2019年は、株式投資家には何とも微妙な環境が続いています。
その中でも唯一といっても良いぐらい好調な市場なのが、Jリート(不動産投資信託)です。
Jリートの代表的な指数である東証リート指数は年初から22%上昇し、日経平均の9%上昇を大きく上回る実績を残しています。
高配当が特徴のJリートですが、その上昇に変調の兆しが見えてきました。
これまでの流れと変調の原因を知れば、個人でも高値掴みしない投資戦略が見えてきました。
目次
なぜJリートは上昇しているのか

Jリートの取扱いが始まったのは2001年と歴史が浅く、これまでは地銀を中心にした金融機関が投資シェアの60%を占め、海外投資家も25%を占めるなど、個人投資家には馴染みが薄い存在でした。
なぜJリートは上昇しているのか、その特徴と上昇の理由を見てみましょう。
Jリートの意味
Jリート(REIT)とは「Real Estate Investment Trust」の略称で、投資対象を商業不動産とする日本版不動産投資信託(ファンド)のことです。
多くの投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなど複数の不動産などをファンドが購入し、その賃貸収入や売買益を原資として投資家に配当金を分配する仕組みです。
東証には50銘柄以上のファンドが上場し、時価総額で20兆円に届く規模になっています。
Jリートの特徴
Jリート最大の特徴は、高い配当金と言って良いでしょう。
予想配当利回り(平均)は3%台、マイナス金利の日本ではとても魅力的な投資機会を提供しています。
それ以外にも、次のような特徴が挙げられます。
(1) 値動きの小ささ(ボラティリティの低さ)に加え、為替変動(特に円高局面)との非連動性
(2) 不動産開発業者が借入をして物件を購入する際、借入金利が超低位の追い風が続く
(3) 都心の商業不動産市況は堅調で、当面値崩れの見込みが低い需給環境
Jリートは金利低下環境で強みを発揮するが…
日本および欧州のマイナス金利はもちろん、利上げを実施していた米国までもが今年に入り利下げに転じたため、世界中の中央銀行が利下げする金利低下局面が発生しました。
借入によって商業不動産を取得するJリートにとって、金利低下はまたとない環境であり、好景気持続によって賃料収入の安定も続いています。
同じように安定的に利金や配当金が約束されている債券など金融商品は軒並み値上がりし、Jリートにも世界中から投資資金が流れ込んできています。
しかし今回の金利低下は景気減速を懸念した利下げであり、そもそもの景気が腰折れした場合は配当金よりも、投資元本が大きく目減りするリスクもあります。
Jリートが最も強みを発揮する環境は、景気後退した後の低金利環境から景気回復に向かうタイミングであり、今のような景気後退に向かっていく時に延命治療として起こる金利低下局面ではないのです。
Jリート変調の原因を考える
世界中が低金利になる中、活況のJリートにも変調の兆しが見えてきました。
まだしばらく伸びると考えていますが、これまでのような順調な伸びではなくなる可能性があります。
それら変調の兆しを確認し、「売り」、「買い」の投資アイデアに利用してください。
極端な配当狙いの動き
Jリートの特徴は高い配当金だとお伝えしましたが、これを受取れるのは決算期末に株式を所有していた株主だけです。
そのため配当を受取る権利落ちした7月期決算銘柄が下落し、まだ間に合う8月期決算銘柄が急騰するといった配当金だけに着目した機関投資家が多くなってきたのです。
要は超短期の機関投資家が集まってきており、これまでのような経済合理性で株価が予測しにくくなってきています。
ホテルリートが軟調な動き
Jリートにはオフィス・住宅・ホテル・商業施設・複合施設・物流センターなど、商業不動産にも種類があります。
その中で特に堅調だったのが、東京オリンピックに向けて戸数が増加していたホテルリートです。
日韓関係の悪化や香港情勢、人民元安など訪日外国人減少につながる環境になりました。
8月に入り、東証リート指数は3%の上昇ですが、ホテルリートの代表格である星野Rリートは▲2%とJリートの中でもバラツキが出てきました。
こういった環境ではホテルリートや商業施設リートが低迷し、住宅や物流リートが頑張ることでJリート全体は上昇するよう、日本でも多様化が進みました。
今年に入って20%以上の上昇だったので、利益確定したい投資家も多くなる時期に悪い環境が重なり、一部のリートに売りが出たという見方もあります。
まだ伸びる環境だと考えていますが、変調の兆しが出てきたことは認識しておきましょう。
不動産株に引きずられるJリート
Jリートといっても不動産投資なので、連動性が高い業種は不動産業となります。
その不動産株も金利低下の恩恵を受けるのですが、4月以降どんどん下落しているのです。
その乖離率は過去10年で最大となり、Jリートも頭打ちが近づいてきた感があります。
もちろんJリートだけが無尽蔵に上昇し続けることはなく、これからは上昇ピッチが落ちると見た方が良いでしょう。
変動幅の少ない年の投資手法

以上の分析から、高配当だからという理由で新しくJリートへ投資するのはもう遅く、よく上がっても10%程度ではないでしょうか。
東証リート指数では現在2050付近から、2200ぐらいがピークだと見ています。
金利自体は世界的に低下傾向がしばらく続くため、現在保有しているJリートはまだ大丈夫だと思うので、しっかりと高配当を受取りましょう。
株式投資の醍醐味は
ことです。
特に今年のような変動幅が少ない年は、ヒット&アウェイで大きな利益を狙わない投資手法に限ります。
Jリートの現在地を考えると、高値圏に近くなっていることが複数の兆しが読み取れるので、投資する場合は慎重にしてください。(執筆者:中野 徹)