認知症の約7割はアルツハイマー病が原因となって引き起こされます。
アルツハイマー病の予防薬の開発を巡り、各国の研究者・製薬企業が巨額の資金を投じていますが、十分な成果に結びついていないのが現状です。
今後も認知症と人類との戦いは続いていきますが、当面は認知症とともに生きていくことを選択せざるを得ないでしょう。
しかし、ひとたび認知症を患った方が線路内に立ち入るなどして事故を引き起こしてしまえば、家族が多額の賠償責任を問われてしまうという事態にもなりかねません。
そこで今回は、認知症に関するさまざまな問題への保険を使った対処方法について説明させていただきます。

目次
認知症の闘病対策:公的保険を柱に民間保険も利用する
認知症に関する治療は、現在は健康保険の対象です。
しかし、日本では認知症薬として使用されている薬でも、フランスでは費用対効果の問題から公的保険の対象外とされています。
残念ながら多くの人に効果のある認知症薬は登場しておらず、症状が悪化していってしまうこともあります。
症状が進み日常生活を送るのに支障が生じるようになったら、介護保険の給付を受けることができます。
・ 65歳以上が対象となる「第1号被保険者」
・ 40歳以上65歳未満で特定疾病によって要介護・要支援状態になった場合にのみ給付を受けることができる「第2号被保険者」
に区分されています。
若年性認知症は特定疾病に含まれ、症状に応じて認定を受けることができる可能性があります。
また近年は、認知症に備えた民間保険も登場しています。
認知症と診断された場合に、100万円超の保険金を受け取ることができるものもあります。
健康保険・介護保険は、その仕組から自己負担額が生じてしまいます。
病気に備えてまとまったお金を準備することが難しい場合には、民間保険を利用して対策を行うことが大切です。

万が一の事故への対策:個人賠償責任保険で備える
認知症は、「介護費用に関する問題」と「万が一の事故に対する保障」の両方を考える必要があります。
認知症は、要介護状態となった場合に健康保険と介護保険の対象であり、それぞれ高額療養費制度の対象でもあります。
認知症患者が引き起こす事故については、個人賠償責任保険を対策の柱にできます。
しかし、個人賠償責任保険は単独で加入することができず、自動車保険や火災保険などに付帯させなければなりません。
ライフステージの移行に伴う保険の見直しで、保険契約を損なってしまわないように注意しましょう。

過剰に恐れずに適切な対処を
まだまだ始まったばかりの試みですが、自治体が認知症の患者を一括して個人賠償責任保険に加入し、家族へ過大な負担がおよばないようにする動き出ています。
認知症を取り巻く環境は少しずつですが改善されています。
ライフステージの変化の1つとして過剰に恐れず、適切な対処を行っていきましょう。(執筆者:菊原 浩司)