
転職や退職で会社を離れると、雇用保険の受給資格があれば、基本手当を受けながら次の仕事を探すことがあります。ただ、早く就職先が決まると、失業手当を満額もらえず損をした気分になるかもしれません。そんなときに知っておきたいのが、早めの就職を後押しする再就職手当です。もらえる条件や金額の決まり方、2025年の改正で変わった点まで整理します。
再就職手当とはどんな給付か
会社を辞めてハローワークで手続きをすると、雇用保険の基本手当、いわゆる失業手当を受け取れます。この基本手当を受け取る資格がある方が、早めに次の安定した職業へ就いたときに支給されるのが再就職手当です。早期の就職を促す「就職促進給付」のひとつに位置づけられています。
基本手当は就職の前日までしか受け取れないしくみです。そのため早く働き始めると、本来もらえたはずの基本手当を満額では受け取れません。それでも安心して早めに動けるよう、残っていた基本手当の一部をまとめて支給するのが再就職手当の役割です。就職が早いほど受け取れる額が大きくなるように設計されています。
給付率と支給額の決まり方
再就職手当の額は、就職した時点で基本手当があとどれだけ残っていたかで決まります。この残り日数を「支給残日数」と呼び、もともとの所定給付日数に対する割合に応じて給付率が変わります。

※給付率はハローワークの公表内容。基本手当日額には上限があり、毎年8月1日に見直されます。
支給額は「基本手当日額 × 支給残日数 × 給付率」で計算します。たとえば所定給付日数が90日の方なら、60日以上を残して就職すれば3分の2以上にあたり70%、30日以上を残していれば3分の1以上にあたり60%が目安です。就職が早いほど残っている日数が多く、給付率も高くなるため、受け取れる額は大きくなります。なお、基本手当日額には上限が設けられており、計算に使える額はその範囲内になります。
受給に必要な主な条件
再就職手当は、早く就職した方なら誰でももらえるわけではありません。次の条件をすべて満たしていることが必要です。順に確認しておきましょう。
まず、受給資格が決まった日から7日間の待期が終わったあとに就職していることです。この7日間のうちに実際に就職したり、事業を始めたりした場合は対象になりません。あわせて、就職日の前日時点で支給残日数が所定給付日数の3分の1以上残っていることも要件です。
就職先にも条件があります。離職前の事業主や、資本・人事・取引などで密接な関係にある事業主に再び雇われた場合は対象外です。加えて、受給資格決定(求職申し込み)前から、すでに採用が内定していた事業主への就職も除かれます。1年を超えて勤務することが確実で、原則として再就職先で雇用保険の被保険者になることも求められます。
過去の受給歴も見られます。再就職の日より前の3年以内に、再就職手当または常用就職支度手当を受け取っていないことが条件です。一度受け取ると、その後しばらくは同じ手当を重ねて受け取れないしくみになっています。
給付制限があるときに気をつけたいこと
正当な理由のない自己都合で退職した場合は、基本手当がすぐには支給されない「給付制限」の期間が設けられます。この点は2025年4月1日から見直され、正当な理由のない自己都合退職の給付制限は、それまでの2か月から原則1か月へ短縮されました。ただし、5年間で3回以上の自己都合離職の場合は3か月です。倒産や解雇など会社都合での離職には、もともと給付制限はありません。
再就職手当では、この給付制限の有無によって就職の経路にも条件がつきます。給付制限がある方は、求職の申し込みをしてから待期の満了後1か月の間に、ハローワークまたは許可・届け出のある職業紹介事業者の紹介で就職したことが要件です。一方、給付制限がない方は、待期の7日間が終わっていれば、知人の紹介や求人広告への応募など、就職の経路は問われません。正当な理由のない自己都合で辞める予定の方は、就職のタイミングと経路で扱いが変わる点を押さえておくと安心です。
申請の流れと、非正規・起業のケース
就職先が決まったら、支給申請書に必要事項を記入してハローワークへ提出します。申請は、就職した日の翌日から1か月以内です。申請後はハローワークで審査が行われるため、支給までには一定程度の時間がかかります。
期限を過ぎても、申請期限とは別に時効の期間内である就職日の翌日から2年を経過する日までであれば、申請できる場合があります。ただし通常より支給が遅れることがあるため、早めの手続きが基本です。窓口へ出向くのが難しいときは郵送でも提出できますが、行き違いを避けるため簡易書留を使うとよいでしょう。
雇用形態はパートやアルバイト、派遣であっても、1年を超える雇用が見込まれ、週20時間以上勤務して雇用保険の被保険者になるなどの条件を満たせば対象になります。会社勤めではなく開業して事業を始める場合も、受給資格があり、待期満了後1か月の期間が経過してから事業を始めるなど一定の条件を満たせば受け取れることがあります。判断に迷う個別のケースは、あらかじめハローワークに相談しておくと確実です。
なお、再就職手当を受け取った方が、その再就職先で6か月以上働き、6か月間の賃金が離職前より低かった場合には、「就業促進定着手当」を追加で受け取れることがあります。
損をしないために、早めにハローワークへ
早く就職すると失業手当を満額もらえず損に見えますが、再就職手当を使えば残りの一部をまとめて受け取れ、収入が途切れる不安やブランクを抑えられます。一方で、給付制限の短縮や、以前あった「就業手当」の廃止など、制度は改正で少しずつ変わっています。条件や金額の判断で迷ったら、住まいを管轄するハローワークに早めに相談してみてください。自分の受給資格や残り日数に合わせて、確実な手続きを進められます。


