世界中で新型コロナウイルスの流行が拡大するなか、東京にもロックダウン突入の危機が迫っており人ごとではない事態になってきました。
中国での感染が心配されていた1月頃には、中国関連の製造業や観光業への業績悪化が懸念されていましたが、現在では飲食業やアミューズメント業にも波及し、2013年東日本大震災の何倍もの消費減退が予想されています。
3月2日にOECD(経済協力開発機構)は、日本の経済成長率を+0.2%と予測しました。
しかし、東京オリンピックが1年程度延期され、パンデミックが拡大するなかで、今後は下方修正されて「マイナス成長」に落ち込むことが視野に入りました。
想定外のドミノシナリオもあることを前提に、株価推移が酷似する2008年リーマンショック時と比較して今後の株式相場の波を予想してみましょう。
目次
リーマンショック時と酷似する株式相場

2月の段階では今回の新型コロナショックは、2002年に発生したSARSと同じ経過をたどることを前提に株式相場を予想していました。
しかし、3月に入り残念ながら2008年のリーマンショック級の緊急事態へと発展してしまいました。
3月初旬に想定していた「V字回復を期待できる下限トレンドライン」であった日経平均2万1,000円をあっさりと突破し、日々乱高下を繰り返しながら12年ぶりの下落相場となっています。
投資の格言には、
というものがあります。
では、今回の下落相場はどこまで下がり、いつ戻るのでしょうか。
業績悪化のポイントに変化あり
日銀で政策委員会審議委員を務めた木内氏(野村総合研究所/エグゼクティブ・エコノミスト)は、自身のコラムで新型コロナショックが与える影響を要因別に分析しています。
以下は、それぞれの要因が1年間続くことを前提に試算されています。
-0.81%
・ 中国経済の悪化(GDP4%下落):
-0.24%
・ 中国以外の海外経済の悪化(GDP2%下落):
-0.50%
・ 国内消費自粛(東日本大震災時の4倍):
-1.67%
・ 東京五輪延期の影響:
-0.36%
特筆すべきは、
ということです。
消費増税の影響が消えなていないこの時期に、新型コロナショックおよびオリンピック延期が重なる三重苦に陥る業界もあり、4四半期(1年間)連続のマイナス成長を経験したリーマンショック時と同様の落ち込みも想定すべきとしています。
ボラティリティ(価格変動率)はリーマンショック級
日経平均株価では、1日で1,000円を超える下落が1週間で2回(3月9日・13日)も訪れるほどの下落相場に見舞われました。
1日の下落幅、下落率は1987年ブラックマンデーや2008年リーマンショック時に劣りますが、ボラティリティ(価格変動率)を示す「VIX指数」は2008年以来の高い水準です。
2008年10月:89.53
(リーマンショック)
2020年3月:84.83
(新型コロナショック)
2015年8月:53.29
(チャイナショック)
この「VIX指数」は先行きが不透明になっている相場状況を表しており、未知の感染症と戦っている現状を端的に語っています。
このような環境では、
となります。
よって、今は株にも債券にも金にも投資すべきではありません。
これまでも「米国同時多発テロ(2001年)」や「ギリシャ国債デフォルト危機(2011年)」、「東日本大震災(2011年)」などさまざまな大相場がありました。
今回の新型コロナショックは、2008年の「リーマンショック」と酷似する最大級の下落相場が想定され、その後もV字回復は難しい状況となってきました。
リーマンショック時と酷似する株式相場
次のグラフでは、2つのショック発生からの株価推移を比較してみました。

※リーマンショックは、2008年9月1日(1万2,834.18円)を100として指数化(2008年9月1日~2009年8月31日)
※新型コロナショックは、2020年2月3日(2万2,971.94円)を100として指数化(2020年2月3日~3月19日)
ショックの原因は違うものの、市場参加者はリーマンショック時の株価推移を意識していると思われます。
その場合に、底値はどのあたりを想定しておけばよいのでしょうか。
2008年の場合には、約2か月後に1番底、7か月後に2番底が発生し、どちらもショック発生直前から▲45%下落となりました。
これを今回にあてはめると、
イメージです。
底値1万2,627円まで下落するということです。
今は世界の主要都市がロックダウンして大変だというニュースばかりですが、これがひと段落するのが4月頃で1番底と考えられます。
それ以降は、現在発表されている経済対策および金融対策が効果を発揮して一旦は回復します。
しかし、企業業績が大打撃を受けた負の側面が表面化して4~6月の経済指標が惨憺たるものとなり、それを見て2番底を形成するのが8月頃といった感じでしょうか。
米国FRBのプラード総裁(セントルイス連銀)が
という衝撃的なリスクシナリオを発言していることを考えると、あながち外れているとは言えません。
1万2,000円台への突入は考えたくもないワーストシナリオですが、
ようです。
なお、リーマンショックの際には、
かかりました。
今回は金融破綻が起きていないので、ここまで時間がかからずとも回復する予想ですが、オリンピック延期により経済的なピークが後ずれすることを考えると、日経平均株価が2万4,000円台を回復するのに数年を要する可能性はあります。
底値は1万5,000円との見方

米国ゴールドマン・サックス証券は、3月11日に次のように日経平均株価の予想を下方修正しました。
【日経平均株価の2020年予想】
3月:1万8,000円
6月:1万9,000円
12月:2万2,000円
みずほ証券は、3月6日に、来年3月末の日経平均株価を2万2,000円と下方修正しました。
なお、みずほ証券ではウイルス対策終息に時間を要し、東京オリンピックが中止・延期されるといったリスクシナリオの場合には、日経平均株価は1万5,000円~1万6,000円がフェアバリュー(適正価格)であるとも予想しています。
感染症が日々拡大している現状では、いつ・どのくらいで株式相場が底を打つかを予想することは難しい状況です。
最強を誇っていた米国経済までもが今回のショックで停滞することを考えると、短期間にV字回復してこれまで通りの経済活動に戻れる保証はないと考えるべきです。
乱高下相場は焦らずじっくり乗り切る
国内での感染対策、東京オリンピック延期の影響、企業業績への影響度など、まだ波乱要素があることを認識しつつ乱高下相場に対処していただければと思っています。
今は現金(キャッシュポジション)にしておくことが、最大の資産防衛です。
債券も価格が高くなり過ぎて、投資魅力はありません。
焦らず、じっくりと資産構築することが、この乱高下相場を乗り切る得策かもしれません。(執筆者:中野 徹)