老後2,000万円問題レポートこと「高齢社会における資産形成・管理」報告書(pdf)はいろいろ批判されてはいますが、興味深い提言も多くとても示唆に富んだ内容だと思います。
問題になったこの2,000万円に関しても、確かに月額マイナス5.5万円が30年で約2,000万円となるから、100年生きるなら生涯で2,000万円程度は不足するとは書いてあります。
しかし、それはあくまでも平均値で、かつ「65歳時点で2,000万円貯金しておけ」とはどこにも書いていません。
それなのに単純に自分の年齢と現在の貯金額を比較して不安になったり、その怒りを政治に向ける方が多いように思います。
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目次
後の人生はどう変化するかわからない
将来子供が生まれて、大学まで卒業するすべての費用を貯金しないと結婚できないと思う人はいないように、老後であってもその後の人生はどう変化するかわからないので、そのスタート時にすべての資金を用意する必要はないと考えます。
ただし、結婚する年齢と圧倒的に違うのは、老後を迎える時期は働いて収入を得ることが難しいので、今までのお金でさらなるお金を生むか、生活コストを下げて、その将来に対応するしかなさそうです。
物価が安い国に長期滞在することで生活コストを下げる
このように考えた場合、長期または短期の海外移住はその一つの解決方法と言えます。
もちろん、ヨーロッパなどで永住権を取るには多額の費用がかかり、いわゆる富裕層と言われる人でなければ向きませんが、タイやマレーシアなどの東南アジアのリタイアメントビザなどはその取得費用は安く、いわゆる一般のサラリーマン世帯なら十分に取得が可能であります。
そしてビザを取得するメリットは海外に銀行口座を持つことで定期預金であっても日本とは比較にならない金利がつくことと、物価が安い国に長期滞在することで生活コストを下げられることです。
海外に滞在することで資産運用になる
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金利に関しては銀行の定期預金でも2%~3%が通常で、物価に関してはおおむね1/2~1/3と考えられます。
仮に、日本円で20万円を生活費として使えるならば、海外なら40万円から60万円の使いでがあるといえます。
ということは、海外口座で1,000万円を預けて3%の金利なら年間30万円の利子収入があり、それが90万円分の使いでがあれば、9%で運用できていることになります。
このように物価が安く金利が高い国でお金を殖やし、そのお金を滞在中に使い生活コストを下げることができれば、海外に滞在すること自体が資産運用といえるのです。
さらに、海外に貯金することなどして資産を置くことは、万が一に日本や日本円になにかあった場合のバックアップとして保険の機能を果たすことになると考えられます。
居住ビザを取ることも使い方によって効果は高い
われわれ日本人は明日にでもほぼすべての国にビザなしで入国できる世界一強力なパスポートを持っているため、「ビザを取る」こと自体に価値を見いだす方は少ないと思います。
しかし物価の安い国に住むことができる居住ビザを取ることは、使いようによってはその効果が高いと思います。
もちろんこのような海外移住も、たくさんある老後のライフプランの一つであって、家族の状態やご自身の健康状態などでできない人も多く、誰にとってもベストな選択肢とは言えません。
それでも、政治や社会のせいにしても事態は変わらず、動きださなければどうしようもありません。
固定概念を捨てて、この海外移住も「自助」の一プランとして検討してみてはいかがでしょうか?(執筆者:田井 能久)