いったん介護が始まると、介護の費用は毎月の固定費と同じで定期的に必要となります。
また、介護サービスの量を増やしたり、要介護の度合いが上がるなどで、介護の費用が加算されることは珍しくありません。
介護サービスの量を手厚くして、介護する側の精神的・体力的負担を減らすことは重要です。
しかし万一、介護の費用が掛かり過ぎてしまった場合は、高額介護サービス費制度を利用することで費用の負担を減らせます。

目次
介護にはどの位の期間と費用が必要か
公益財団法人生命保険文化センターが行った、過去3年間に介護の経験のある方からのアンケートによると、
介護の一時的費用の平均額は69万円
月々掛かった費用の平均額は7万8,000円
という結果が出ています。
ただ、これらはあくまでも平均の数値で、介護期間が1年未満の方と10年以上の方は両者とも13~14%と同じ位の割合で存在し、介護費も1万~2万5,000円未満の方と15万円以上の方は両者とも15%いるとのことで、介護期間や介護費は傾向として偏ることなく、ばらつきがあるのが実情です。
介護保険サービス利用者の自己負担上限額と高額介護サービス費制度
介護保険サービスは年収別に自己負担の上限額が決められています。
例えば、世帯内で市区町村民税を課税されている人がいる場合の自己負担上限額は、1世帯あたり月額4万4,400円です。
また、世帯内全員が住民税非課税の場合の自己負担上限額は、1世帯あたり月額2万4,600円、前年の所得金額と公的年金等収入額の合計が年80万円以下の個人の場合、自己負担上限額は1万5,000円です。
そして、これらの上限額を超えた際に、差額を払い戻ししてもらえる制度が「高額介護サービス費制度」です。
例えば、自己負担上限額が1万5,000円の単身高齢者の方で、1か月の自己負担額が1万9,480円の場合、
が高額介護サービス費として払い戻しされます。
高額介護サービス費を払い戻ししてもらう方法
高額介護サービス費制度は国の指針に基づき、各市町村が実施しています。
1か月に支払った介護利用者の自己負担額が上限を超えている場合は、お住まいの市町村から高額介護サービス費制度の案内が郵送されます。
案内に沿って必要書類を一度提出すれば、以降、毎回自動的に差額が払い戻しされるようになっています。
高額介護サービス費制度の支給対象とならないもの

介護の費用として支払ったからと言って、全てのものが高額介護サービス費制度の支給対象になる訳ではありません。
例えば、
差額ベッド代
生活費
在宅介護の際に使用する福祉用具の購入費
住宅改修費など
は高額介護サービス費の支給対象にはなりません。
また、要支援・要介護の状態区分別に定められている区分支給限度額を超えて利用した、介護サービスの費用は高額介護サービス費の支給対象とはならず、自己負担となりますのでご注意ください。
将来的には介護サービス費の自己負担上限額が引き上げられる予定
超高齢化社会を背景に、社会保障費が増え続けている現状を踏まえて、2021年度から65歳以上の高所得者を対象に、現行では4万4,400円の介護保険サービス自己負担上限額が、引き上げられる予定となっています。
介護保険サービス費の自己負担上限額が上がると、それまで高額介護サービス費制度を利用して、差額が支給されていた高齢高所得者の方でも、支給該当から外れてしまうケースが出てきます。
具体的には
年収約1,160万円以上の世帯は自己負担上限額が14万100円
になる予定ですので、実施日が近づいてきましたら再度確認されることをお勧めします。(執筆者:AFP、2級FP技能士 大川 真理子)