「離婚でもするの?」
なんていう声に押されつつ、2泊3日で「有料老人ホーム」に体験入居してきました。
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目次
要介護2までの健常者が対象の「住宅型」有料老人ホーム
入居先は栃木県の某「住宅型 有料老人ホーム」です。
「住居型」とあるのは要介護2までの健常者が対象で、介護付きやグループホームではありません。
ただし、部屋やトイレには緊急時の通報装置があり、職員さんも24時間常駐です。
医務室が完備され、月2回の健康診断の他、訪問歯科医に診てもらえます。
体験入居の理由1:環境の良さ
ここに体験入居してみたいと思った理由はいくつかありますが、何より、環境の良さです。
市街地に近く木立に囲まれ静かで、入居棟は全て庭付きの平屋です。
入居者さんの中には菜園や庭の手入れを楽しんでいる方もいらっしゃいます。
私も入居翌日、ホーム周辺の1時間の散歩時間があっという間に感じられました。
体験入居の理由2:ホテル併設でアクティビティ-も利用可能
ホームの隣にはリゾートホテルがあり、廊下でつながっています。
ホテル併設の老人ホームなので、ホテルの温泉施設やアクティビティ-も利用できます。
ホームにも十分大きなお風呂があるのですが、2日間とも勿論、温泉三昧です。
ホテルロビーには購読している新聞もあり、ゆっくりと朝刊に目を通せました。
「あそこのコーヒーは入居者は100円でいいのよ」と、言われたのは退去の日でした。
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体験入居の理由3:「入居一時金」がかからない
入居時は敷金として保証金の20万円が掛かりますが、いわゆる「入居一時金」はありません。
毎月の費用は食費込みで6畳部屋が11万円強、10畳で13万円ちょっと破格ともいえる利用料金です。
この価格で、どんな内容なのだろうというのが素朴な疑問でした。
いざ体験入居
体験入居の初日は駅まで職員さんが車で迎えに来てくださいました。
駅から市街地を抜け10分も走ると森の中に囲まれたホームに到着です。
早速食堂やロビー、集会室を案内された後、長い廊下を通って部屋に案内されました。
この長い廊下、入居者さんにはちょっとのようでしたが、ノスタルジックで時代を感じ私は落ち着きました。
ミニキッチンとトイレの付いた6畳間の部屋には、小さな板間の先にベランダと庭が続き、程よい緑が楽しめます。
利用者さんの生活も垣間見えます
入居者さんは60代から90代まで、「ここは3食昼寝付きでいいよ。」と笑った男性は朝食が終わったらまた寝るそうです。
「10時にロビーに来るとお散歩の人達がいるから一緒に混ぜてもらうといいよ。」と、誘ってくれた女性は、「ここの食事はおいしいけれど私の口には合わないの。」と、微妙です。
食費は1日3食で720円、入院時の食費並みですから、年寄りでもガッツリ肉食というわけにはいきません。
2日も過ぎると、いつもせかせかと動き回っている身には、時間を持て余すほどで別世界のようです。
が、入居者さん達とも少し打ち解けてきました。
「介護認定受けてる人でも、部屋の掃除も洗濯もみんな自分でしているのよ。ヘルパーさん頼んでないよ。」
94歳で最年長の男性は「着るものは全部自分で作ったんだ。下着もだ。」と、見せてくれました。
よく見ると縫い目が分かりますが、今でも針を持つそうです。
手押し車を押しながら、毎日散歩を欠かしません。
「私の家はすぐ近くよ。嫁さんも家にいるので、私が移って来たんだ。若いころ〇〇(一部上場会社)に勤めていたので年金と企業年金がもらえるのよ」年金は月々20万円は下らなさそうです。
ホームの支払いは全部年金で賄えると胸を張る89歳の女性の隣の男性は、「俺は同じ工業団地にいたけれど〇〇じゃなかったから企業年金がない。」と残念そうでした。
体験宿入居を終えて感じたこと

たった3日の体験宿入居でしたが、それでも貴重な体験でした。
10代の中学生と、20代の社会人の世界が違うように、高齢者といっても、60代、70代、80代、90代もひとくくりではなく、生きてきた時代背景も、見聞きしてきたことも、身体の状態も違うのは当然です。
老人ホームという集団生活の中で、自然にそれぞれの役割ができているように見えました。
動ける人は掃き掃除から、庭の手入れや植木の水やりと職員さんの手助けをしています。
車椅子の人や、不自由のある人にはその方のペースを尊重し、適度な距離感を心得ている印象でした。
毎日歩くことを自分に課している94歳の男性だけではなく、みなさん規律をもって生活しているのです。
その証拠に、ほとんどの方が、男性も女性も私の居た3日間毎日お召し物が違うのです。
皆さん清潔でこざっぱりとしたお洒落さんです。
小さなクローゼットなのに何処にこんなに毎日違う服が入るのと不思議なくらいでした。
素敵なお洋服ですねと声をかけると、「これ、3年も着てるよ。」 、毎朝パッチワークの素敵なバックで食堂に来られる方は、「〇〇さんの手作りなのよ。」と私の隣の席の女性をさしました。
「あなたが来たら一緒に散歩しましょうね。」
「趣味が旅行なの、一緒に行かない。」などなど。
うれしいお誘いに気を良くして…それでも、今はもう少し働けそう頑張れるかもと、元気をもらいました。(執筆者:平賀 初恵)