介護保険は、1~3割の自己負担で介護サービスを使えるとても便利な制度です。
ただ介護サービスを使うには、「介護度」がいくつなのかが重要です。
介護度が高いと、使えるサービスの上限が大きくなります。
この時点では、介護度が高い方がたくさんサービスを使えてお得と言えます。
その一方でサービスによっては、介護度が高いと利用料も割高になることをご存じでしょうか。
この記事では、介護サービスの利用料と、割高な利用料を支払わないための注意点をお知らせします。

目次
介護度が高いと「上限」が増える
まずは、介護度が高いと、なぜ使える枠が増えるのかを簡単にご説明します。
介護度は「生活の支援にどれくらいの介護が必要か」をランク分けしたものです。
1番高い要介護5だと、日常生活全般に介護が必要で寝たきり状態のような人。
要支援1の方なら週数回の支援で十分であり、逆に要介護5の方は毎日介護が必要な状態という目安です。
それぞれの状態によって支援が必要なレベルが違います。
そこで介護度別に上限を設け、利用料の補助を受けられる枠を定めています。
介護度が高いと上限が増えるのは、主にこのような理由です。
介護サービスの利用料は主に2種類
次に利用料はどのように決まるのでしょうか。
大きく2つの種類があります。
(2) 利用者の介護度に応じて1回の利用料が変わるもの。
(1)のサービスは訪問介護(ヘルパー)や訪問看護(看護師)が該当します。
福祉用具のレンタルも若干違いはありますが、基本的に利用料は固定されています。
これらのサービスは利用した種類に沿って利用料が固定されているため、介護度が高い(上限が大きい)と当然ながら利用できる回数を増やせます。
(2)のサービスは、通所介護(デイサービス)、施設介護(短期入所や特養など)などが該当します。
これらのサービスは「預ける」系のサービスとなり、長時間にわたって預けた施設で介護を受けられる形態です。
同じ時間だけ施設に滞在しても、介護度に応じて利用料が変わります。
ここまでは制度の話なので、軽く理解していただければ十分です。
「介護度は高い方が良い」という訳ではない
上記では介護度と利用料の発生について解説しました。
ここまでの話では、基本的に介護度は高い方がサービスを利用できる枠が広がるため、有利と言えます。
しかし注意すべきは、「利用者の介護度に応じて1回の利用料が変わる」タイプのサービスです。
利用者の介護度とお体の状態が適正ならば、このサービス自体に何ら問題はありません。
しかしまれに、利用者の介護度とお体の状態が釣り合っていないケースが起こります。
そのような状態で通所介護や施設介護のサービスを利用すると、受けるサービスに見合わない料金が発生してしまいます。
実はこの現象、介護業界では珍しい事ではありません。
介護度が高いにもかかわらず、実際には元気という高齢者は意外といます。

介護度は高いが元気な高齢者はどのように認定されるか
介護度が高くても、自分で歩ける・身の回りの事ができる高齢者は意外と見られます。
それは別にズルをしている訳ではなく、介護保険制度の課題でもある点です。
このようなギャップが生まれる背景として、「介護度は認定調査を受けた時の状態で決まる」という理由があります。
具体的な例を上げましょう。
・ 退院して元気に戻る
・ 介護認定は入院中の判定で出る
結果、介護度は高いが元気な高齢者が認定されます。
本来はこのような状態になると、ケアマネジャーから介護度の見直しを提案します。
しかしご利用者の生活状態や背景が複雑になると、限度額が高い方がメリットも大きいため無理に見直しを勧めないという判断をすることもあります。
状態が悪いのに介護度が低いケースが起こると、ケアマネが積極的に見直しを提案するでしょう。
「預ける」系のサービスが中心の方は、介護度と状態のギャップに注意
通所介護や施設介護を中心に利用されている人は、介護度とお体の状態にギャップがないか注意した方が良いです。
例えば、お体の状態は要介護1相当、でも要介護3の認定が出ていた場合
通所介護の介護サービス1回利用料は、要介護1で約700円です。
これが要介護3だと約950円になります。
有料老人ホームを利用した場合は月単位で考えます。
介護1で約1万6,000円、介護3約2万1,000円です。
施設や地域によって料金に差は出ますが、この料金差は見過ごせません。
介護度サービスを利用する際、「介護度は高い方が良い」と言えないのは、まさにこの点あります。
他の高齢者と比べて同じような状態でも、介護度が違っていると利用料金も変わります。
適正な介護度は本人の権利
国は介護保険サービスの見直しを積極的に行っています。
介護度を高くするために虚偽の対応をすることは禁じられているのと同時に、しっかりと現状を伝え状態に合った介護度を受けるのは高齢者の権利です。
介護度が低いと思えば高くする、高すぎると思えば低くする。
介護認定の見直しは随時行えます。
どちらもメリットとデメリットはありますので、両方を見比べてより良い方法を考えてみてください。
相談先に困った時は、担当ケアマネジャー、地域包括支援センター、役所が相談窓口です。
介護は何かとお金がかかります。
疑問があれば、迷わずに相談してみましょう。(執筆者:小原 しろう)