iDeCo(個人型確定拠出年金)は現役世代から見れば、掛金を出し運用している段階の節税メリットを強く意識しがちですが、受取段階の節税メリットを考えることも重要です。
特に近年では「211万円の壁」なる年金収入の壁も広まってきており、iDeCoの受け取りも壁の基準になる公的年金等に含まれます。
一時金形式の受け取りもできますが、ここでは年金形式の受け取りに関する注意点について触れます。
なお部分的に一時金形式で受け取り、残りを年金形式で受け取るようなことも可能です。

目次
受取期間は5~20年だが金融機関により異なる
iDeCoを年金形式で受け取る場合、受取年数は5~20年の間で選べます。
金融機関によっては5・10・15・20年と5年刻みの4つからのみ選べるところもあります。
例を挙げると楽天証券は1年刻み、りそな銀行は5年刻みです。
積立てた資産から支給されるので、受取年数が長くなる程1年あたりの受給額は少なくなります。
年間振込回数は公的年金と同様年12回から年1回まで選択できますが、こちらも金融機関によっては選べない回数もあるので、金融機関の確認が必要です。
楽天証券の例で言えば年1・2・3・4・6・12回から選べます。
受取額は、受取年数と振込回数に応じて決まります。ちなみに振り込みで手数料が差し引かれますので、振込回数が多いと手取が減るデメリットもあります。
ただiDeCoの場合は、投資信託のような元本割れリスクのある金融商品に投資することもありうる点も重要です。
年金受取時に金融商品を換金
公的年金であれば、国民年金は年間受取額がほぼ決まっており、厚生年金は現役時代の給与によって受取額が決まります(いずれも経済・社会情勢による微調整あり)。
日本年金機構から送付される「ねんきん定期便」などを使えば、給付額が読めます。
iDeCoの場合、年金受取のための資産は自身で運用することを思い起こしてください。
掛金拠出は原則60歳までで終わりますが、積み立てた資産の時価は変動します。
年金を受け取る段階で金融商品は換金されるのです。

投資信託の場合受取額に変動が出る
特に投資信託に投資した場合に言えますが、時価の変動があり元本割れリスクもあるため、受取額が読み切れない問題があります。
特に受け取る前に株価暴落につながるようなショックが起きると、想定した金額ほど受け取れない問題が出てきます。
逆に大きく値上がりしてしまうと、「211万円の壁」を超えるなどで想定外の税金や保険料が発生する可能性もあります。
211万円の基準は、公的年金とiDeCoほか企業年金を合算した年額です。
投資信託を定期預金にして各年の受取金額の計画を
投資対象に投資信託を組み入れることは運用上好ましいことでもありますが、受取時まで投資信託のままにしておくのは、受取額が読めなくなり問題もあります。
例えば50代など受取が近くなる頃には、新規に投資する対象を元本保証型に絞り、さらにすでに積み立てた資産も定期預金のような元本保証型にスイッチングするのが好ましいです。(執筆者:AFP、2級FP技能士 石谷 彰彦)