
海が好きだった人の骨は海にまいてほしい、と頼まれて調べ始めると、散骨は「合法」とも「違法」とも書かれていて戸惑います。実は、法律(墓埋法)が認めていないのは墓地以外に焼骨を「埋める」ことで、「まく」行為そのものを定めた条文はありません。決まりは法律・国の事業者向けガイドライン・自治体の条例やガイドラインの3層に分かれ、向けられた相手が違います。
墓埋法が禁じているのは墓地以外に「埋める」こと
墓埋法(正式名は墓地、埋葬等に関する法律)の4条が認めていないのは、墓地でない区域に遺体を埋葬すること、そして焼骨(火葬した後の骨)を埋めることです。破れば罰金(上限2万円)などの罰則があり、事業者か個人かを問わず全員に向けた決まりです。
一方、火葬した骨を粉状にしてまく行為は、この法律が想定する埋蔵とも納骨堂への収蔵とも別の方法で、「まく」こと自体を定めた条文はありません。なお散骨の前提は、市町村長の許可を受けた適法な火葬です(5条)。
厚労省のガイドラインが向けているのは散骨事業者
厚生労働省が公表している「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」は、令和2年度の調査研究をもとにまとめられたもので、題名が示すとおり、散骨を業として営む会社に向けた内容です。
求めている中身は、①焼骨は骨と分からないよう粉末にする、②陸地なら河川と湖沼を除いて事前に場所を決めておき、海なら岸から一定以上離れた海域で行う、③近隣の住民や土地の持ち主、漁業を営む人の利益や宗教上の感情を損なわない配慮をする、というものです。あわせて、墓埋法や刑法などの法令と条例を守ること、契約を文書で交わすこと、散骨したことを示す証明書を渡すことも挙げています。法令ではなく相手も事業者ですが、業者選びの物差しになります。
なお厚生労働省は、個人にこの内容がそのまま当てはまるわけではなく、個人から散骨の相談があった場合は刑法などの関係法令に留意するよう案内する考えを示しています。
条例が及ぶのは、その自治体の区域だけ
見落としやすいのが条例です。埼玉県秩父市は環境保全条例を改め、墓地でない場所での散骨(焼骨の散布)を原則禁止にしました。市内で焼骨をまこうとする人は誰でも対象になり、例外は市長が別途定める場合に限られます。海についても、熱海市のように海洋散骨の事業者向けガイドラインを設けている自治体があります。
条例の効力はその自治体の区域内に限られます。散骨したい場所を管轄する自治体に、条例やガイドラインの有無を確かめてから決めましょう。

合法か違法かより、誰に向けた決まりかを見る
散骨をめぐる決まりは、全員に向けた法律、事業者に向けた国のガイドライン、自治体ごとの条例やガイドラインの3層です。墓埋法が線を引くのは「埋める」ことで、「まく」ことについては、刑法などの関係法令と、その場所を所管する自治体のルールを確かめます。厚労省のガイドラインは個人にそのまま適用されるものではなく、業者に頼む場合の物差しになります。業者に頼むなら約款と証明書を見て、焼骨を管理している人と家族で合意してから進めましょう。


