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姉からの相談で思いついた、円満相続と相続税対策

発端は、姉から
とのお願いからでした。
姉は、自分の子供(母からみると孫)が、大学に入るための、授業料および下宿代が不足しているので、銀行に教育ローンを申し込みしました。
その際、保証人が必要と言われ、弟である私に依頼をしてきました。
保証機関を利用すれば、連帯保証人は不要であることは、FPでもある私は知っていました。
恐らく、姉もそのことは分かったうえで、当方に依頼してきたのかと推察しました。
なぜなら、保証機関を利用すれば利息とは別に保証料が発生するからです。
ふと、ひらめいた私
母は父から、それなりの不動産(調整区域の農地ですが)を相続しているため、二次相続対策を考えているところでした。
当時、母はガンで入院し、容態もあまりよくなく、有効な直前対策を考えているところでした。
もし、母が姉に現金を贈与し、母の財産を減らしても、贈与してから3年以内に相続が発生してしまうと、相続税の計算上は相続財産に持ち戻しするルール(相続税法19条)があり、節税できません。
ただ、よく読むと、誰に贈与しても適用されるわけでもなさそうです。
相続税法基本通達19-3には、
と、明記されています。
つまり、3年以内に相続が発生しても、
(2) 相続人でも、受遺者(遺言で相続することになっている者)でない、甥に贈与した場合は、加算されない。
(1) のケース:相続時にそれなりの財産を渡す予定の我が家では、該当しません。
(2) のケース:母が直接、孫に贈与すれば、相続発生直前でも、有効な相続税対策になりそうです。
早速、母に相談し、甥に、贈与する気持ちがあるのか聞いたところ「授業料やら、下宿代に必要な資金であれば、喜んで」と応諾しました。
もちろん姉も「借入するより、いただけるのなら、大変助かる」と喜んでくれました。
当方も、いずれ相続が発生し、遺産分割の話を行うことを考えると、姉の要望に少しでも応えることが、将来の円満な遺産分割につながるという思いがありました。
相続税対策のために贈与するのではなく、家族がお金を必要にした時、親族間で助け合い、結果として、相続税対策になれば良いのです。
扶養義務者間は、そもそも非課税?

扶養義務者相互間において生活費または教育費に充てるために贈与を受けた財産のうち、「通常必要と認められるもの」については、贈与税の課税対象になりません。
相続税基本通達に、扶養義務者について明記しています。
(2) 直系血族及び兄弟姉妹
(3) 家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族
(4) 三親等内の親族で生計を一にする者
となっており、祖父母は、直系親族にあたり、孫の生活費、教育費に直接充てるのであれば、贈与税も発生しない訳です。
後日談
税務署より、母の相続税申告書の提出後、母の預金から引出した100万円のお金の行方について問い合わせがありました。
そこで、孫の通帳に入金し、教育資金と、下宿代に使用したことを説明したところ、相続財産に加算することもなく、理解していただけました。(執筆者:橋本 玄也)