方にある人もいます。
そんな友が時々言う、
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最近では「老老介護」や「ダブルケア」なんて言葉もよく耳にするようになってきていますから、そういうのが他人ごとではないと心しておかねばなりません。
何にしても先立つものはお金。
衰えた老親のお世話だって、お金が選択肢を広げてくれますから。
政府にしても、そういう私たちに少しでも多めにお金を残そうと税制を整えてくれています。
しかし、その制度がイマイチ知られていなくて恩恵を受けられるのに受けていない人が多いという、事実も多いのです。
ということで今日は障害者控除、中でも障害者控除対象者認定書について解説します。
ぜひこの年末年始の帰省のおり、ご両親に不安な様子が見られたなら、ぜひ利用できるかどうか点検してください。(本記事では国税庁に倣い、「障がい者」などの表記を「障害者」に統一しています。)
目次
障害者手帳がなくても障害者控除が受けられる
今回私が指摘したいのは、「障害者控除」です。
両親は障害者じゃないだって? まぁ急がないでください。
「障害者」というと、公共の交通機関や施設が無料になったり半額になったりする障害者手帳を持っている人というイメージが強いですよね。
しかし税制上の「障害者」は、それだけではないのです。
国税庁HPによると、
「(5) 精神又は身体に障害のある年齢が満65歳以上の人で、その障害の程度が(1)、(2)又は(4)に掲げる人に準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人」も障害者とすることができ、「このうち特別障害者に準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人は特別障害者になります」≪引用元:国税庁≫
とあります。
満65歳以上、つまり高齢者になってからは現役時代には健常者だった人でも税制上は障害者になる可能性があるということなのですね。
それでは、どのような状態から障害者と認められるのでしょうか。
障害者控除対象者認定は市町村で
ややこしいのは、この認定が市町村長の権限だということなのです。
このためどうやら、市町村によって基準に多少の差があるようなのですね。
市町村のHPで「障害者控除対象者認定書」と検索すれば出てくるのですが、今回は一例として大阪市の場合を見てみましょう。
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障害者控除対象
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介護保険の認定調査を受けた65歳以上の方で、認定調査票の「認知症高齢者の日常生活自立度」がⅡaまたはⅡbの方。
ただし、「認知症高齢者の日常生活自立度」がⅠでも精神保健指定医師が発行する診断書の提出でも条件を満たす可能性があります。
特別障害者控除対象
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「認知症高齢者の日常生活自立度」がⅢa以上または「障害高齢者の日常生活自立度」がB1以上の状態が引き続き6か月以上にわたる方。
ただしA2までの方でも、主治医の発行した診断書次第では「ねたきり高齢者」として認定される可能性があります。
細かいことはこの後つづいてチェックするとして、介護保険の制度を流用して基準としているわけですね。
つまり介護状態になるにつれて、税制上の障害者と認定されるようになるということです。
高齢者が「障害者」と認定されるハードルは決して高くない!
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それでは、大阪市長が障害者控除対象だと認めてくれる、「認知症高齢者の日常生活自立度」がⅡaまたはⅡbとはいったいどのような状態を表すのでしょうか。
この自立度には「自立・Ⅰ・Ⅱa・Ⅱb・Ⅲa・Ⅲb・Ⅳ・M」の8段階があるので、ⅡaとⅡbは自立度が高いほうから3番目と4番目にあたります。
【Ⅱb】日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが家庭内で見られるようになるが、誰かが注意していれば自立できる状態
うん。どちらも「誰かが注意していれば自立できる状態」です。
このハードル、決して高くないのではないでしょうか。なお障害の程度がより重い特別障害者と大阪市長が認めるⅢaは次の通り。
あくまでもこれは大阪市の場合です。
ハードルの高さを点検したかったので例としてお示ししました。
市町村によって、もしかしたら窓口レベルでも多少の差がある可能性があるので、細かいところまでHPをチェックしたいところです。
障害者控除で1人あたり27万円または40万円の所得控除が受けられる
手続きは必要だけど、どうやらハードルが高くなさそうな高齢者の障害者控除。
それではどのくらいの控除を受けることができ、どのくらい節税できるのでしょうか。表にしました。

所得税で27万円、住民税で26万円とあるこの表は、あくまでも控除額を表しています。
実際の節税額は、これに税率をかけなければなりません。
住民税は一律10%ですが、所得税は累進課税で5~45%です。
ここでは所得税も10%として計算しましょう。(復興特別所得税は計算の簡略化のため無視します。)
・ 特別障害者控除を受けた場合 : 40万円 × 10% + 30万円 × 10% = 7万円
・ 同居者が特別障害者控除を受けた場合 :75万円 × 10% + 53万円 × 10% = 12万8,000円
最も少ないパターンでも、年間5万円以上も税額が減るわけです。これ無視できない金額ですよね。
障害者控除は本人でなくても受けられる
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ただ、高齢者の中にはそもそも所得税や住民税を払っていなかったり、払っていても少額だったりする人が多いですよね。
そうなると、障害者控除のインパクトも少なくなります。
ですが、この障害者控除は障害者認定された本人でなくても受けられます。
その方法は、その障害者認定された人を扶養親族にすること。
主に以下の条件を満たせば、扶養親族にできます。
・ 納税者と生計を一にしていること。
・ 扶養される親族の年間所得金額が38万円以下であること。
仮に両親ともが障害者認定を受けて扶養親族になったなら、その納税者はダブルで障害者控除を受けられる、ということですね。
もちろんその分生計を担う責任は重くなりますが、そもそもその責任を負っているのでしたら、利用しない手はない制度です。
障害者控除対象者認定は5年間さかのぼることが可能
ところでこの障害者控除対象者認定、5年前までさかのぼって申請できます。
そのうえで確定申告も5年前までの分をやり直せば、ここまで説明してきた分の税還付を一気に受けられてしいます。
5年間となれば、特別障害者に認定される両親と同居している人なら、その還付額は100万円を超えます。
要介護認定を受けていたなどの場合には、過去にさかのぼって障害者控除対象であったことを証明できます。
ぜひ一度、ご両親に確認してみてください。(執筆者:徳田 仁美)