「杖」は、足腰の弱った高齢者や足の不自由な人の歩行をサポートしてくれます。
今はひと昔前にくらべて杖のバリエーションも増え、より自分に合った杖を選びやすくなりました。
杖は、介護保険を利用してレンタルできます。
要介護認定を受けている人なら、月々数百円の負担で収まることもあります。
ただ、介護保険が使える杖は種類が決まっており、よく見かける「一本杖」などは介護保険の対象になりません。
ここでは、介護保険で安く借りられる「杖の種類」と「選び方のポイント」をご紹介します。

目次
介護保険の対象になっている杖
杖は、介護保険制度の居宅サービスである「福祉用具貸与」により、月々1~3割の負担でレンタルすることが可能です。
たとえば、月々のレンタル料金が1,500円の杖なら、1割負担の人が月150円、3割負担の人が月450円になります。
何割負担になるかは、所得に応じて決まります。
介護保険の対象になっている杖は、以下の5種類です。
・ ロフストランド・クラッチ
・ カナディアン・クラッチ
・ プラットホーム・クラッチ
・ 多点杖
杖のレンタルは、要介護認定(要支援1~要介護5)を受けている人なら誰でも利用できます。
杖のレンタルはどこで申し込む?
まずは、使いたい杖が介護保険の対象かどうかを確認します。
杖のレンタルを検討している人は、地域包括支援センターや担当のケアマネージャーに相談しましょう。
福祉用具貸与サービスは、都道府県・市区町村の指定を受けた「福祉用具貸与事業者」がおこないます。
専門知識のある福祉用具専門相談員スタッフが、ひとりひとりの状況に合わせて、杖の選択や使い方を丁寧に指導してくれます。
アドバイスを受けながら自分にぴったりの杖を選びましょう。
杖の種類と選び方のポイント
実際に杖を選ぶ際は、上で述べたように福祉用具専門相談員や、場合によっては医師や理学療法士などの助言を得て選んでいきます。
ここでは、杖の種類別に選び方のポイントをまとめました。
松葉杖

脇当てと、その下にグリップがついた杖です。
非常に強度が高く、左右のバランスが取りづらい人が使うと歩行が安定して移動しやすくなります。
松葉杖が向いているのは以下のような人です。
・ 骨折やケガをしている人
・ 下半身麻痺の人
・ 股関節症の人
脇当てがついているものの、絶えず脇当てに体重をかけていると、周辺が痺れたり血流が悪くなったりしてしまいます。
そのため、杖を持つときは、脇と脇当てのあいだに卵1個分くらいのスペースを空けるようにしてください。
松葉杖の長さは、一般的に「身長-40センチ」といわれています。
実際に手に持ってみて、体に合ったものを選びましょう。
ロフストランド・クラッチ、カナディアン・クラッチ

グリップの上に「カフ」という腕を通す輪っかが付いている杖です。
カフで腕を支えるので、手だけで持つ杖にくらべてより安定感があります。
カフの形は、一箇所が空いているU字型と、完全な輪っかのO字型の2種類です。
U字型の方が腕にはめやすいですが、O字型に比べると安定感が劣ります。
ただ、O字型は腕から外しにくいため、転倒した際には危険を伴うこともあります。
ロフストランド・クラッチが向いているのは以下のような人です。
・ グリップを握る力が弱い人
・ 手首に力が入りにくい人
・ 麻痺がある人
また、同様に介護保険の対象になっている「カナディアン・クラッチ」は、このロフストランド・クラッチの原型とされる杖です。
ロフストランド・クラッチよりもカフの位置が上にあり、肘の上を支えてくれるのが特徴です。
肘を伸ばしにくい人には、カナディアン・クラッチの方が向いているケースもあります。
体の状態に合わせて、専門家とよく相談しながら選ぶようにしましょう。
プラットホーム・クラッチ

杖の上部に、腕が置ける平らな支えが付いており、その先端にグリップがついた杖です。
支えに沿って肘掛けのような要領で腕を置き、グリップを手で握ります。
肘を支えてくれる杖なので、手首から先にあまり力が入らない人でも使え、別名「リウマチ杖」とも呼ばれています。
プラットフォーム・クラッチが向いているのは、以下のような人です。
・ リウマチなどの関節炎の人
・ 手のひらや指に強い負荷をかけられない人
・ 腕を伸ばしにくい人
難点は、すこし重さがあり、肩関節に負荷がかかってしまうところ。
移動にもやや時間がかかります。
とはいえ、手首や手指に力が入りづらい人にとっては非常に助かる杖でしょう。
多点杖

杖の先端が、3点から4点に分かれている杖です。
一本杖よりも着地面積が広くなるので、そのぶん安定感があり、杖自体が自立します。
ただ、地面がデコボコだったり、傾斜があったりすると、その影響を受けて不安定になりやすいのがネックです。
そのため、一般的には室内などの床が平らな場所での使用がメインとなります。
多点杖が向いている人は以下のとおりです。
・ 一点杖では不安定な人
・ 足の筋力が衰えている人
・ 背骨が曲がっている人
杖を持って、外出しましょう
歩行に不安があると外出が億劫になり、自宅で過ごすことが多くなってしまいます。
ですが、それではますます筋力が弱って足腰が衰えてしまうでしょう。
自分に合った杖を使うことで、不安定な部位をうまくサポートして歩行を安定させることができます。
介護保険を利用すれば、月々のレンタル料金は格安で済みます。
歩行に多少なりとも不安を抱えている方はぜひご検討ください。(執筆者:渡辺 有美)