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高齢者人口が多い日本

総務省が発表したデータによると、2018年9月時点で65歳以上の人口が3,461万人で、これは総人口の約28%にのぼります。
厚生労働省の発表では、認知症患者数は既に約500万人にも達しています。
「65歳以上の7人に1人が認知症患者」であるこの時代、保険で備えることはできるのでしょうか。
認知症診断で受け取れる保険は2種類
認知症で受け取れる保険は、2種類あります。
1. 認知症と診断されたときに、自分が受け取る保険
2. 家族が認知症と診断されて、他人に損害を与えた時に受け取る保険
1. 認知症と診断されたときに、自分が受け取る保険
自分が受け取る保険には、「生命保険の特約」と「認知症特化型の保険」があります。
1-1. 生命保険の「介護保障・介護特約」
生命保険の「介護保障・介護特約」と呼ばれるものにも、認知症になった場合に支払われるものがあります。
ただ、気をつけなくてはならないのは、会社によってもらえる基準に差があることです。
介護保険というのは、「介護状態」つまり、日常生活を送るうえで、介助や介護が必要な状態であると判断された場合に支払われる保険です。
そのため、一般的な介護保障では、「認知症の診断」に加えて、「日常生活が困難であると判断される症状」がなければもらえないものがほとんどです。
できれば、もっと軽度のうちに受け取りたいものです。
1-2. 認知症特化型の保険
中には「認知症保険」、「認知症予防保険」と、大々的に銘打っている保険もあります。
こういった認知症特化型保険は、比較的軽度の認知症診断で支払われることが特徴です。
認知症保険
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まだまだ少ないですが数社で発売されています。
認知症保険は、高齢層を対象としているため、いわゆる「病気でも入れる」緩和型保障で持病などがあっても入りやすくなっています。
診断保険金は、生まれて初めて「認知症だと診断」されて一定期間(ほとんどが半年間)症状が続くことが証明されると受け取れ、その際の進行度は問われません。
つまり、ご家族が異変に気づきすぐに検査を行えば、比較的早期で受け取れます。
近年では、初期の認知症の進行を遅らせる効果のある薬が開発されているので、早期に受け取れるのはありがたいです。
支払い対象を「アルツハイマー型認知症」、「レビー小体型認知症」、「血管性認知症」の3つに限っている保険もありますが、心配はいりません。
認知症のうち、およそ半数は「アルツハイマー型認知症」、次に「レビー小体型認知症」そして「血管性認知症」と続き、この3種類の認知症で、全体の85%を占めています。
残りの15%は、ケガや病気による一時的な認知症や、薬物やアルコールに関するものなので、保険金の対象外とされることにも納得できます。
出展:認知症に関する相談サイト「相談e-65.net」
契約のかたち
・ 認知症保険単品
・ 主契約につける特約型
・ 医療や死亡保障とセット型
受け取りのかたち
・ 一時金タイプ
・ 年金タイプ(回数限度有・無)
認知症予防保険
2019年時点では、国内一社のみが販売しています。
「認知症予防保険」の特徴は、その支払いタイミングです。
認知症診断保険金:1度限り
・ 認知症にならなかったとき
健康ボーナス(生存給付金):2年ごと
健康ボーナスは「このお金で、認知症検査を定期的に受けてほしい」という願いがこめられているため、「検査を忘れないための2年ごと」なのだそうです。
他にも、医療機関と連携し加入者にはさまざまな情報提供を行ったり、認知症予防のための情報が詰まった会員制アプリがあったりと、「認知症にならないための」さまざまなサービスがついています。
だから「認知症『予防』保険」という名前で、「なったらもらえる保険」ではなく「ならないためにもらう保険」という逆転の発想が生み出した珍しい保険です。
2. 家族が認知症と診断されて、他人に損害を与えた時に受け取る保険
2007年、認知症患者の男性(当時91歳/要介護4)が線路に侵入し、電車にはねられて亡くなる事故がありました。
JR東海は「事故による振替輸送費や人件費などの損害」を受けたとして、遺族に対する損害賠償請求訴訟を起こしました。
争点は、同居の妻(当時85歳/要介護1)と別居の長男に「監督責任があるのかどうか」でした。
1審では、妻に「過失責任」長男に「監督責任」があるとして約720万円の賠償が命じられ、2審では妻に「監督責任」があるとして約360万円の賠償が命じられました。
最終的には「監督義務者不在」ということで棄却されましたが、「監督責任が認められる状況であれば、別居の子世帯でも認知症の親が起こした事故の責任を問われる可能性がある」ということがわかった裁判でもありました。
万が一、同様の損害賠償を求められた場合、どうしたらよいのでしょうか。
損害賠償責任保険
「損害賠償責任保険」は、家の保険や車の保険にもついていることの多い保障です。
ただし、損害保険は実費補填の保険のため、複数持っていても支払われる金額が増えることはありません。
もしも、重複契約になってしまっていたら、ひとつだけ残してあとは解約しておきましょう。
1世帯で1つ契約があれば、家族の誰が起こした損害賠償でも、補償対象ですが「同居家族」に限ります。
例外として、「別居だが、生計が同一の扶養家族」つまり「親からの仕送り等で生活している未就労の子」だけが、同一家族として認められています。
別居親世帯には、別途で加入しておいてもらいましょう。
その際、「指定代理請求人」に自分の名前を登録しておくことを忘れないでください。
指定代理請求人制度は、支払請求時などに代理で手続きを行うことができる制度です。
実際に、支払事由が起きてから「実は親は認知症で、代わりに子が…」となるとさまざまな書類が必要になって、時間や手間がかかります。
契約時に「指定代理請求人」と「ご家族登録」は必ず行っているはずですが、ご夫婦がお互いの代理人になっていたり、契約後に家族状況が変わっていたりと、登録内容が適切でなくなることは珍しくないので、確認をしてください。
不安を少しでも和らげるために
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認知症の家族を抱えた苦労は、相当なものです。
同時に、自分が認知症になるかもしれない不安も、できれば持ちたくない悩みです。
そのための保険が新しく生まれていますので、チェックしてみてください。(執筆者:仲村 希)