親の介護は、子どもが平等に分担するのが理想ではありますが、現実はそう簡単にはいきません。
「遠方に住んでいる兄弟が何もしてくれない」
など、兄弟間で親の介護をめぐりトラブルになることもしばしばです。
とくに、主たる介護者に介護の時間的・金銭的負担が偏る傾向が強く、
と考えている人もいるでしょう。
今回は、親の介護費用を兄弟に請求できるのかどうか、また兄弟で協力して費用負担をしていくにはどうしたらよいのか、具体的な方法をお伝えしていきます。
目次
親の介護の負担が兄弟間で不公平になる理由

本来、
があります。
ただ、住む場所の違いや仕事の有無などによって、介護にどのくらい関わることができるかはそれぞれ異なります。
また、介護を行うにあたっては、ケアマネジャーやかかりつけ医などとの連携が不可欠ですから、どうしても「主たる介護者」の存在が必要です。
兄弟がいる場合も、基本はこの主たる介護者が窓口となり、介護サービスの「契約」や「保証人」などの役割を負うことになるわけです。
こうした状況では、役割の比重が誰かひとりに偏るのも致し方ないといえるでしょう。
どうしても近くに住む子どもの負担が増える
たいていは、同居しているか近くに住む子どもがこの役割を担うことになります。
だからといってほかの兄弟はまったく介護に関わらないとなると、主たる介護者は心身ともに疲弊してしまいます。
と、兄弟に不満を持つ人もいるでしょう。
とはいえ、実際のところフルタイムで働いていたり、実家から遠い場所に住んでいたりすると、親の介護のために定期的に実家へ足を運ぶのは現実的とはいえません。
兄弟間で介護への関わり方が不公平になるのは、こうした理由からです。
親の介護費用は兄弟に請求できるのか
介護にかかるお金は、
です。
ただ、本人の預貯金や年金が少なく、介護費用が足りない場合、子どもが費用を負担する例もあるでしょう。
また、介護費用は、介護サービスの利用料や医療費だけではなく、日々のこまかい部分に意外にかかるものです。
たとえば、
・ 紙オムツなどの消耗品代
・ パジャマや下着などの衣料品代
・ 病院への往復交通費
などのほか、洗濯回数が増えることで水道代や洗剤代がアップしたり、1日中自宅で過ごすためエアコンをつけっぱなしにしなくてはならず電気代がかさんだりと、目に見えにくい部分にもお金がかかります。

介護費用は兄弟平等で負担するべき
主たる介護者ばかりが、介護の負担と金銭面の負担の両方をひとりで担うという形は望ましくありません。
このような細かい出費も含め、親の介護にかかる費用は、お金以外の負担も考慮しながら兄弟でうまく分担するのが理想です。
前述のとおり、兄弟姉妹に同様に親の扶養義務があるため、介護費用も当然兄弟姉妹に請求することができます。
具体的にどうすればスムーズに費用を負担してもらえるのか、もしお金を負担してくれない時にはどうしたらよいのかについて、みていきましょう。
親の介護費用を兄弟で分担する方法
兄弟の中には、親の介護についてしっかり自分のやるべきことを意識している人もいれば、遠くに住んでいたりして当事者意識の薄い人もいます。
どうすれば親の介護費用をスムーズに分担できるのか、そのコツを紹介します。
1. 介護費用の内訳を明確にする
主たる介護者は、介護にかかったあらゆる出費をきちんと記録しておきましょう。
介護費用の内訳とその金額を明らかにしておくことで、数字で相手を説得しやすくなります。
おすすめの方法が、介護専用の家計簿をつけること。
お金を支払った日にち、金額、項目を家計簿に記し、親のお金で支払ったのか、自分が負担したのかを明確にしておきます。
スマホの家計簿アプリには、兄弟間でリアルタイムに入出金の内容を共有できるものもあります。
当事者意識の低い兄弟に介護と真剣に向き合ってもらうには、こうして具体的な数字を示して話をするのがおすすめです。
2. 介護方法についてよく話し合う
介護の仕方にはさまざまな方法があります。
在宅で訪問介護やデイサービスなどを利用するにしても、何のサポートをどの程度受けるのかによって費用は変わってきます。
お金が絡むことは、後々もめることのないよう、親と主たる介護者の間だけで決めるのではなく、兄弟間でも情報を共有し合い、介護方法の細かい内容についてよく話し合っておきましょう。
とくに兄弟間で介護に対する考えに食い違いがあると、費用の分担に影響が出てくる恐れもあります。
トラブルを避けるため、
ようにしましょう。
3. 解決できなければ調停を申し立てる方法も
こうした話し合いで解決しない場合、最悪の場合には家庭裁判所に介護費用の請求調停を申し立てる方法があります。
これを「扶養請求調停」といい、
がなされます。
調停がうまく成立すれば、当事者たちはその内容にのっとってそれぞれ費用負担をすることになります。
もしこの時点で解決しなければ、調停から審判に移り、裁判官によって取り決めがおこなわれます。
ここまでくると、当事者たちには相当な心理的・時間的負担がかかるため、できるだけ調停の段階で解決するのが得策といえるでしょう。
本来は家庭内の話し合いで解決するのが望ましく、調停は最後の手段です。
ですが、このような法的な解決法があることは知っておいて損はないでしょう。

介護負担のもめごと回避には日頃の状況共有が大切
扶養義務が法律で定められている以上、親の介護は兄弟が等しく担っていくのが理想です。
とはいえ、状況的に平等に分担するのが難しいケースもあるでしょう。
もし費用の負担でもめた場合には、基本的には話し合いで解決するのがベストです。
話し合いがうまくいかない場合には、調停申し立てという手段もありますが、日ごろから介護費用について兄弟間で情報を共有しておき、もめごとを極力避けるようにしましょう。(執筆者:渡辺 有美)