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老人ホームに入居するときに支払う「入居一時金」
施設によっては非常に高額になることがあります。
何百万、何千万円という入居一時金を支払ったのに、老人ホームが倒産して退去することになったら、困ってしまう人が大勢いるでしょう。
そのため、倒産に備えて入居一時金の未償却分の一部が保全される「入居一時金の保全措置」が有料老人ホームに義務付けられています。
「入居一時金の保全措置」のくわしい内容や、返ってくる金額についてみていきましょう。

入居一時金を支払う理由
有料老人ホームの入居には、月額利用料のほかに「入居一時金」という前払い金がかかる場合があります。
入居一時金とは、「想定される居住期間の、家賃やサービス費」のことで、ケアハウスやサービス付き高齢者向け住宅、グループホーム等でも設定されていることがあります。
金額は施設によってまちまちで、高級老人ホームになると数千万円になるケースもあります。
想定期間を超えて入居しても、追加の支払いを求められることはありませんが、もし想定期間内に死亡やその他の理由で施設を退去する場合には、原則として入居一時金の未償却分が返還されることになります。
入居一時金にまつわるトラブル
退去時に戻ってくるはずの入居一時金ですが、施設が倒産してしまうと未償却分があるにもかかわらず返還されないというトラブルが過去に多く、かねてより問題視されてきました。
民間が運営している施設は、入居時には経営が順調だったとしても、何かのきっかけで経営が傾けば倒産する可能性もゼロではありません。
帝国データバンクの資料によると、老人福祉事業者の倒産は2018年に83件あり、そのなかで老人ホームや高齢者向け住宅などの介護施設は14件ありました。

生涯にわたって住む予定で大金を支払った入居者にしてみれば、ホームの倒産は大きなショックでしょう。
このような被害者を救済するために、施設に義務付けられたのが「入居一時金の保全措置」です。
入居一時金の保全措置
入居一時金の保全措置とは、施設が倒産した場合に、500万円を上限として支払った入居一時金の一部が戻ってくる制度です。
2018年に老人福祉法が改正され、2018年4月1日から3年後(つまり2021年4月1日以降)からの新規入居者については、すべての有料老人ホームにこの制度が義務付けられました。
以前は、「入居一時金がまったく戻ってこない」というケースも多かったため、入居者にとって500万円が保全されることは大きなメリットといえます。
施設に入居するために、自宅を売却して資金を用立てる人も少なくないため、500万円があるのとないのとではその後の身の振り方にも大きな影響が及ぶでしょう。
もし施設が倒産してしまっても、この500万円を元手に新たなホームに入居することも可能です。
注意点
気をつけておきたいのが、「すべての人に500万円が返金されるわけではない」という点です。
当然のことながら、たとえ500万円以上の一時金を支払っていたとしても算出された返戻金の額が500万円に満たない場合は、500万円まるまるが返金されることはありません。
住んだ期間が長ければ、それだけ一時金の返金額も減ることになります。
念のため、施設との契約時に、
しておくと安心です。
危ない施設の見分け方
介護施設に入居するときには、設備やサービス内容だけではなく、その施設の経営状況を確認しておくのが無難です。
チェックポイント1:施設の入居率
たとえば、開設して1年たっているのに部屋が半分も埋まっていないような施設は、採算が合わず経営が苦しいことが予想されます。
一般的には、
といわれているので、ひとつの目安にしましょう。
チェックポイント2:職員1人あたりの入居者数
経営が安定している施設は十分な人員を配置できるので、職員1人あたりの入居者数もチェックしておきたいところです。
チェックポイント3:職員の定着率
職員が何年勤務しているかがわかる「定着率」も重要です。
定着率が低いと、職員が短い期間でどんどん入れ替わっていることになり、施設の環境がよいとはいえません。
これらの情報は、「重要事項説明書」で確認できます。
面倒でも、よい施設を選ぶためにぜひチェックしておきましょう。

入居前にしっかり情報収集
たとえ500万円が保全されるとはいえ、介護施設の倒産は入居者やその家族にとって大きなダメージになります。
契約前にしっかり情報収集をおこない、施設の経営状況を厳しい目でチェックして、最悪の事態に備えましょう。(執筆者:渡辺 有美)