少子高齢化が進み、労働力の減少がこれから予測される日本では、従業員の働きやすさを追求して、長く勤めてもらえる職場環境づくりに力を入れる企業が増えています。
その一環として、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する「健康経営」が注目されるようになりました。
中でも、特に優れた「健康経営」を実践している東証1部上場企業を「健康経営銘柄」と位置づけ、経済産業省と東京証券取引所が共同で毎年銘柄選定をしています。
「健康経営銘柄」は長期的に見て、企業の業績や株価の向上につながると期待されています。
参照元:経済産業省「健康経営銘柄」

目次
「健康経営銘柄2020」に40銘柄を選定
「健康経営銘柄2020」が令和2年3月2日に発表されました。
新型コロナウイルスの影響で、毎年恒例の発表セレモニーは開催されませんでした。
選定された銘柄は経済産業省のHPで見ることができ、今年は30業種40銘柄が選ばれ、昨年より業種も銘柄数も増えました。
そのうち初選定の企業はニチレイや小野薬品工業など全部で11社、また2015年の健康経営銘柄選定開始から連続して選出されている企業は、花王やテルモなど昨年同様6銘柄です。
参照元:経済産業省「健康経営銘柄2020に40社を選出」
女性が働きやすい「なでしこ銘柄」にも注目
「なでしこ」というと女子サッカーの「なでしこジャパン」が思い出されますが、「なでしこ銘柄」は、女性が働きやすい環境を整え、女性の人材活用を積極的に進めている東証1部上場企業の中から選定されます。
「健康経営銘柄」と同じく、「なでしこ銘柄」も経済産業省と東京証券取引所が共同で選び、今年は46社が選定されています。
参照元:JPX日本取引所グループ「なでしこ銘柄の公表について」
健康経営銘柄&なでしこ銘柄にダブル選定「SCSK株式会社(9719)」
東証1部上場企業は現在、2168社あります。(2020年3月27日現在)
その中から健康経営銘柄やなでしこ銘柄に選定されるだけでもかなりの狭き門ですが、「健康経営銘柄」と「なでしこ銘柄」の両方に選定されている銘柄が2020年は10社あります。
今回はその中でも「健康経営銘柄」に6回連続選定されている注目企業、SCSK株式会社(9719)を紹介します。
多方面からバランスよく収益を上げる事業体制
SCSK株式会社は住友商事を親会社に持つ、ITサービス関連企業です。
「健康経営銘柄」に6年連続選出され、「なでしこ銘柄」にも同じく6年連続選出という、東証1部上場企業の中でも貴重な存在です。
ITサービス関連企業は現在たくさん存在しますが、1つの分野に特化して事業を進める企業と、多方面に渡って事業を広げる企業の2つに大別されます。
SCSK株式会社の売上高の事業別構成比を見ると、
流通・メディア 17.6%
金融システム 17.8%
ビジネスソリューション 19%
プラットフォームソリューション 16.5%
と、多方面からバランスよく収益を上げていることが分かります。
また、1980年代という早い時期から車載システムの開発に取り組み、こちらも年々事業を拡大させています。
売上高は3,586億円、クライアント数は8,000社以上にのぼります。(2019年3月期報告書より)

育児休業復職率93.5%を誇る「女性活躍推進プログラム」
女性が育児休業を取得することは珍しくありませんが、職場の理解が得られず、育児休業開けの復職がうまくいかないというケースは、残念ながらいまだに存在します。
SCSK株式会社では、柔軟な勤務体制やリモートワークを推進するなどの取り組みにより、仕事と育児が無理なく両立できるようサポートしており、その結果として育児休業復職率93.5%と、働く女性にとってかなりモチベーションの上がる数字を出しています。
また、女性活躍推進プログラムを作成し、女性のキャリア開発支援を具体的に進めています。
プログラムの内容は、若手社員、出産・育児期社員、課長職候補など、キャリアやライフスタイルの段階に応じて細分化されています。
また、将来的に女性役員・管理職を100名にするという目標が設定され、現在は87名の女性役員・管理職が活躍しています。
女性だけに限らず、全ての従業員が働きやすい環境を整えているため、有給取得率は94.4%、従業員満足度89.2%と、これらの指標も高い数字を示しています。

従業員を大切にする企業は業績と株価の向上が期待
女性の場合は結婚や出産・育児などでキャリアを中断される機会が多く、会社からのサポートが全くないと「仕事は続けたいけれど次のステージが見えないためフェードアウトして退職」という選択をする傾向にあります。
女性の先輩社員が輝いて働く姿を間近に見ることができれば、その姿勢は次世代の女性社員につながり、会社の生産性も向上、そして最終的には株価にも反映されます。
「健康経営銘柄」と「なでしこ銘柄」選定企業のこれからに注目です。(執筆者:AFP、2級FP技能士 大川 真理子)