今年9/30に日本郵政グループ3社長がそろって記者会見し、かんぽ生命の保険不正販売の中間報告を行いました。
過去5年間で法令違反が1,400件、不利益状態の解消を希望する顧客は2万6,000人にのぼり、経営への打撃も深刻な状況です。
同じ金融機関でも銀行や保険会社では起きない組織的な不正販売は、どのような不正でなぜ止められなかったのでしょうか。
皆さんが被害者とならないよう、保険契約の際に気を付けたいポイントを解説します。
目次
かんぽ生命の不正販売を反面教師にする

郵政グループは保険販売や投信販売などを取り扱っています。
郵政民営化からは10年がたちました。
昨年NHKの番組で取りあげられていたにもかかわらず、社内調査をしなかった経営陣の無策も被害を拡大させました。
今回の不正販売を反面教師にした対策を考えていきましょう。
不正販売の内容
顧客からの聞き取り調査をもとにした本件中間報告によると、平成26~30年の過去5年間で取り扱った契約は約18万3,000件とのことです。
そのうち不正契約が6,327件(3.4%)、法令違反は約1,400件にのぼりました。
具体的な不正契約の主な内訳は、次の通りです。
不正契約の主な内訳
(1) 高齢者への契約内容説明時に、家族を同席させなかった社内規定違反
(2) 保険乗り換え時に、新旧両方の保険料を支払わせる二重払い強要
(3) 現契約を解約し、数か月後に新契約に加入させる不利益乗り換え
(1) は社内規定違反に留まるとは言え、全国で発覚していることを見ても、収益至上主義が最優先され、上司のチェックはもちろん社内規定を無視しても通ってしまう社内体質だったことが分かります。
(2) と (3) は販売担当者が保障期間が切れることに関しウソをついたり(虚偽説明)、保険料の二重払いを担当者の成績のために強要したりと、かなりモラルが低い状態であったことが分かります。
郵政民営化前にもあった不正の温床
郵政民営化前の日本郵政公社時代にも、
・諸手当の不正受給
などで懲戒解雇になった職員が2006年には2,859人(職員の約1%近く)になったのです。
そのうち7割が現場担当者ではなく、主任や課長、局長代理など管理職だったことから、不正の温床が以前からあったと言えるでしょう。
しかも民営化前には「郵政Gメン」と呼ばれる社内の不正摘発組織が存在していましたが、その郵政監察制度は民営化後に日本郵政株式会社内の監査部門へ吸収され、社内チェック体制は効かなくなりました。
被害規模はこれからも拡大する
現在は保険販売を自粛しているため新しい被害者は出ませんが、中間報告の段階で調査が進んだのは、対象件数の1/3あたる約6万8,000件です。
まだ11万件以上が未確認ということなのです。
調査の進展および過去5年より前に対象範囲を広げると、ますます不正契約件数は増える見込みです。
そこでこの不正内容をさらに掘り下げて反面教師とし、保険契約を進める際に気を付けたいポイントをまとめてみました。
保険乗り換えの際に気を付けたいポイント

ここでは保険契約のうち、既存契約がありながら新しい契約を結ぶ際に気を付けたいポイントに絞ってご説明します。
いわゆる「乗り換え」と呼ばれる契約形態が、それに当たります。
ポイント1:保障期間が切れないように注意する
死亡保険でも医療保険でも、
です。
保険請求が必要な事故が起きてしまう可能性があることはもちろん、その期間内に起きた病気が原因で新しい保険に一生涯加入できなくなることもあるからです。
かんぽ生命のケースでは、この乗り換え契約では新規契約扱いとならず担当者の成績にならないため、既存契約を解約の後2か月以上の期間を空けてから新規契約をさせるといった不正契約が見られました。
この2か月の間に保険請求ができなかったり、新規契約に乗り換えられなかったケースがあるのです。
特に契約する保険会社が異なる場合には、注意が必要です。
後からクレームを言っても、対応するのは皆さん自身となるからです。
ポイント2:保険料が重ならないように注意する
また新旧契約の二重払い強要も、今回問題となりました。
かんぽ生命のケースでは、新旧両方の保険料を2か月以上重ねて支払うと担当者の成績となるため、強要したりウソの説明をしたりして、成績になるよう不正をしていたことが分かっています。
このような極端なケースに遭わないとしても、保険料の二重払いを上手に回避する方法があります。
実は、既存契約が
・半年払い、年払いの場合は約2か月
の間、当該保険料を支払わなくても(後から払うことで)契約が無効にならない期間
があるのです。
この「払込猶予期間」を利用して、新規契約を成立させましょう。
とにかく、
のです。
「保証期間」と「二重払い」しっかり説明してもらう
今回の不正販売および社内コンプライアンス体制整備は非難されて当然の内容ですが、肝心なのはわれわれが被害に遭わないことです。
販売担当者に保障期間と二重払いについてはしっかりと説明してもらい、健全な保険契約が皆さんの安心できる生活基盤をなることを期待しています。(執筆者:中野 徹)