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NHKのインターネット同時配信へGOサイン
2019年5月29日、NHKテレビ放送のインターネット常時同時配信を認めることを盛り込んだ改正放送法が国会で可決・成立しました。
つまり、パソコンやスマホでNHKの番組をリアルタイムで視聴することが可能になったのです。

なお、ネット配信サービスを開始する時期は本年度中という計画です。
現段階では、ネット配信のNHK番組を視聴する受信料の義務化は行わない予定だそうです。
NHKとしては常時同時配信を放送の補完と位置づけているため、受信契約世帯には追加の負担なくネット配信を利用できる考えのようです。
つまり、
という原則のもと、ネット配信を視聴できる機器が追加されても料金の追加はないらしいのです。
お金がかからないのなら、NHKの番組を見ることができるツールが増えるにこしたことはありません。
出先でニュースを見たいと思ったとき、スマホでネットニュースを見るよりも家で見慣れて信頼感のあるNHKニュースを見ることができたらとても便利です。
また、子育て世代にとってはEテレの番組が育児には欠かせません。
いつもなら家で子ども向け番組を視聴する時間に外出せざるを得ないとき、スマホでも見ることができたらどんなに助かるだろうと思います。
受信契約者とそうでない人との差別化が行われる可能性は大きい
実はわたしは3~4年前のNHKネットクラブ向けのインターネット配信モニターに応募して、数日間スマホで視聴体験をしたことがあります。
ワンセグでは受信が弱くて見られないことも多いので、ネットでNHKの番組を見られるのはとても便利でした。
ただし、ネット配信の利用を希望する人は最初に登録をしてその情報をもとに受信契約がないユーザーには放送の上にメッセージを重ねることを検討しているともいわれます。
番組にメッセージがかぶせられたらまともに見られません。
やはり、受信契約者とそうでない人との差別化が行われる可能性が大きいようです。
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ワンセグ裁判の判決はネット配信には影響しない
2018年6月に東京高裁は「自宅にテレビがなく、ワンセグ機能付き携帯電話だけを持っている場合でも受信契約が必要」と判決をだしました。
今年3月に最高裁が原告側の上告を退けたことから、「ワンセグは受信契約が必要」という判決が確定しています。
放送法第64条第1項には、「テレビジョン放送を受信できるテレビジョン受信機を設置した者は(~中略~)契約を締結しなければならない。」と定められています。
ワンセグ裁判の争点は、ワンセグだけしか見られないのに受信契約が必要なのかということだけではなく、ワンセグの「所持」が、放送法が定める放送受信設備の「設置」に当たるかという、いわば言葉の表現をどう解釈するかというところでした。
そのため、受信設備の所持は設置に該当すると判断された以上、ワンセグは地上デジタル放送の一つであるため当然受信契約が必要という理論です。
しかしながら、インターネット配信は「放送」ではありません。
あくまで動画の配信を視聴することであり、放送を受信しているわけではありません。
そのため、ネット配信に料金を課すという発表がない限り、テレビ(ワンセグ)がなければ受信契約が必要になるという心配はありません。
契約者にはメリット、ではテレビがない世帯にはメリットか?
現時点で、ネット配信に対する受信料についての言及がないことから、NHKのネット配信がスタートしても受信料の負担が増えることなく視聴環境が広がったということになります。
NHKの発表によると、2018年度末の受信料の推計世帯支払率は全国で81.2%と、2017年度末の79.4%から1.8ポイント向上しました。
このように、ほとんどの世帯が受信契約をしていることから、追加料金なしでネットでも番組が見られるようになるなんて、NHK受信契約者には喜ばしいニュースです。
受信契約をしていない世帯にとってはどうなのでしょう?
考えがあって不正に受信料を払わない方をのぞき、ネットで事足りるとしてテレビを本当に持たない世帯も一定数はいるはずです。
とくに、若い人の単身世帯などはテレビはないけどスマホはある、ということがままあります。
テレビを持たずに受信料を節約していたそんな世帯にとっては、せっかくスマホやパソコンでNHKの番組が見られるようになったのに、やはり受信契約をしないと(メッセージが重なるなど)完全な状態では見ることができないというのは少し酷な気がします。
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ネット配信によって今後受信料がどう変わるのか注目
現時点ではネット配信が認められたと決まったばかりで、その受信料がどうなるかは決まっていません。
ネット契約に特化した新たな受信料を新設する可能性も一部では報じられています。
そもそも日本は公共放送であるNHKのインターネットによるサービス展開については遅れていました。
テレビ離れが進むなか、多様な伝送路で公共的な価値をめざすと計画していたNHKにとって、ネット同時配信は悲願でもありました。
ドイツでは、放送受信機の有無に関わらず、全世帯から放送負担金を徴収する制度が開始されました。
スイス、スウェーデン等でも全世帯から徴収する制度に移行するとともに、フランスでドイツ方式の導入を示唆する動きもあります。
このように、NHKネット配信は有料にはしないけど、公共性がある番組を多様な方法で全国あまねく届けるので受信料は全世帯必要です、となる可能性もゼロとは思えません。
受信料を払わないためにテレビを持たない、というささやかな節約も、世界的な受信料制度の動きやネット配信開始によって無意味なものになるのかもしれません。(執筆者:野原 あき)