10人を超える芸人が謹慎・活動禁止になったことで大きく話題になった「闇営業」問題について、脱税にまつわる話題を取り上げております。
今回は、もらった側の申告義務に関して、誤解を招きやすい20万円ルールを取り上げます。
闇営業問題では、1人あたりのギャラが100万円だった芸人もいれば7.5万円だった芸人もいると報道されています。
闇営業の意味をもう一度確認しておくと、「所属事務所を通さずに行う営業」で副業とも読み取れます。
そこから、闇営業の収入が年間20万円以下なら確定申告義務が無いという解説が出ているのだと考えられます。
であれば100万円なら脱税で7.5万円ならそうならないのかというと、これは年額20万円以下の申告不要制度の意味を確認しておく必要があります。
今回の闇営業問題は、この誤解しやすいルールの理解を深められる題材とも言えます。

いわゆる20万円ルールとは?
国税庁タックスアンサー「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」において、20万円超の所得について触れた部分を抜粋します。
2 1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
3 2か所以上から給与の支払を受けている人で、主たる給与以外の給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
(注) 給与所得の収入金額から、雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円以下の人は、申告の必要はありません。
このタックスアンサーは確定申告が必要な人について解説しているので、裏を返せば「(主たる給与以外の給与の収入金額と)給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額」が20万円以下であれば確定申告不要です。
芸能人の場合は、主たる収入が給与所得とは限らない点がポイントです。
吉本興業の所属芸人は個人事業主であるとの報道もあり、収入から1割源泉徴収されているという所属芸人の話(前回の(1)で紹介)とも符合します。
個人事業主には、副収入や雑所得が年間20万円以下なら申告不要であるという税法の規定はありません。
よって闇営業で7.5万円程度のギャラだったから申告義務は無い、ということは吉本芸人の場合は考えにくいです。
また課税売上高1,000万円超で消費税の納税義務がある場合は、正規と闇で消費税の課税売上か否かが変わるわけではないので、納付した消費税が過少だった問題も出てきます。

確定申告不要でも地方税の課税漏れは残る
今回謹慎処分となった芸人の中には、給与制の事務所に所属していて、ギャラが1人あたり7.5万円程度だった芸人もいるように報道されています。
もうすでに修正申告を済ませたとの発表もありますが、この場合であれば、脱税の問題は生じないのでしょうか?
住民税には申告不要の規定は無いので、地方税課税漏れの問題は生じます。確定申告を行わない場合でも、住民税の申告が必要です。
またこの20万円ルールには、少額の所得申告による申告件数増加=事務手続増を防ぐという、税務署側の都合に基づく趣旨があると考えられます。
医療費控除を受けたいなどの理由でも確定申告書を提出する場合には、必ず20万円以下の所得を含める点にも注意が必要です。
すでに一旦確定申告を行っていた場合ですが、申告漏れの所得が20万円以下なら修正申告が不要であることを意味しているルールでもありません。
このため給与制の事務所に所属している芸人でも、一度行った確定申告に対して修正申告を行うのは妥当なことでしょう。
なお問題となった闇営業の会合は平成26年に行われているとのことですが、国税庁の確定申告書作成コーナーでは、平成26年分までの5年分に関して修正申告が可能です(システム上、平成26年分が申告可能なのは、令和元年いっぱい)。

(執筆者:AFP、2級FP技能士 石谷 彰彦)