表が出たらあなたは1万円失います。
裏が出たら1万500円もらえます。
何回でもチャレンジできます。」
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あなたはチャレンジしますか?
目次
大数の法則
コイントスゲームのような法則を「大数の法則」といいます。
サイコロも、投げる回数を多くすれば、自然と各目の出る確率は六面体のサイコロなら6分の1ずつに限りなく近づいていきます。
コイントスゲームで表と裏が出る確率は、五分五分です。
短期間だけで見ると、表が連続で出てお金をたくさん失うこともあるでしょう。
しかし、このゲームは、「何回でもチャレンジできる」という条件です。
コインの表と裏が出る確率は、繰り返せば繰り返すほど五分五分になっていきます。

保険料などの算出にも使われる
交通事故やガンなどの各種保険はこの大数の法則を利用し、「統計上は自社が損をしない保険料を算出」しています。
そうしないと保険会社が赤字になってしまいます。
期待よりも恐怖の方が大きい
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確率は五分五分ですから、1万500円-1万円=500円になります。
得がプラスの500円に傾いています。
後は「やればやるほど儲かるゲーム」になります。
しかし、多くの場合、人はこの儲かるゲームに参加しません。
なぜでしょうか。
「損失回避性」
大変乱暴に言いますと
という性質があります。
先ほどのコインゲームだと、次のような設定だと多くの人が参加すると考えられます。
表が出たらあなたは1万円失います。
裏が出たら2万5,000円もらえます。
何回でもチャレンジできます。」
この場合、直感的にも「これならお得そうだ!」と感じます。
ただ、本当は最初の条件でも「これなら絶対にお得!」と感じて良いのです。
しかし、多くの人は直感的に損失が嫌いなので、過度に拒否反応を示し、正しい答えを見出せなくなってしまいます。
損失回避性:1979年 ダニエル・カーネマン&エイモス・トベルスキー(ダニエル・カーネマンは2002年ノーベル経済学賞受賞)
動物的には「損が嫌い」は正解
もっとも、原始的な生活ではこの「損失が過度に嫌い」という人の本能的な性質は重要だったと考えられます。
例えば、サバンナで果実を取ろうと茂みにむやみに入ると、肉食獣に襲われるかもしれません。
そのような世界では損失回避的であることが結果として、長生きをし易くなり、全体としての収益が上がりやすいかもしれません。
資産形成では不正解もある
現代の資産形成においては、損失を過度に怖がるのは不正解になり勝ちかもしれません。
例えば、株式クラスの市場平均に長期分散投資をした場合は、過去20年などの平均リターンは計測する期間によって異なりますが、3~6%程度でした。
長期的に見た場合は、リスク資産に個人型確定拠出年金などで投資をした場合、プラスになったのですが、多くの人は過度に損失を嫌うので、自らそのチャンスを逃してしまうので投資をしません。
最初の問題は、長期投資の平均リターン(5%)に近いものです。
損失回避的な方に傾き過ぎていませんか?
一例ですが、景気の悪い年にはあなたは50%損をするとします。
景気が良い年には55%上がるとします。
おまけに各種の税金がお得になる特典も付いてきます。」

iDeCo(イデコ)で資産形成をしますか?
もちろん、上記の数字は未来のことなので「あてになりません」し、未来を保証するものでもありません。
ただ、合理的な資産形成においては、個人の決定が本能的に「損失回避的な方に傾き過ぎていないか?」をじっくりと考えてみるべきではないでしょうか。(執筆者:佐々木 裕平)