働き盛りの会社員が「自分の親に急な介護が必要」になったらどうすればよいのでしょうか。
配偶者に任せようとしても「共働きだから」、「家事育児で大変」と断わられ、最悪の場合には介護離婚に発展するケースもあります。
民法877条1項にも「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」と定められている通り、配偶者には義理の親の介護義務はありません。
実子の自分が世話をしなければならない、しかし
と追いつめられる前に、「介護休業制度」を利用しましょう。
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目次
介護休業制度とは
「介護休業制度」は、育児・介護休業法で定められた制度です。
育児休業と同様に、介護のために仕事を長期間休むと、その間に雇用保険から介護休業給付が支給される仕組みです。
2017年に改正され、介護を理由により多様な休み方を選択できる制度になりました。
育児休業に比べてまだまだ企業の中でも浸透しているとはいえませんが、法律に定められた制度なので、企業は従業員の介護休業の申し出に対応する必要があります。
介護休業の種類
介護休業は、育児休業と同じく介護休業・介護休暇・時短勤務・残業免除などの制度が定められています。
いずれも労働者から会社に申し出ることで利用できます。
1. 介護休業
介護が必要な家族1人につき、通算93日まで休業できる制度です。
3回を限度に分割して取得することも可能です。
介護休業期間中は、要件を満たせば休業前の賃金の67%が「介護休業給付金」として雇用保険から支給されます。
2. 介護休暇
子供の看護休暇と同様に、介護が必要な家族1人につき1年度に5日まで、介護休業や有給休暇とは別に半日単位で休暇を取得できる制度です。
2019年の改正育児・介護休業法施行規則及び改正指針により、2021年からは時間単位での取得が可能になります。
3. 時短勤務など
事業主は以下のいずれかの措置を選択して講じなければなりません。
介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用が可能です。
・ フレックスタイム制度
・ 時差出勤
・ 介護サービスの費用の助成その他これに準ずる制度
4. 残業免除
2017年の育児・介護休業法の改正により、介護の必要がなくなるまで残業が免除される制度が新設されました。
会社に介護休業の制度がない場合には
介護休業は、育児休業と同様に法律に定められた制度です。
介護休業の申し出をしたことを理由に、退職の強要やパワハラなど不利益な扱いは禁止されています。
しかし、いまだに男性の育児休業すら取得できない会社も多く、現実的には介護休業の取得のハードルが高い場合もあります。
そのような時には、まずは親のケアを優先しつつ、介護で仕事ができない旨を「地域包括支援センター」や「ハローワーク」に相談して、会社に働きかけてもらう手を考えましょう。
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会社自体のリスクマネジメントにもなる
残業免除や時短勤務があるだけでも、介護はずっと楽になります。
家族の介護が必要になる従業員は今後も出てくるはずですから、この機会に法律に則った制度づくりを進めていくことが会社にとってもリスクマネジメントになるはずです。(執筆者:2級FP技能士 久慈 桃子)