米中貿易摩擦の激化やそれに係わる景気減速により、2019年5~8月には株式のようなリスク資産の市況は低調であっても、有事に強いと言われる金がかなり値上がりしました。
金投資は金そのものに投資する方法、金を対象とした金融商品に投資する方法がありますが、その投資方法により税金の扱いは分かれます。
金融商品に投資する場合も、ETFと先物では異なる取り扱いがされます。

目次
現物の金:総合課税の譲渡所得
現物の金を取引して譲渡益が出た場合ですが、譲渡所得に該当します。
ただし株式の譲渡所得のように税率20.315%の分離課税ではなく、課税所得により税率が変動する総合課税です。
住民税の標準税率は10%、所得税率は5.105~45.945%ですが、この点は給与所得や事業所得と同じです。
国税庁の案内などで、総合課税の譲渡所得に該当する資産の代表例として挙げられているのが金地金です。
計算式は、取得してから譲渡までの期間が5年以内(短期)か5年超(長期)かで異なります。
売却金額 – 取得費 – 譲渡費用 – 50万円
長期:
(売却金額 – 取得費 – 譲渡費用 – 50万円)× 1/2
譲渡費用は、売却手数料など売却の際にかかった費用が該当します。
50万円の特別控除があるので、譲渡損が出た時だけでなく譲渡益が50万円以内の場合も譲渡所得は0円になります。
確定申告不要制度
年収2,000万円以下のサラリーマンの場合所得20万円以下であれば確定申告不要ともいわれていますが、上記の計算式で計算して20万円以下になるかを判定します。
なお、20万円ルールに関しては誤解も多いので、下記で詳しく解説しております。
また総合課税の譲渡所得に関する詳細は、下記で解説しております。
金ETF:上場株式等に係る譲渡所得等

金を組み込んだ上場投資信託(ETF)は、例えば東証に上場しているETFS 金上場投信(証券コード:1672)がありますが、他のETFと同様に上場株式等に係る譲渡所得等に該当します。
分離課税で所得税率15.315%・住民税率5%と一定税率ですが、50万円の特別控除はありません。
所得金額は
と計算し、これに税率をかけて税額計算されます。
源泉徴収あり特定口座を開設して取引を行えば、売却時に税額が徴収されるため確定申告の対象とする義務はありません。
また源泉徴収ありかなしかを問わず、金ETFの譲渡で万が一損失が生じた場合、上場株式や公募投資信託の譲渡益や配当・分配金と相殺(損益通算)でき、また相殺しきれない損失は3年間繰り越すことが可能です。
金先物:先物取引等に係る雑所得等
金先物は、いわゆるレバレッジ効果により金の現物やETFよりも大きな値動きを追うことも可能です。
ただ金ETFとは異なり、先物取引等に係る雑所得等に該当します。
税率があわせて20.315%であり、損失が3年間繰り越しできることは金ETFと同じです。
ただ源泉徴収制度はありませんので、前述の20万円ルールが適用される場合を除き確定申告は必要です。
また損失が生じた時に相殺できるのは、同じグループ内にある所得のみです。
先物取引等に係る雑所得等は、仮想通貨(暗号資産)を除く各種先物取引・証拠金取引が該当し、国内登録業者のFXも為替証拠金取引にあたるので該当します。
損失が生じた場合の税軽減の扱いに注意
以上投資対象によって3種類の所得に分かれることを説明しましたが、いずれに該当する場合でも損失と相殺できる所得が限定されている点には注意が必要です。
例えば金先物で生じた損失△30万円は、譲渡所得40万円とは相殺できません。
同様に金ETFで生じた損失は、現物の譲渡益や先物の差益とは相殺できません。
投資で生じた損失だから、投資で生じた利益となんでも相殺できるわけではない点に十分注意してください。(執筆者:AFP、2級FP技能士 石谷 彰彦)