二世帯同居は、親世帯・子世帯のどちらにも数々のメリットがあります。
いざという時にお互いを頼りにできるという生活面や精神面のメリットのほか、
「固定資産税の支払いが1軒分で済む」
など、金銭面のメリットもたくさんあります。
これらのメリットに魅力を感じて、二世帯同居を選択する人も多いものです。
目次
二世帯同居のデメリットも直視しよう

でも二世帯同居には、メリットばかりではなくデメリットも存在します。
いざ同居生活がはじまってからあれこれとマイナス面が目につくこともあり、二世帯同居を選んだことを後悔している人も思いのほか多いのが現実です。
今回は、とくに大きな問題に発展しやすい「二世帯同居の金銭的デメリット」に焦点をあて、子ども世帯の側から見た要注意ポイントをご紹介します。
デメリットその1 光熱費や固定資産税の負担
子世帯にとっては、土地代を節約できたり、仕事と子育てが両立しやすかったりと、金銭面で助かることの多い二世帯同居。
住宅ローンの出費が抑えられることや共働きが可能になることで貯蓄が進み、子どもの教育費を早いペースで貯められるなどの利点があります。
ところが、経済的にお得なはずの二世帯同居で、あとから思わぬお金のトラブルに悩むことも少なくありません。
たとえば、同居の場合、光熱費を折半して支払う家庭が多いと思います。
ですが、実際は親世帯と子世帯の光熱費の金額はまったく同じではありません。
すると、良かれと思って平等に折半したはずが、実は不公平になってしまい、長い生活のなかで不満が積もり積もって、いさかいのもとになってしまうことも。
また、盲点になりやすいのが、親が亡くなったあとの「固定資産税」です。
二世帯の大きな家は固定資産税も高額になる傾向にあるため、子世帯にその支払いが一気にのしかかってきて愕然としてしまうケースがあります。
また、修繕費もそれなりにかかるので、覚悟しておく必要があるでしょう。
デメリットその2 いざ賃貸に出す際に借り手がつきにくい

子世帯が転勤で引っ越しをすることになったり、嫁姑問題が原因で別居することになったりして、子世帯がいずれ家を出る日がやってくるかもしれません。
その場合、1軒の家であれば家を売却したり賃貸に出したりしてお金を回収できますが、ふたつの世帯がくっついている二世帯住宅の場合は簡単にはいきません。
完全分離型で玄関が分かれている二世帯住宅であれば、賃貸なら借り手がつく可能性もゼロではありませんが、借り手側に敬遠さたり親が嫌がったりして難しいケースもあります。
そうなると、家を出た子世帯はローンと家賃の二重払いをすることになり、家計を圧迫して生活が苦しくなるリスクがあります。
一軒家とくらべ、二世帯住宅はライフスタイルの変化に柔軟に対応しにくい点がデメリットといえるでしょう。
デメリットその3 親の介護を背負うことになる
同居をしていると、親に介護が必要になったときに、子世帯が介護を担わざるを得ない状況になります。
同居を決めたときはまだまだ元気に見えた両親も、いつかは体が衰え日常生活がままならなくなり、子世帯が介護に直面するときがやってきます。
介護がはじまると、食事や着替えなどの身の回りのお世話に加えて、通院の付き添いや日々のこまごまとした買い物など、子ども側は親のために多くの時間を割くことになるでしょう。
もし親の要介護度が高く、常に介助が必要な状態になれば、最悪の場合は子どもが仕事を辞めざるを得ない状況になるかもしれません。
そうなると、大幅な収入減を余儀なくされて、将来設計が狂ってしまうこともあり得ます。
実際は介護にもさまざまな手段があり、子ども側の負担をある程度減らしていくことも可能です。
ただ、同居しているとまったくノータッチというわけにはいかないため、二世帯同居を検討する際は、将来の介護問題もしっかり視野に入れておく必要があります。
二世帯同居 成功のカギは「お金」と「介護」の未然対応
二世帯でうまく同居生活を続けていくには、「お金」と「介護」のトラブルをできるだけ未然に防ぐ工夫が必要です。
前述の光熱費の例でいえば、高齢夫婦2人と家族の多い子世帯ではどうしても水道代・ガス代・電気代の使用量に差が出てくるのは当然ですから、配分の仕方を見直すべきでしょう。
また親の介護に関しては、親自身が老後生活や介護にかけるお金をどのくらい残してあるのか、情報を共有することが大切です。
もし親の資金が十分でなければ、子どもは兄弟姉妹を含め「親の介護の仕方」や「介護費用の負担」について一度しっかり話し合いをする必要があるでしょう。

さらに可能であれば、建築段階から介護を視野に入れた計画を立てるのがおすすめです。
足腰の弱ってくる高齢者にとって危険が少なく、家族が介護をしやすい造りの家を建てれば、将来的に介護が必要になったときに両者のストレスを大幅に減らすことができます。
たとえば、以下のようなプランを検討してみましょう。
【床の段差をなくす】
床をなるべくフラットにすることで、転倒の予防になったり車いすをスムーズに操作できるようになります。
【親の個室は1階の玄関の近くに】
デイサービスやショートステイなどの送迎時に、玄関から遠い部屋だと歩けない高齢者の場合は移動が大変。
部屋が玄関の近くだと本人の負担も少なく、送り迎えにスムーズに対応できて便利です。
【玄関の外階段はスロープにする】
同じくデイサービスやショートステイを利用する際に、部屋から送迎車まで車いすで移動する場合、玄関の外がスロープになっていると非常にスムーズかつ安全に移動ができます。
徒歩で移動する際も、足が上がりにくい高齢者はスロープを歩けば階段につまずいて転倒するのを避けられます。
【必要な箇所に手すりをつける】
高齢者の転倒事故の多くは自宅内で起こっており、転倒によるケガを防ぐには手すりの設置が非常に有効です。
手すりがあれば、人のサポートがなくてもひとりで部屋を移動したり、自分でトイレにいくことができます。
高齢者の自立支援のためにも、ぜひ積極的に手すりを設置するのがおすすめです。
手すりの設置に適しているのは、「トイレ」、「玄関」、「お風呂」といった、かがむ姿勢をとって足元が不安定になりやすい場所です。
「玄関の外階段」や「スロープ脇」も、転倒すると大怪我を負うことになりかねないため手すりは必須でしょう。
また、「廊下の途中」や「曲がり角」にも手すりがあると安心です。
【トイレとお風呂はできるだけ広く】
トイレの利用や入浴に介助が必要になると、本人と介助者のふたりでトイレや浴室に入ることになります。
限られたスペース内で洋服の着脱や体を清潔にするこまごまとした介助をおこなうには、ふたりが入れる十分な広さが確保されていることが望ましいです。
スペースが足らないと、介助者の動きに制限が出てきてしまうため、十分なケアを受けられない可能性があります。
二世帯同居を検討する際には生活の変化も視野に入れて
ふたつの異なる世代の人間が同じ家で暮らすには、それぞれの希望のすり合わせはもちろん、お互いに譲歩できる部分は譲歩して協力し合う姿勢が大切です。
また、目先のプラス面ばかりを見て二世帯同居を決めるのではなく、これから起こり得る生活の変化にどう対応していくのか、ある程度の見通しを立てておくことも欠かせません。
同居生活がうまく行かなかった場合や、家族のライフスタイルに変化が生じた場合など、フレキシブルに対応できる余裕を持っておくことが求められるでしょう。(執筆者:渡辺 有美)