会社員の健康保険・介護保険・厚生年金保険料は給与・賞与額に応じて決まり、給与から天引きされます。
これに対して、自治体・広域連合の国民健康保険料・後期高齢者医療保険料の所得割や介護保険料は各種所得に応じて6~7月に決定され、納付するか年金からの天引きとなります。
確定申告を行っている場合、自治体等の保険料はその申告のしかたにも左右されます。
2つのチェックポイントに絞って注意点を述べます。

目次
医療費控除・ふるさと納税などは影響しない
保険料引き下げ要因になるものとして誤解しないでほしい点ですが、所得控除や税額控除と呼ばれている、各種所得の必要経費とは異なるものは、保険料引き下げにはならないことです。
所得控除は基礎控除を除くと、下記の13種類です。
・医療費控除
・小規模企業共済等掛金控除
・社会保険料控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・寄附金控除
・寡婦・寡夫控除
・勤労学生控除
・障害者控除
・配偶者控除
・配偶者特別控除
・扶養控除
ふるさと納税は寄附金控除に、iDeCo掛金は小規模企業共済等掛金控除に該当します。
税額控除で代表的なものは、住宅借入金等特別控除や配当控除です。
それでは有効な引き下げ策は何か、2点に絞って解説します。
引き下げ策1: 青色申告

事業所得・不動産所得・山林所得のある方は、青色申告を行うことにより10万円または65万円の青色申告特別控除を受けることができます。
青色申告特別控除差引後の所得金額に対して、保険料率をかけて保険料が決まる点が、13種類の所得控除とは異なります。
例えば国保の所得割保険料率を10%とすれば、最大で6.5万円程度の保険料引き下げにつながります。
また青色申告を行うとこれ以外にも、他の所得と損益通算してなお引ききれない損失(純損失)を最大3年間繰り越せるなど、税・保険料引き下げのための様々な特典を受けることができます。
事業所得・不動産所得・山林所得をすでに得ていて、翌年から青色申告の特典を受けたい場合は、青色申告承認申請書を今年分の申告期限(原則として翌年3月15日)までに提出します。
引き下げ策2: 配当所得と株式等譲渡所得の申告

株式譲渡に関して損失を申告しておくことも保険料引き下げには重要ですが、他にも配当所得・株式等譲渡所得には注意点があります。
上場株式等の配当所得等、および源泉徴収ありを選択した特定口座で生じた譲渡所得は、地方税法の用語では特定配当等・特定株式等譲渡所得金額と呼ばれます。
これらに関して保険料の取り扱いは
住民税で申告対象とした場合:保険料算定対象
となります。確定申告の対象とし住民税の申告を行わなかった場合は申告対象としたものとされ、保険料が上昇する要因となります。
配当の申告・上場株式等で生じた損失の申告で多額の還付金を得るために確定申告の対象としたことで、保険料で不利になっている可能性はあります。
例えば平成30年分で生じた譲渡損失10万円と譲渡所得20万円(源泉徴収あり特定口座で発生)を確定申告の対象とすれば、所得税1.5万円・住民税5,000円程度の軽減にはなります。
しかし所得割保険料率が10%の国民健康保険に加入している場合は、令和元年度において差し引き10万円分の所得に対し、1万円程度の保険料上昇につながります。
この保険料上昇を防ぐには、確定申告の対象としたものを住民税の申告書もしくは申出書で申告不要とする旨を記載し、住所地の自治体に提出します。
住民税の軽減効果は無くなりますが、国保や後期高齢者医療保険であれば、保険料上昇よりはマシと考えられます。
参考:令和元年度の改正点(均等割軽減に関して)
国民健康保険料・後期高齢者医療保険料に関して、世帯内の被保険者(世帯主含む)の所得合計(退職所得を除く総所得金額等)が一定の基準以下の場合は、原則一定額の負担となる均等割が軽減されます。
この軽減のうち、5割軽減・2割軽減の基準が今年度も下記のように改正されます。
2割:33万円 +(51万円 × 被保険者数)以下
(執筆者:AFP、2級FP技能士 石谷 彰彦)