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確定申告期間が終了しても、還付申告は5年間可能とは言われています。
株式の配当・譲渡所得(源泉徴収有特定口座)とふるさと納税を組み合わせた申告も、還付申告となるケースが多いです。
ただこの申告は住民税の控除拡大を目的としている場合があるので、申告時期に気をつける必要があります。
なお平成31年4月以後に確定申告書を提出する場合は、源泉徴収票・上場株式配当の支払通知書・特定口座年間取引報告書などの添付が不要になります(国税庁からの案内)。
目次
株の申告でふるさと納税の控除額拡大
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ふるさと納税の上限として、住民税所得割額の2割制限があるという話は有名です。
厳密には通常の寄附金控除に対し、ふるさと納税特有の控除として上乗せされる「特例分」の上限が、住民税所得割額(調整控除後・その他の税額控除前)の2割です。
上場株式の配当(特定配当等)からは源泉所得税15.315%・住民税(配当割)5%が、源泉徴収有特定口座の株式等譲渡所得(特定株式等譲渡所得金額)からは源泉所得税15.315%・住民税(株式等譲渡所得割)5%が差し引かれます。
これらの特定配当等・特定株式等譲渡所得金額は、確定申告もしくは住民税申告の対象とすることで、住民税「所得割」の算定対象となります(税率は配当を総合課税で申告した場合は10%・その他は5%のまま)。
そのうえで二重に課税されないよう、徴収された「配当割」「株式等譲渡所得割」は「所得割」から控除されます。
申告すれば「所得割」が増えるため、ふるさと納税による特例分控除を増やすことも可能です。
一方申告対象としない場合は、「配当割」「株式等譲渡所得割」は特例分控除の対象にもなりません。
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申告しないと「配当割」「株式等譲渡所得割」は特例分で考慮されない(特定口座年間取引報告書より)
事例で考える
・年収500万円(給与所得346万円・社会保険料控除63万円、年末調整済)
・特定株式等譲渡所得金額:200万円(源泉所得税30万6,300円・住民税10万円)
・ふるさと納税の年額:7万円
※所得税の速算表上の税率(限界税率)は10%(復興税込みで10.21%)とする
特定配当等・特定株式等譲渡所得を申告しない場合の特例控除ですが、まず上限判定で使われる住民税所得割が(346万円 ― 社会保険料控除63万円―基礎控除33万円)×10% ― 5万円×5%=24万7,500円です。
住民税の基礎控除は所得税より5万円低い33万円で、その代わり差額5万円の5%(調整控除)が住民税額より軽減されます。
この2割は4万9,500円であり、6.8万円×(1 ― 住民税率10% ― 所得税限界税率10.21%)=5万4,258円を下回るため、4万9,500円が特例控除です。
特定配当等・特定株式等譲渡所得を申告した場合の特例控除ですが、まず住民税所得割額が24万7,500円+10万円=34万7,500円に変わり、その2割は6万9,500円のため、特例控除は5万4,258円です。
住民税の納税通知書送達後に株の申告を行った場合
特定配当等・特定株式等譲渡所得+ふるさと納税の確定申告は、多くの場合還付申告になるので申告期間を意識しなくても良いのですが、住民税の納税通知書送達日後に行う場合には注意が必要です。
住民税の納税通知書送達日は、給与から住民税が徴収されるサラリーマンの場合、自治体にもよりますが5月中旬が多いです。
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ふるさと納税控除拡大枠が失われる
住民税の納税通知書送達日後に特定配当等・特定株式等譲渡所得の確定申告・住民税申告を行っても、「所得割」算定の対象とはなりません(申告しなかったものとして扱われる)。
このため、ふるさと納税による特例分控除を増やすことに寄与しなくなる点に注意してください。
2019年においては、令和元年に入ってからでも10連休明け直後ぐらいなら間に合いそうですが、なるべく平成が終わる前に行っておいたほうがいいです。
ただし国民健康保険など自治体の公的保険に加入している場合は、申告により保険料の上昇につながる点、また特定配当等を総合課税で申告した場合は、児童手当など所得制限付き給付金で不利になる点には注意してください。
ふるさと納税自体は納税通知書送達後の申告も可能
納税通知書送達日の前後で扱いが変わってくるのは、あくまでも特定配当等・特定株式等譲渡所得金額の話です。
ふるさと納税の確定還付申告を納税通知書送達日後に行ったとしても、住民税からの控除(基本分・特例分とも)は受けられます。(執筆者:AFP、2級FP技能士 石谷 彰彦)
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