配偶者からのDV(家庭内暴力)を原因とする離婚は増加しています。
平成29年度の裁判所を利用した離婚原因の統計では、直接的暴力と精神的虐待(いわゆる「モラハラ」)を合わせた件数は「性格の不一致」よりも多くなっています。
トータルでは裁判所を使わない協議離婚がもちろん圧倒的に多いのですが、逆に考えるとDVによる離婚は協議が難しいということです。
離婚さえできればよい、そもそもDVから逃れるため別居しているのだから話し合いなんてもってのほかです。
しかし、未成年の子供がいる場合、親権がどちらに移ろうが、子の養育義務は父母双方に課せられますし、子供を育てるのにお金は必要です。
離婚する前に、養育費の支払いはしっかり決めておくべきです。(母が親権を持つことが多いので、以下は妻を主体として考えます。)

目次
間に誰か入ってもらうべき
双方共通の友人や親族などに間に入ってもらったり、話し合いに同席してもらったりすることは得策と言えません。
DVやモラハラをする夫は、案外外面が良く、他人が入ると暴力的な面はおくびにも出さないことがあり、知り合いだとだまされてしまう可能性があるからです。
ここはやはり、代理人として弁護士に交渉してもらうことをお勧めします。
弁護士にはそれぞれ専門があるので、離婚問題に詳しい弁護士であることが必要です。
場数を踏んでいますので簡単にはだまされないでしょうし、夫も弁護士相手なら交渉に応じる可能性が高くなります。
全国各地にある「法テラス」に連絡すれば無料相談を受けることができます。

連絡時に自分の状況を説明し、離婚に詳しい弁護士に相談に乗ってもらえるよう相談してみましょう。
依頼の流れとなると弁護士費用は確かに安くはありませんが、一時立て替えなども含め、こちらも法テラスで相談に乗ってもらえます。
その後の流れ
弁護士と夫の交渉がうまく進めば、養育費などについて記載した、強制執行認諾文言付きの離婚公正証書を作ってもらいます。
支払いが滞った場合は公正証書が債務名義となり、夫の財産から強制執行が可能です。
交渉がうまくいかなければ、離婚調停を家庭裁判所に申立てます。
引き続き弁護士が代理人となるので、調停の間に夫と顔を合わせることはありません。(なお、代理人がいない場合でも、当事者同士が会うことなく交渉を進めることができます。)
調停が合意に至らない、あるいは相手方が調停に出てこないといった場合、調停は不成立となり、離婚訴訟(裁判)に移行することになります。
手順を踏めば養育費の取り決めができる
裁判となると、精神的にきついところもあると思います。
子供と自分のためにどこまで突き進めるかは人それぞれの事情もあるので、絶対裁判をするべきだとまでは言えませんが、裁判では必ず判決(和解であっても判決と同じ効果です)という結論が出ます。
もちろん養育費支払い認める判決を得られれば、判決文が債務名義となります。
代理人弁護士がいればよく相談し、もうあと一息頑張ってみてはどうでしょう。
いったん別居した、逃れて距離を置いた相手と交渉するのは苦痛ですが、手順を踏めば養育費の取り決めを交わせることもまた確かです。
まずは法律の専門家(相談だけならまだ弁護士でなく行政書士などでもアドバイスがもらえます)や公的機関に相談してみましょう。(執筆者:橋本 玲子)