目次
持ち株とマーケット指数の関係性をよりクリアに理解しよう

株式投資をしている読者の中には、株価が気になって毎日・毎時間のようにケータイで株価をチェックしてしまう人も少なくないのではないか。
しかし、各銘柄の株価を頻繁に確認するのは手間もかかるし、疲れるものである。
分散投資ということで多くの株式を持っている場合はなおさらだろう。
そうした中、自分の持ち株の値動きをその時のマーケット指数(日経平均株価やTOPIX)の変動からアバウトで想像する習慣を持つ投資家もいると思われる。
TOPIXが上がっていれば、自分の持ち株も上昇しているだろうといったようにだ。
しかし、マーケット指数が上昇していたとしても銘柄によっては株価が下落しているケースがある。
今回は、より正確に持ち株とマーケット指数の関係性を把握するのに役立つ「ベータ」について解説しよう。
ベータとは何か?
ベータとは、マーケット指数に対する各銘柄の株価の「感応度」である。
1を基準として、1よりも高くなればなるほどマーケット指数が上昇/低下した時の上げ幅/下げ幅がマーケット指数よりも大きくなり、逆に1よりも低くなればなるほど上げ幅/下げ幅が小さくなる。
株価の「ボラティリティー」だったり、株価ベースの「景気循環性」と捉えることもできる。
これを投資に生かすには、まずは各銘柄のベンチマーク(比較対象)となるマーケット指数を定めることから始まる。
選択肢としては日経平均株価やTOPIXが挙げられるが、TOPIXを運用のベンチマークとする機関投資家が多いことから基本的にはTOPIXを用いる。
試しに日本電産のベータを見てみる

2018年2月下旬時点の90日ベースのベータは1.38、180日ベースのベータは1.33となっている。
90日や180日という設定は直近でどの程度の期間のデータをベースに計算するかという点に関するもので、適切な期間は銘柄によって異なる。
というのも、ある時点からその会社の収益構造が大きく変わった場合、それを境に株価の動き方が大きく変わることがあるからだ。
マザーズ市場に上場するミクシィの場合、SNS運営が主力事業だった期間とゲーム事業が主力の期間では収益構造がまるで異なり、結果として株価の値動きの特徴も大きく変わっている。
そのほか、M&Aなどにより事業の構成が大きく変わった企業などにも同様に注意する必要がある。
話を日本電産に戻そう。
2018年2月下旬時点での日本電産のベータは対TOPIXの180日ベースで1.33である。
これは、TOPIXが10%上がると日本電産は統計的に13.3%上昇することを意味する。
相場の上昇局面ではこうした銘柄の保有ウエートを広げる機関投資家も多い。
ちなみにベータが負の値となる銘柄もある。この場合、株価はTOPIXとプラス・マイナス逆方向に動く傾向がある。
割合としては極めて少ないが、景気が悪化する局面で業績を伸ばしやすい企業(事業再生コンサルティング会社など)に稀に見られる。
このように持ち株の各ベータを把握しておくと、TOPIXなどマーケット指数が動いた時の自分のポートフォリオの動き方をより鮮明にイメージでき、管理・調整もしやすくなる。
ベータを生かす時の注意点

前述したようにベータを生かすことで、マーケット指数の動きを見ながら自分の持ち株を管理・調整することが可能となる。
しかし、ベータを使う上で「決定係数」には注意を払いたい。
決定係数とは統計学の専門用語であり、変数Xが変数Yの動きをどの程度決めるのかを測る係数である。
株価とベータの場合、個別株価の値動きがどの程度マーケット指数の値動きで決まるのかという見方になる。
決定係数は0~1のレンジをとり、1に近いほどマーケット指数との連動性(感応度とは別)が高くなる。
わかりやすい例
仮に株式Aのベータの決定係数が1(最高値)だった場合、その株価の上昇/下落はベンチマークであるマーケット指数の上昇/下落で100%決まる。
ということになる。
しかし、実際は産業やビジネスモデル、各企業のステージなど個別要因があるので、株価に対するベータの決定係数が1になることはない。
「マーケット指数よりも値動きの少ない株を持ちたい」と考えてベータが1を下回る銘柄を買ったとしても、その決定係数が0.1などと低水準だった場合、マーケット指数対比で低リスクの銘柄を保有できている可能性は非常に低い。
この場合、その銘柄への投資を管理・調整するうえで、マーケット指数の値動きと比較する意味はなくなってしまう。
このご時世、今やネットで各銘柄のベータを簡単に見ることができる。
しかし、そのベータの「決定係数」を確認できないことには、ベータを生かした投資はできない。
持ち株の値動きの推定や、派生してポートフォリオ・マネジメントでも生かし甲斐のあるベータだが、注意点も踏まえた上で活用していきたい。(執筆者:高橋 清志)