2026年6月、宇宙ビジネスの分野で有名なスペースXがNASDAQ市場へ上場を果たし、世界中の市場が沸き立ちました。歴史的なIPO(新規公開株)のニュースに触れ、株式の購入を検討した人もいるのではないでしょうか。
今後は米国で人工知能(AI)開発のアンソロピックやオープンAIの上場も予想され、IPOは引き続き高い関心を集めることが想定されます。
しかし、華々しいスポットライトが当たる舞台の裏側には、学術的なデータが示す厳しい現実が隠されています。今回はIPO銘柄の上場後のパフォーマンスを、歴史的なデータをもとに紐解いていきます。
【先行研究から見るIPO銘柄の長期パフォーマンス傾向】
個別株への投資に興味がある方、あるいは既に投資している方にとって、「上場したばかりの期待の新興企業株を買うべきか」という問いは、非常に興味深いテーマかもしれません。
実際、国内外の市場を問わず、IPO銘柄は上場直後にIPOポップ(ご祝儀相場)と呼ばれる大幅な上昇を見せる傾向があります。そのため、IPO銘柄を買っておけば、大きな利益が得られるのではと期待が高まるのもうなずけます。
しかし、学術的な先行研究や長期の統計データを見てみると、意外な現実が見えてきます。
1975年から2021年において、米国でIPOした9,000社程度を対象とした先行研究によると、「新規上場後から5年間のリターンは、半数程度の銘柄が公募価格を下回る」という厳しい結果を示しています。

※Jay R. Ritter「Initial Public Offerings: Updated Long-run Statistics」(2026年4月7日時点)。本コラムでは同論文のうち、1975年から2021年の間に米国で実施された9,195件の事業会社(Operating company)の新規株式上場(IPO)データを対象とした分析を紹介。リターンは、上場前の公募価格(発行価格)を購入価格として、原則5年間保有し続けたと仮定して算出。検証の詳細は論文をご確認ください。
【 日米どちらの市場でも見られる共通の傾向】
上記のような傾向は、米国市場特有のものではありません。日本の株式市場においても、上場後に株価のパフォーマンスが悪化する傾向は確認できます。
もちろん、IPO銘柄の中から将来の有望株を見極め、上場直後に投資して大成功を収めるという可能性は否定できません。しかし、それはあくまで全体的なパフォーマンスの中に含まれる一握りの成功例で、事前に正確に予測することは、プロの投資家であっても困難だと考えられます。
なお、Jay R. Ritter教授のデータによると、株式市場全体の景気の影響を差し引いたり、似たような特徴を持つ他の企業と比べたりしても、新規上場した会社の株を長期で持ち続けた場合の利益は、市場全体の平均を下回ったという分析結果が出ています。
【 IPO銘柄への投資とコア・サテライト戦略】
スペースXのように社会を変革する可能性を秘めた宇宙ビジネス企業、今後上場が予想される最先端のAI関連企業は、今後の社会構造を変革する可能性を秘めています。
そんな企業のIPOに夢や期待を抱くのは自然なことで、個別株として銘柄を保有することも、投資の醍醐味や楽しみの一つといえます。
しかし、長期的なパフォーマンスの統計データを踏まえると、特定のIPO銘柄に資産の大半を集中投資することは、資産形成においてより慎重な判断が求められるアプローチだと認識しておく必要があります。重要なのは、長期の資産運用において、リスクを抑えた守りの投資とリターンを追う攻めの投資を分けて考えることです。
そこで参考になるのが、長期間の資産運用において広く推奨されている「コア・サテライト戦略」という考え方です。「コア・サテライト戦略」とは、運用する資産をコアとサテライトに分けて、守りと攻めのバランスの良い資産運用を行うという考え方です。

コアは「長期・積立・分散」のように、リスクを抑えた資産運用です。そして、それを取り囲むのがサテライトで、個別株やテーマ投信など、比較的リスクの高い資産運用になります。

このように、土台をコアとして構築できれば、サテライト部分で期待したリターンが得られなかった場合でも、資産全体への影響を抑え、安定性を保ちやすくなります。
歴史的な大型IPOが注目を集める今だからこそ、長期的なリスクを客観的なデータから冷静に見極めることが、大切な資産を守る第一歩となります。
学術的な研究が示すIPO株式投資の特徴を振り返ることが、将来に向けた資産形成について考える機会になれば幸いです。
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