日本ではケガや病気の治療による金銭的負担に備えるため、全国民が何らかの公的医療保険に加入しています。
公的医療保険には大別すると
1. サラリーマンなどが加入する「2つの健康保険」
2. 個人事業主などが加入する「国民健康保険」
に分けられます。
これらの公的医療保険制度は保険料率や扶養の有無、給付金の種類などが異なっています。
今回は万が一の際に自分自身と家族を守る公的医療保険の仕組みについて解説していきたいと思います。
目次
2種類の健康保険 国民健保とどこが違う?

健康保険には主に
・ 大企業の従業員が加入する組合管掌健康保険(組合けんぽ)
・ 中小企業の従業員が加入する全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)
の2つがあります。
保険料率は各健康保険で異なる
これらの健康保険は受けられるサービスは似ていますが、保険料率が違っています。
協会けんぽ:都道府県ごとに異なる保険料率を労使折半で負担
健康保険組合:保険料率は組合ごとに自由に定めることができ、原則労使折半
しかし、一般に協会けんぽよりも低い保険料率が設定されており、より少ない負担で健康保険に加入できます。
扶養家族が追加負担なしで加入できる
保険加入者の扶養家族も同じ健康保険組合に追加負担なく加入できる点は、2つの健康保険に共通する大きな特徴といえます。
健康保険で被扶養者と認定されるには要件があり、年収130万円(60歳以上や障害者の場合は180万円)未満であり、かつ保険加入者の年収の1/2未満とされています。
この扶養要件を外れてしまうと自分自身で別の健康保険か国民健康保険に加入し、保険料を新たに負担する必要があります。
国民健康保険の保険料率は前年の所得を基に算出し、全額が自己負担です。
また、後述する給付金の種類も2つの健康保険と異なる他、国民健康保険には「扶養」の概念も無いため、健康保険の加入者が退職・独立などを行った場合は自分自身の保険料以外に、扶養家族の保険料も新たに負担する必要があります。
健康保険証には自分自身が加入している健康保険はどの種類のものかが表示されているため、あらかじめ確認を行っておきましょう。
国民健保には療養や出産の際の手当金がない

公的医療保険制度で受けられる主な給付は、病気やケガの治療費を一定割合の自己負担額のみにする「療養の給付」や1か月の治療費の自己負担額が高額になってしまった場合に自己負担上限額を超えた金額が支給される「高額療養費」があります。
組合けんぽでは、より一層自己負担額を抑制してくれる「付加給付」という制度もあります。
また、2つの健康保険には療養や出産のため就労できなくなってしまった場合に無報酬になるのを避けてくれる「傷病手当金」や「出産手当金」などがありますが、これら手当金は国民健康保険では利用ができません。
この3種類の公的医療保険では、一般的に組合けんぽが最も手厚い保障を受けられ、次に協会けんぽ、国民健康保険となります。
保険料上昇の昨今 保険内容を見直して家計負担を削減しよう
近年、健康保険の保険料率は上昇の一途を辿っており、2022年には労使が負担する保険料の割合は報酬額の30%にも達するとの見通しがでており、現役世代の家計に大きな負担となってきています。
反面、公的医療保険制度は民間の医療保険では賄えないほどの手厚い保障が提供されています。
加入している医療保険制度ごとに異なる内容を把握し、過大な部分があれば契約内容の見直しなどを行うなど、家計負担の削減を試みてはいかがでしょうか。(執筆者:菊原 浩司)